以下、実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように、車両の一例としての自動二輪車MCは、エンジンENGと、トランスミッションTMと、前輪WFのブレーキ系統BFと、後輪WRのブレーキ系統BRと、車両用ブレーキ制御装置の一例としての制御部100とを備えている。
エンジンENGは、後輪WRに駆動力を付与する駆動源であり、トランスミッションTMを介して後輪WRに連結されている。トランスミッションTMは、エンジンENGの駆動力を変速して後輪WRに伝達する機構であり、その出力軸付近には、速度検出センサ52が設けられている。
速度検出センサ52は、後輪WRの車輪速度Vwrを検出するセンサ(いわゆるスピードメータセンサ)であり、図示せぬスピードメータで表示する速度に対応した車輪速度を検出している。速度検出センサ52は、前輪WFの車輪速度Vwfを検出する車輪速度センサ51と検出形式が異なる。ここで、車輪速度センサ51は、車輪の回転に伴ってパルス波を発生するセンサである。
ブレーキ系統BFは、マスタシリンダMFと、液圧ユニット10と、車輪ブレーキ20と、マスタシリンダMFと液圧ユニット10の入口ポート10aを繋ぐ配管30と、液圧ユニット10の出口ポート10bと車輪ブレーキ20を繋ぐ配管40とを主に有して構成されている。また、ブレーキ系統BRは、マスタシリンダMRと、車輪ブレーキ20と、マスタシリンダMRと車輪ブレーキ20を繋ぐ配管50とを主に有して構成されている。
マスタシリンダMFは、運転者が右手で操作するブレーキレバーLFの操作量に応じた液圧を出力する装置であり、マスタシリンダMRは、運転者が右足で操作するブレーキペダルLRの操作量に応じた液圧を出力する装置である。
車輪ブレーキ20は、それぞれ、ブレーキロータ21と、図示しないブレーキパッドと、マスタシリンダMF,MRから出力された液圧によりブレーキパッドをブレーキロータ21に押し当ててブレーキ力(制動力)を発生するホイールシリンダ23とを主に備えている。
液圧ユニット10は、入口弁1、チェック弁1a、出口弁2、リザーバ3、ポンプ4、吸入弁4a、吐出弁4b、モータ6を主に備え、通常時は入口ポート10aから出口ポート10bまでが連通した油路となっていることで、マスタシリンダMFから出力された液圧が前輪WFの車輪ブレーキ20に伝達されるようになっている。
入口弁1は、マスタシリンダMFと車輪ブレーキ20との間に設けられた常開型の電磁弁である。入口弁1は、通常時に開いていることで、マスタシリンダMFから車輪ブレーキ20へ液圧が伝達するのを許容する。また、入口弁1は、前輪WFがロックしそうになったときに制御部100により閉塞されることで、マスタシリンダMFから車輪ブレーキ20へ液圧が伝達するのを遮断する。
出口弁2は、車輪ブレーキ20とリザーバ3との間に設けられた常閉型の電磁弁である。出口弁2は、通常時に閉塞されているが、前輪WFがロックしそうになったときに制御部100により開放されることで、車輪ブレーキ20に加わる液圧をリザーバ3に逃がす。
チェック弁1aは、車輪ブレーキ20側からマスタシリンダMF側へのブレーキ液の流入のみを許容する弁であり、入口弁1に並列に接続されている。チェック弁1aは、マスタシリンダMFからの液圧の入力が解除された場合に、入口弁1を閉じていても、車輪ブレーキ20側からマスタシリンダMF側へのブレーキ液の流れを許容する。
リザーバ3は、出口弁2が開放されることによって逃がされるブレーキ液を一時的に貯溜する。ポンプ4は、リザーバ3とマスタシリンダMFとの間に設けられ、モータ6の回転駆動によって駆動することでリザーバ3に貯溜されているブレーキ液を吸入してマスタシリンダMFに戻す。
液圧ユニット10は、制御部100により入口弁1と出口弁2の開閉状態が制御されることで、制動力、具体的には、前輪WFのホイールシリンダ23の液圧(以下、「ホイールシリンダ圧」ともいう。)を調整する。例えば、入口弁1が開、出口弁2が閉となる通常状態では、ブレーキレバーLFを操作していれば、マスタシリンダMFの液圧がそのままホイールシリンダ23に伝達されて制動力が増加する増圧状態となる。また、入口弁1が閉、出口弁2が開となる状態では、ホイールシリンダ23からリザーバ3側へブレーキ液が流出して制動力が減少する減圧状態となる。さらに、入口弁1と出口弁2が共に閉となる状態では、ホイールシリンダ23の液圧が保持されて制動力が保持される保持状態となる。
