JP4997609B2 - リチウムマンガン系複合酸化物の製造方法 - Google Patents

リチウムマンガン系複合酸化物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、次世代低コストリチウムイオン二次電池の正極材料として有用なリチウムマンガン系複合酸化物の新規な製造方法に関する。
現在、我が国において、携帯電話、ノートパソコンなどのポータブル機器に搭載されている二次電池のほとんどは、リチウムイオン二次電池である。また、リチウムイオン二次電池は、今後、電気自動車、電力負荷平準化システムなどの大型電池としても実用化されるものと予想されており、その重要性はますます高まっている。
現在、リチウムイオン二次電池においては、正極材料としては主にリチウムコバルト酸化物(LiCoO2)材料が使用され、負極材料としては黒鉛などの炭素材料が使用されている。
この様なリチウムイオン二次電池では、正極材料において可逆的に脱離(充電に相当)、挿入(放電に相当)するリチウムイオン量が電池の容量を決定づけ、脱離・挿入時の電圧が電池の作動電圧を決定づけるために、正極材料であるLiCoO2は、電池性能に関連する重要な電池構成材料である。このため、今後のリチウムイオン二次電池の用途拡大・大型化に伴い、リチウムコバルト酸化物は、一層の需要増加が予想されている。
しかしながら、リチウムコバルト酸化物は、希少金属であるコバルトを多量に含むために、リチウムイオン二次電池の素材コスト高の要因の一つとなっている。さらに、現在コバルト資源の約20%が電池産業に用いられていることを考慮すれば、LiCoO2からなる正極材料のみでは今後の需要拡大に対応することは困難と考えられる。
現在、より安価で資源的に制約の少ない正極材料として、リチウムニッケル酸化物(LiNiO2)、リチウムマンガン酸化物(LiMn2O4)等が報告されており、一部代替材料として実用化されている。しかしながら、リチウムニッケル酸化物には充電時に電池の安全性を低下させるという問題があり、リチウムマンガン酸化物には高温(約60℃)充放電時に3価のマンガンが電解液中に溶出し、それが電池性能を著しく劣化させるという問題がある。このため、これらの材料への代替はあまり進んでいない。
一方、リチウムマンガン酸化物の中で溶出の原因となる3価のマンガンを含まない4価のマンガンイオンのみからなるLi2MnO3という物質が存在し、この材料は充放電不可能と考えられてきたが、最近の研究では4.8Vまで充電することにより充放電可能なことが見いだされてきている(下記非特許文献1参照)。しかしながら充放電特性に関してさらなる改善が必要である。
また、マンガンおよびニッケルに比べて資源的により一層豊富であり、毒性が低く、安価な鉄を含むリチウムフェライト(LiFeO2)について、電極材料としての可能性が検討されている。しかしながら、通常の製造法、すなわち鉄源とリチウム源とを混合し高温焼成する方法によって得られるリチウムフェライトは、ほとんど充放電しないので、リチウムイオン二次電池正極材料として用いることはできない。
一方、イオン交換法により得られるLiFeO2が充放電可能であることが報告されているが(下記特許文献1および2参照)、これらの材料の平均放電電圧は2.5V以下でありLiCoO2の値(約3.7V)に比べて著しく低いため、LiCoO2の代替とすることは困難である。
本発明者らは、すでに、鉄に次いで安価かつ資源的に豊富な上記リチウムマンガン酸化物(Li2MnO3)とリチウムフェライトとからなる層状岩塩型構造の固溶体(Li1+x(FeyMn1-y)1-xO2、(0<x<1/3, 0<y<1)、以下「鉄含有Li2MnO3」という)が、室温での充放電試験においてはリチウムコバルト酸化物並の4V近い平均放電電圧を有することを見出している(下記特許文献3および4参照)。
更に、本発明者らは、特定の条件を満足するリチウム−鉄−マンガン複合酸化物が、高温サイクル試験時にLiMn2O4より高容量(150mAh/g)かつ安定した充放電サイクル特性を示すことを見出している(下記特許文献5参照)。
以上の通り、リチウムコバルト系正極材料に代わり得るリチウムマンガン系複合酸化物正極材料やリチウムフェライト系正極材料について種々の報告がなされているが、より優れた性能を有する正極材料を得るために、正極材料の化学組成や製造条件についての最適化が望まれている。