制御部100は、主に、前輪WFのブレーキ系統BFに設けられた液圧ユニット10を制御することで、前輪WFのロックを抑制する車輪ロック抑制制御を実行する装置である。制御部100は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、入出力回路などを備えて構成されており、車輪速度センサ51、速度検出センサ52およびバンク角センサ53からの入力や、ROMに記憶されたプログラム、データなどに基づいて各種演算処理を行うことによって制御を実行する。
ここで、バンク角センサ53は、自動二輪車MCのバンク角θを検出するセンサである。バンク角θは、自動二輪車MCの車体を垂直状態から傾けたときの角度であり、垂直状態に立てたときを0°とし、車体を真横に倒したときを90°とする角度である。
図2に示すように、制御部100は、第1車輪速度検出手段110と、第2車輪速度検出手段120と、車輪速度比算出手段130と、車輪ロック抑制制御手段140と、推定車体速度推定手段150と、車体加速度算出手段160と、判定値変更手段170と、異径判定手段180と、記憶手段190とを備えている。
第1車輪速度検出手段110は、車輪速度センサ51を介して前輪WFの車輪速度Vwfを検出する機能を有している。第1車輪速度検出手段110は、前輪WFの車輪速度Vwfを検出すると、検出した車輪速度Vwfを車輪速度比算出手段130、車輪ロック抑制制御手段140、推定車体速度推定手段150および車体加速度算出手段160に出力する。
第2車輪速度検出手段120は、速度検出センサ52を介して後輪WRの車輪速度Vwrを検出する機能を有している。第2車輪速度検出手段120は、後輪WRの車輪速度Vwrを検出すると、検出した車輪速度Vwrを車輪速度比算出手段130および推定車体速度推定手段150に出力する。
車輪速度比算出手段130は、前後輪の車輪速度Vwf,Vwrに基づいて、前後輪の車輪速度比Rvを算出する機能を有している。詳しくは、車輪速度比算出手段130は、従動輪である前輪WFの車輪速度Vwfを、駆動輪である後輪WRの車輪速度Vwrで割ることにより車輪速度比Rvを算出する。車輪速度比算出手段130は、車輪速度比Rvを算出すると、算出した車輪速度比Rvを異径判定手段180に出力する。
車輪ロック抑制制御手段140は、前輪WFのみの制動を制御する制御手段であり、第1車輪速度検出手段110から出力されてくる前輪WFの車輪速度Vwfと、後述する推定車体速度推定手段150から出力されてくる前輪WFの本推定車体速度VCFとに基づいて、前輪WFのロックを抑制する車輪ロック抑制制御を実行する機能を有している。詳しくは、車輪ロック抑制制御手段140は、車輪速度Vwfと本推定車体速度VCFとに基づいて定まるスリップ率が、所定の閾値以上になり、かつ、車輪加速度が0以下であるとき(減速中)に前輪WFがロックしそうになったと判定して、減圧制御を実行する。ここで、車輪加速度は、例えば車輪速度Vwfから算出される。車輪ロック抑制制御手段140は、減圧制御において、入口弁1および出口弁2に電流を流すことで、入口弁1を閉じ、出口弁2を開けるように制御する。
車輪ロック抑制制御手段140は、減圧制御中において車輪加速度が0よりも大きくなると、保持制御を実行する。車輪ロック抑制制御手段140は、保持制御において、入口弁1に電流を流し、出口弁2に電流を流さないことで、入口弁1および出口弁2を両方とも閉じるように制御する。
車輪ロック抑制制御手段140は、スリップ率が所定の閾値未満となり、かつ、車輪加速度が0以下であるときに、増圧制御を実行する。車輪ロック抑制制御手段140は、増圧制御において、入口弁1および出口弁2に電流を流さないことで、出口弁2を閉じ、入口弁1を開けるように制御する。
推定車体速度推定手段150は、前後輪の車輪速度Vwf,Vwrに基づいて推定車体速度Vcf,Vcrを推定する機能を有している。詳しくは、推定車体速度推定手段150は、前輪WFが路面上を移動する速度に対応する第1推定車体速度Vcfと、後輪WRが路面上を移動する速度に対応する第2推定車体速度Vcrとを推定している。
推定車体速度推定手段150は、前輪WFの車輪速度Vwfに基づいて第1推定車体速度Vcfを推定する。推定車体速度推定手段150は、前輪WFの車輪速度Vwfの前回値からの変化量が所定値より大きい場合には、前輪WFの第1推定車体速度Vcfの今回値を、前回値からの変化量が所定値以下となる値にする。
具体的に、推定車体速度推定手段150は、車輪速度Vwfの今回値と前回値の差である車輪速度Vwfの変化量ΔVwf(=|Vwf(n)−Vwf(n−1)|)を算出し、算出した車輪速度Vwfの変化量ΔVwf(大きさ)が所定値以下であるか否かを判断する。前輪WFの加速時において、算出した車輪速度Vwfの変化量ΔVwfが所定値以下である場合には、推定車体速度推定手段150は、算出した車輪速度Vwfの変化量ΔVwfを、第1推定車体速度Vcfの前回値に加算することで、第1推定車体速度Vcfの今回値を算出する。また、前輪WFの加速時において、算出した車輪速度Vwfの変化量ΔVwfが所定値より大きい場合には、推定車体速度推定手段150は、所定値以下の値となる制限値(例えば、所定値と同じ値)を、第1推定車体速度Vcfの前回値に加算することで、第1推定車体速度Vcfの今回値を算出する。
また、前輪WFの減速時において、算出した車輪速度Vwfの変化量ΔVwfが所定値以下である場合には、推定車体速度推定手段150は、第1推定車体速度Vcfの前回値から、算出した車輪速度Vwfの変化量ΔVwfを減算することで、第1推定車体速度Vcfの今回値を算出する。また、前輪WFの減速時において、算出した車輪速度Vwfの変化量ΔVwfが所定値より大きい場合には、推定車体速度推定手段150は、第1推定車体速度Vcfの前回値から、前述した制限値を減算することで、第1推定車体速度Vcfの今回値を算出する。
推定車体速度推定手段150は、前輪WFの第1推定車体速度Vcfと同じ算出方法で後輪WRの第2推定車体速度Vcrを算出する。そして、推定車体速度推定手段150は、前後輪の推定車体速度Vcf,Vcrを推定すると、推定した推定車体速度Vcf,Vcrを判定値変更手段170に出力する。なお、判定値変更手段170は、後で詳述するように、推定車体速度Vcf,Vcrなどに基づいて設定する判定値(下限値Rmin、上限値Rmax)を異径判定手段180に出力する。異径判定手段180は、後で詳述するように、判定値等に基づいて前輪WFと後輪WRが異なる径であるか否かを判定し、その判定結果を推定車体速度推定手段150に返す。
推定車体速度推定手段150は、前後輪の推定車体速度Vcf,Vcrと、異径判定手段180での判定結果とに基づいて、前輪WFの本推定車体速度VCFを算出する。詳しくは、推定車体速度推定手段150は、第1推定車体速度Vcfと、第2推定車体速度Vcrに補正係数αをかけた値と、のうち大きい方の値を、前輪WFの本推定車体速度VCFとして推定する。詳しくは、推定車体速度推定手段150は、以下の式(1)により、前輪WFの本推定車体速度VCFを算出する。
VCF=max〔Vcf,Vcr×α〕 ・・・(1)
また、推定車体速度推定手段150は、異径判定手段180での判定結果に基づいて、補正係数αを設定する。詳しくは、推定車体速度推定手段150は、異径判定手段180が異径であると判定していない場合には、補正係数αを、初期係数α1に設定する。ここで、初期係数α1としては、1より小さく、かつ、1に近い値、例えば0.9などとすることができる。これにより、前輪WFの本推定車体速度VCFを設定する際には、前輪WFの第1推定車体速度Vcfを優先的に選ぶことができるとともに、何らかの異常によって第1推定車体速度Vcfが非常に小さな値になった場合でも、第1推定車体速度Vcfが正常である場合であるときの値と略等しい後輪WRの第2推定車体速度Vcrを選ぶことができる。
また、推定車体速度推定手段150は、異径判定手段180が異径であると判定した場合には、補正係数αを、異径判定手段180が異径であると判定していない場合よりも小さな値、つまり初期係数α1よりも小さな値となる異径補正係数α2に設定する。これにより、前輪WFの本推定車体速度VCFを設定する際には、前輪WFの第1推定車体速度Vcfをより優先的に選ぶことができる。
推定車体速度推定手段150は、前輪WFの本推定車体速度VCFと同じ算出方法で、後輪WRの本推定車体速度VCRを算出する。つまり、推定車体速度推定手段150は、以下の式(2)により、後輪WRの本推定車体速度VCRを算出する。
VCR=max〔Vcr,Vcf×α〕 ・・・(2)
なお、本実施形態では、前輪WFの本推定車体速度VCFを算出するときの補正係数α(α1,α2)と、後輪WRの本推定車体速度VCRを算出するときの補正係数α(α1,α2)を同じ値とする。ただし、本発明はこれに限定されず、前輪WFの本推定車体速度VCFを算出するときの補正係数と、後輪WRの本推定車体速度VCRを算出するときの補正係数を異なる値に設定してもよい。
推定車体速度推定手段150は、前輪WFの本推定車体速度VCFを算出すると、算出した本推定車体速度VCFを車輪ロック抑制制御手段140に出力する。また、推定車体速度推定手段150は、後輪WRの本推定車体速度VCRを算出すると、前後輪の本推定車体速度VCF,VCRを図示せぬ異常判定手段に出力する。
なお、異常判定手段は、例えば、前後輪の本推定車体速度VCF,VCRの差が所定の規定値以上である場合に、車輪速度センサ51または速度検出センサ52が異常であると判定する機能を有している。異常判定手段による異常判定は、例えば、車輪ロック抑制制御の非実行中に行われる。
車体加速度算出手段160は、前輪WFの車輪速度Vwfに基づいて車体加速度Acを算出する機能を有している。車体加速度算出手段160は、車体加速度Acを算出すると、算出した車体加速度Acを判定値変更手段170に出力する。
判定値変更手段170は、推定車体速度Vcf,Vcrと車体加速度Acとに基づいて、前輪WFと後輪WRとが異径であるか否かを判定するための判定値を変更する機能を有している。なお、本実施形態では、判定値として、下限値Rminおよび上限値Rmaxの2つの値を使用することとする。
具体的に、判定値変更手段170は、前後輪の推定車体速度Vcf,Vcrのうち大きい方の推定車体速度を、判定値(Rmin,Rmax)を設定するための推定車体速度Vcとして選択する。詳しくは、判定値変更手段170は、以下の式(3)より、推定車体速度Vcを選択する。
Vc=max〔Vcf,Vcr〕 ・・・(3)
判定値変更手段170は、推定車体速度Vcを選択すると、選択した推定車体速度Vcと車体加速度Acとに基づいて、下限値Rminおよび上限値Rmaxを補正するための補正係数βを設定する。詳しくは、判定値変更手段170は、図5に示す第1テーブルT1および第2テーブルT2を用いて、補正係数βを設定する。
ここで、各テーブルT1,T2は、車体加速度Acと補正係数βとの関係を示すテーブルである。なお、補正係数βは、判定値(Rmin,Rmax)を補正するための係数であるため、各テーブルT1,T2は、車体加速度Acと判定値(Rmin,Rmax)との関係を間接的に示している。各テーブルT1,T2は、後述する記憶手段190に記憶されている。
第1テーブルT1は、車体加速度Acが0以上、かつ、第1加速度A1未満である場合には、補正係数βが値D5になるように設定されている。ここで、値D5は、例えば1に設定することができる。また、第1テーブルT1は、車体加速度Acが第2加速度A2以上である場合には、補正係数βが、値D5よりも小さな値D3になるように設定されている。さらに、第1テーブルT1は、車体加速度Acが第1加速度A1以上、かつ、第2加速度A2未満である場合には、補正係数βを、値D5,D3の間で線形補間するように設定されている。
第2テーブルT2は、補正係数βが小さくなる方向に第1テーブルT1をオフセットしたようなテーブルに設定されている。第3テーブルT3は、補正係数βが小さくなる方向に第2テーブルT2をオフセットしたようなテーブルに設定されている。
具体的に、第2テーブルT2は、車体加速度Acがどのような値であっても、第2テーブルT2において設定される補正係数βが、第1テーブルT1で設定される補正係数βよりも小さな値となるように設定されている。詳しくは、第2テーブルT2は、車体加速度Acが0以上、かつ、第1加速度A1未満である場合には、補正係数βが値D5よりも小さな値D4になるように設定されている。また、第2テーブルT2は、車体加速度Acが第2加速度A2以上である場合には、補正係数βが、値D3よりも小さな値D2になるように設定されている。さらに、第2テーブルT2は、車体加速度Acが第1加速度A1以上、かつ、第2加速度A2未満である場合には、補正係数βを、値D4,D2の間で線形補間するように設定されている。
なお、第3テーブルT3と第2テーブルT2との関係は、第2テーブルT2と第1テーブルT1との関係と同様であるため、第3テーブルT3の具体的な説明は省略する。
判定値変更手段170は、推定車体速度Vcが第1所定値Vth1より小さい場合には、第1テーブルT1を選択し、当該第1テーブルT1と車体加速度Acとに基づいて補正係数βを設定する。また、判定値変更手段170は、推定車体速度Vcが第1所定値Vth1以上で、かつ、第2所定値Vth2未満である場合には、第2テーブルT2を選択し、当該第2テーブルT2と車体加速度Acとに基づいて補正係数βを設定する。さらに、判定値変更手段170は、推定車体速度Vcが第2所定値Vth2以上の場合には、第3テーブルT3を選択し、当該第3テーブルT3と車体加速度Acとに基づいて補正係数βを設定する。
なお、本実施形態では、3つのテーブルT1〜T3を設定することとしたが、本発明はこれに限定されず、2つまたは4つ以上のテーブルを設定してもよい。また、例えば第1の速度範囲に応じた第1テーブルと、第2の速度範囲に応じた第2テーブルのみを設定しておき、第1の速度範囲および第2の速度範囲以外においては、第1テーブルと第2テーブルを線形補間することで、補正係数を設定してもよい。
判定値変更手段170は、補正係数βを設定すると、以下の式(4),(5)によって下限値Rminおよび上限値Rmaxを設定する。
Rmin=Rmin(0)×β ・・・(4)
Rmax=Rmax(0)×β ・・・(5)
Rmin(0):下限値Rminの初期値
Rmax(0):上限値Rmaxの初期値
以上のように構成される判定値変更手段170は、推定車体速度Vcが大きい程、下限値Rminおよび上限値Rmaxを小さな値に設定し、車体加速度Acが大きい程、下限値Rminおよび上限値Rmaxを小さな値に設定する。図2に戻って、判定値変更手段170は、判定値(Rmin,Rmax)を設定すると、設定した判定値(Rmin,Rmax)を異径判定手段180に出力する。
異径判定手段180は、車輪速度比Rvと判定値(Rmin,Rmax)とに基づいて、前輪WFと後輪WRが異径であるか否かを判定する機能を有している。具体的に、異径判定手段180は、車輪速度比Rvが、下限値Rminより大きく、かつ、上限値Rmaxより小さいという条件を満たすか否かを判断し、満たすと判断した場合には、異径であると判定せず、満たさないと判断した場合には、異径であると判定する。
また、異径判定手段180は、バンク角センサ53から出力されてくるバンク角θに基づいて、自動二輪車MCが旋回走行しているか否かを判断し、旋回走行していると判断した場合には、異径であるかの判定を実行しないように構成されている。具体的に、異径判定手段180は、バンク角θが所定角度θth以上であるか否かを判断することで、自動二輪車MCが旋回走行しているか否かを判断する。
また、異径判定手段180は、車体加速度Acの変化量ΔAcの絶対値に基づいて、自動二輪車MCが悪路を走行しているか否かを判断し、悪路を走行していると判断した場合には、異径であるかの判定を実行しないように構成されている。具体的に、異径判定手段180は、車体加速度Acの変化量ΔAcの絶対値が所定の閾値ΔActh以上である場合には、異径であるかの判定を実行しない。
異径判定手段180は、異径であると判定した場合には、異径であることを示す判定結果を推定車体速度推定手段150に出力する。また、異径判定手段180は、異径でないと判定した場合、または、異径であるかの判定を実行しなかった場合には、異径でないことを示す判定結果を推定車体速度推定手段150に出力する。
記憶手段190は、前述したテーブルT1〜T3を記憶する他、制御部100を前述した各手段として機能させるためのプログラムや、推定車体速度Vcf,Vcrなどのパラメータなどを記憶している。
次に、図3を参照して制御部100による本推定車体速度VCF,VCRを算出するための算出処理について詳細に説明する。制御部100は、図3に示す処理を常時繰り返し実行している。
図3に示すように、算出処理において、制御部100は、まず、各センサ51〜53から各車輪速度Vwf,Vwrとバンク角θを取得する(S1)。ステップS1の後、制御部100は、前輪WFの車輪速度Vwfに基づいて車体加速度Acを算出する(S2)。
ステップS2の後、制御部100は、前輪WFの車輪速度Vwfに基づいて前輪WFの第1推定車体速度Vcfを算出する(S3)。ステップS3の後、制御部100は、後輪WRの車輪速度Vwrに基づいて後輪WRの第2推定車体速度Vcrを算出する(S4)。
ステップS4の後、制御部100は、式(3)によって選択される推定車体速度Vcや車体加速度Acなどに基づいて、判定値(Rmin,Rmax)を設定する判定値設定処理を実行する(S5)。なお、判定値設定処理については、後で詳述する。ステップS5の後、制御部100は、バンク角θが所定角度θth未満であるか否かを判断する(S6)。
ステップS6においてθ<θthであると判断した場合には(Yes)、制御部100は、車体加速度Acの変化量ΔAcが所定の閾値ΔActh未満であるか否かを判断する(S7)。ステップS7においてΔAc<ΔActhであると判断した場合には(Yes)、制御部100は、各車輪速度Vwf,Vwrに基づいて車輪速度比Rvを算出する(S8)。
ステップS8の後、制御部100は、車輪速度比Rvが判定値(Rmin,Rmax)の範囲内であるか否か、詳しくはRmin<Rv<Rmaxであるか否かを判断する(S9)。ステップS9においてRmin<Rv<Rmaxであると判断した場合には(Yes)、制御部100は、補正係数αを、初期係数α1に設定する(S10)。
ステップS9においてRmin<Rv<Rmaxでないと判断した場合には(No)、制御部100は、前輪WFと後輪WRが異径であると判定して、補正係数αを、異径補正係数α2に設定する(S11)。なお、ステップS6においてθ<θthでないと判断した場合(No)、つまり自動二輪車MCが旋回走行中であると判断した場合には、制御部100は、ステップS9での異径判定処理を行うことなく、ステップS10において補正係数αを、初期係数α1に設定する。また、ステップS7においてΔAc<ΔActhでないと判断した場合(No)、つまり自動二輪車MCが悪路を走行していると判断した場合にも、制御部100は、ステップS9での異径判定処理を行うことなく、ステップS10において補正係数αを、初期係数α1に設定する。
ステップS10またはステップS11の後、制御部100は、前述した式(1)と、前後輪の推定車体速度Vcf,Vcrと、補正係数αとに基づいて、前輪WFの本推定車体速度VCFを算出する(S12)。ステップS12の後、制御部100は、前述した式(2)と、前後輪の推定車体速度Vcf,Vcrと、補正係数αとに基づいて、後輪WRの本推定車体速度VCRを算出して(S13)、本処理を終了する。
次に、判定値設定処理について説明する。
図4に示すように、制御部100は、判定値設定処理において、まず、上述した式(3)に基づいて選択した推定車体速度Vcが、第1所定値Vth1よりも小さいか否かを判定する(S21)。ステップS21においてV<Vth1であると判定した場合には(Yes)、制御部100は、第1テーブルT1を選択する(S22)。
ステップS22の後、制御部100は、第1テーブルT1と車体加速度Acとに基づいて補正係数βを設定する(S23)。詳しくは、図5に示すように、0≦Ac<A1の場合には、制御部100は、補正係数βをD5に設定する。Ac≧A2の場合には、制御部100は、補正係数βをD3に設定する。
A1≦Ac<A2の場合には、制御部100は、以下の式(6)から補正係数βを設定する。
β=D5+{(D3−D5)/(A2−A1)}×(Ac−A1) ・・・(6)
図4に戻って、制御部100は、ステップS23の後、ステップS23で設定した補正係数βと、上述した式(4),(5)とに基づいて、判定値(Rmin,Rmax)を設定して(S24)、本処理を終了する。
ステップS21においてVc<Vth1でないと判定した場合には(No)、制御部100は、Vth1≦Vc<Vth2であるか否かを判定する(S25)。ステップS25においてVth1≦Vc<Vth2であると判定した場合には(Yes)、制御部100は、第2テーブルT2を選択する(S26)。
ステップS26の後、制御部100は、第2テーブルT2と車体加速度Acとに基づいて補正係数βを設定する(S27)。詳しくは、図5に示すように、0≦Ac<A1の場合には、制御部100は、補正係数βをD4に設定する。Ac≧A2の場合には、制御部100は、補正係数βをD2に設定する。
A1≦Ac<A2の場合には、制御部100は、以下の式(7)から補正係数βを設定する。
β=D4+{(D2−D4)/(A2−A1)}×(Ac−A1) ・・・(7)
図4に戻って、制御部100は、ステップS27の後、ステップS27で設定した補正係数βと、上述した式(4),(5)とに基づいて、判定値(Rmin,Rmax)を設定して(S24)、本処理を終了する。ステップS25においてVth1≦Vc<Vth2でないと判定した場合には(No)、制御部100は、第3テーブルT3を選択する(S28)。
ステップS28の後、制御部100は、第3テーブルT3と車体加速度Acとに基づいて補正係数βを設定する(S29)。詳しくは、図5に示すように、0≦Ac<A1の場合には、制御部100は、補正係数βをD3に設定する。Ac≧A2の場合には、制御部100は、補正係数βをD1に設定する。
A1≦Ac<A2の場合には、制御部100は、以下の式(8)から補正係数βを設定する。
β=D3+{(D1−D3)/(A2−A1)}×(Ac−A1) ・・・(8)
図4に戻って、制御部100は、ステップS29の後、ステップS29で設定した補正係数βと、上述した式(4),(5)とに基づいて、判定値(Rmin,Rmax)を設定して(S24)、本処理を終了する。
次に、図6および図7を参照して制御部100の動作の一例について詳細に説明する。
図6に示すように、自動二輪車MCの発進時においては、駆動輪である後輪WRがスリップすることにより、後輪WRの車輪速度Vwrが、従動輪である前輪WFの車輪速度Vwfよりも大きくなることがある。(時刻t0〜t1)。また、このような発進時においては、前輪WFが後輪WRに遅れて回転することで、前輪WFの車体加速度Acは、徐々に増加した後、徐々に減少する。
この場合、車輪速度比Rvは、1よりも小さな値に徐々に減少した後、1に近づくように増加していく。一方、制御部100は、自動二輪車MCの速度が低速であることから、図5の第1テーブルT1を選択する。そして、制御部100は、第1テーブルT1に基づいて、前輪WFの車体加速度Acの増加に応じて判定値(Rmin,Rmax)を小さくした後、前輪WFの車体加速度Acの減少に応じて判定値(Rmin,Rmax)を大きくしていく。
これにより、判定値(Rmin,Rmax)が、車輪速度比Rvの変化と同様に変化するので、車輪速度比Rvが判定値(Rmin,Rmax)の範囲内に収まる。そのため、自動二輪車MCの発進時において制御部100が異径であると誤判定することを抑制することができる。
また、自動二輪車MCの速度が高速域に達した場合、例えば、推定車体速度Vcが第1所定値Vth1以上になった場合には、駆動輪である後輪WRがスリップすることにより、後輪WRの車輪速度Vwrが、従動輪である前輪WFの車輪速度Vwfよりも大きくなることがある(時刻t2〜t5)。
この場合、車輪速度比Rvは、1よりも小さな値に徐々に減少していく。一方、制御部100は、推定車体速度Vcが第1所定値Vth1以上になったときに(時刻t3)、第2テーブルT2を選択することで、補正係数βを例えば値D5から値D4に変更する。これにより、判定値(Rmin,Rmax)が小さな値に下がるので、減少していく車輪速度比Rvを判定値(Rmin,Rmax)の範囲内に収めることができる。
同様に、推定車体速度Vcが第2所定値Vth2以上になったときには(時刻t4)、制御部100は、第3テーブルT3を選択することで、判定値(Rmin,Rmax)をさらに下げる。そのため、減少していく車輪速度比Rvを判定値(Rmin,Rmax)の範囲内に収めることができる。
図7に示すように、自動二輪車MCが旋回走行するときには、バンク角θが徐々に大きくなっていく(時刻t11〜t12)。また、この際、旋回外輪となる前輪WFの車輪速度Vwfが、旋回内輪となる後輪WRの車輪速度Vwrに対して徐々に大きくなっていくので、車輪速度比Rvが徐々に大きくなっていく。
時刻t12においてバンク角θが所定角度θth以上になると、制御部100は、異径判定の処理を実行しない。そのため、時刻t13以降において車輪速度比Rvが上限値Rmaxを超えても、制御部100が異径判定処理を実行しないので、制御部100が旋回走行時において異径であると誤判定することを抑制することができる。
図8に示すように、自動二輪車MCが悪路を走行している場合には、車体加速度Acの変化量ΔAcが大きくなりやすい。変化量ΔAcが閾値ΔActh以上になったときには、制御部100は、異径判定の処理を実行しない(時刻t21)。そのため、時刻t21の後の時刻t22において車輪速度比Rvが上限値Rmaxを超えても、制御部100が異径判定処理を実行しないので、制御部100が悪路走行時において異径であると誤判定することを抑制することができる。
以上によれば、本実施形態において以下のような効果を得ることができる。
加速走行などにおいて車輪速度比Rvが大きくなった場合であっても、判定値(Rmin,Rmax)を推定車体速度Vcおよび車体加速度Acに基づいて変更するので、加速走行時などにおいて前輪WFと後輪WRが異径であると誤判定するのを抑制することができる。
自動二輪車MCが高速域で走行している際に加速する場合には、駆動輪である後輪WRの車輪速度Vwrが従動輪の前輪WFの車輪速度Vwfよりも大きくなる傾向があるため、車輪速度比Rvが小さくなる傾向にある。したがって、高速域、つまり推定車体速度Vcが大きい場合に判定値(Rmin,Rmax)を小さくすることで、高速域での加速時による車輪速度Vwf,Vwrの差を無視することができ、異径と誤判定するのを抑制することができる。また、自動二輪車MCの発進時など、車体加速度Acが大きい場合には、後輪WRの車輪速度Vwrに対して前輪WFの車輪速度Vwfが遅れて上昇していく傾向があるため、車輪速度比Rvが小さくなる傾向にある。したがって、車体加速度Acが大きい場合に判定値(Rmin,Rmax)を小さくすることで、発進時などの急加速時による車輪速度Vwf,Vwrの差を無視することができ、異径と誤判定するのを抑制することができる。
自動二輪車MCが旋回走行している場合には、異径であるかの判定を実行しないので、旋回走行時において前輪WFと後輪WRが異径であると誤判定するのを抑制することができる。
車体加速度Acの変化量ΔAcの絶対値が所定の閾値ΔActh以上である場合には、異径であるかの判定を実行しないので、悪路走行時において前輪WFと後輪WRが異径であると誤判定するのを抑制することができる。
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。
前記実施形態では、前輪WFの車輪速度Vwfに基づいて車体加速度Acを算出したが、本発明はこれに限定されず、例えば、2つの車輪の少なくとも一方の車輪速度に基づいて車体加速度を算出してもよい。例えば、車体加速度は、後輪WRの車輪速度Vwrから算出してもよいし、2つの車輪の各車輪速度に基づいて算出してもよい。また、車体加速度およびバンク角は、加速度センサ(例えば、3軸の加速度センサ)で検出した信号に基づいて算出してもよい。
前記実施形態では、推定車体速度および車体加速度の両方に基づいて判定値を変更したが、本発明はこれに限定されず、推定車体速度および車体加速度の少なくとも一方に基づいて、判定値を変更するように構成されていればよい。
前記実施形態では、判定値(Rmin,Rmax)の算出に用いる推定車体速度Vcを、前後輪の推定車体速度Vcf,Vcrのうち大きい方の推定車体速度としたが、本発明はこれに限定されない。例えば、前後輪の推定車体速度のうち小さい方の推定車体速度を判定値の算出に用いてもよいし、前後輪の推定車体速度のいずれか一方をそのまま判定値の算出に用いてもよい。
前記実施形態では、補正係数βと車体加速度Acとの関係を示すテーブルT1〜T3を推定車体速度に応じて複数設定したが、本発明はこれに限定されず、例えば判定値と車体加速度との関係を示すテーブルを推定車体速度に応じて複数設定してもよい。また、例えば、判定値と推定車体速度との関係を示すテーブルを車体加速度に応じて複数設定してもよい。
前記実施形態では、車輪の制動を制御する制御手段として車輪ロック抑制制御手段140を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、制御手段は、急ブレーキ時に運転者のブレーキ操作をアシストするブレーキアシスト制御を実行するものであってもよい。
前記実施形態では、制御手段としての車輪ロック抑制制御手段140によって前輪WFのみの制動を制御したが、本発明はこれに限定されず、制御手段は、後輪のみの制動を制御するものであってもよいし、前後輪の制動を制御するものであってもよい。
前記実施形態では、制御部100(車両用ブレーキ制御装置)が、ブレーキ液を利用した液圧ブレーキ装置を制御するように構成されていたが、これに限定されるものではない。例えば、車両用ブレーキ制御装置は、ブレーキ液を利用せずに電動モータによりブレーキ力を発生させる電動ブレーキ装置を制御するように構成されていてもよい。
前記実施形態では、本発明が適用される車両として、自動二輪車を例示したが、これに限定されず、例えば、車両は、自動三輪車やバギーカーなどの自動二輪車以外のバーハンドル車両であってもよいし、自動四輪車などであってもよい。
前記実施形態では、後輪WRのブレーキ系統BRをブレーキペダルLRで操作するように構成したが、本発明はこれに限定されず、例えば手で操作されるブレーキレバーによって後輪のブレーキ系統を操作するように構成してもよい。
また、車輪ロック抑制制御が行われない他方の車輪に対するブレーキは、液圧ブレーキに限定されず、例えば機械式のブレーキであってもよい。
前記実施形態では、後輪の車輪速度を検出するセンサとして速度検出センサ52を利用したが、本発明はこれに限定されず、例えば、車輪の回転に伴ってパルス波を発生する車輪速度センサによって後輪の車輪速度を検出してもよい。
前記した実施形態および変形例で説明した各要素を、任意に組み合わせて実施してもよい。