C. Gan, H. Zhan, X. Hu, and Y. Zhou, Electrochemistry Communication, 7, 1318-1322, (2005) 特開平10-120421号公報 特開平8-295518号公報 特開2002-68748号公報 特開2002-121026号公報 特開2005-154256号公報
本発明は、上記した従来技術の現状に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、リチウムコバルト系正極材料に代わり得る正極材料として期待されるリチウムマンガン系複合酸化物について、より一層優れた充放電性能を有する複合酸化物を形成可能な新規な製造方法を提供することである。
本発明者は、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねてきた。その結果、特定の一般式で表されるリチウムマンガン系複合酸化物について、沈殿形成工程、水熱処理工程及び焼成工程を含む製造方法を採用し、且つマンガン原料として過マンガン酸塩を含む原料を用いる場合には、その他の水溶性マンガン化合物を原料とする場合と比較して、充放電性能が大きく向上して、リチウムイオン電池の正極材料として優れた性能を有するリチウムマンガン系複合酸化物が得られることを見出し、ここに本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記のリチウムマンガン系複合酸化物の製造方法、及び該製造方法によって得られたリチウムマンガン系複合酸化物の用途を提供するものである。
1. 組成式(1):Li1+x(Mn1−y−zFeyTiz)1−xO2(式中、0<x<1/3, 0≦y≦0.75, 0≦z≦0.75, 0≦y+z<1)で表され、層状岩塩型構造の結晶相を含むリチウム−マンガン系複合酸化物の製造方法であって、
マンガン化合物、鉄化合物及びチタン化合物を、組成式(1)中の元素比と同じ割合で水又は水−アルコール混合物からなる溶媒に溶解してなる原料溶液をアルカリ性として沈殿物を形成し、得られた沈殿物を酸化剤および水溶性リチウム化合物と共にアルカリ性条件下で水熱処理し、次いで、水熱処理後の生成物をリチウム化合物の存在下で焼成する工程を含み、原料として用いるマンガン化合物が過マンガン酸塩をマンガン化合物の全量の20モル%以上含むものであることを特徴とするリチウム−マンガン系複合酸化物の製造方法。
2. リチウム−マンガン系複合酸化物が、組成式(2):Li1+x(Mn1−aFe)1−xO2(式中、0<x<1/3, 0.05≦a≦0.75)で表されるものである上記項1に記載の方法。
3. 原料として用いるマンガン化合物における過マンガン酸塩の割合が50モル%以上である上記項1に記載の方法。
4. 原料として用いるマンガン化合物が、過マンガン酸カリウムである上記項1に記載の方法。
5. 上記項1の方法で得られるリチウムマンガン系複合酸化物からなるリチウムイオン二次電池正極材料
6. 上記項1の方法で得られるリチウムマンガン系複合酸化物からなるリチウムイオン二次電池正極材料を構成要素とするリチウムイオン二次電池。
本発明のリチウムマンガン系複合酸化物の製造方法では、水又は水−アルコール混合物からなる溶媒に、マンガン化合物、及び必要に応じて鉄化合物とチタン化合物を溶解してなる原料溶液をアルカリ性として沈殿物を形成し、得られた沈殿物を酸化剤および水溶性リチウム化合物と共にアルカリ性条件下で水熱処理し、次いで、水熱処理後の生成物をリチウム化合物の存在下で焼成する工程を含む方法によってリチウムマンガン系複合酸化物を製造することが必要である。
本発明製造方法の目的物であるリチウムマンガン系複合酸化物は、4価のMnイオンを主構成元素とするLi2MnO3で表される化合物、又はLi2MnO3のMn元素の一部を鉄イオン及び/又はチタンイオンで置換した化合物であるため、Mnイオンの価数制御はきわめて重要である。Mnイオンの価数が4+から大きくずれ3.5+や3+になると他のリチウムマンガン酸化物であるLiMn2O4やLiMnO2といった不純物が生成しやすくなる。本発明において採用する水熱法を含む製造方法によれば、Mnイオンの価数制御が容易であり、目的とするリチウムマンガン系複合酸化物を高収率で得ることができる。
以下、本発明のリチウムマンガン系複合酸化物の製造方法の各工程について具体的に説明する。
沈殿形成工程
本発明では、まず、マンガン化合物、及び必要に応じて鉄化合物とチタン化合物を含む原料溶液を調製する。これらの原料化合物については、目的とするリチウムマンガン系複合酸化物の組成に応じて、鉄化合物とチタン化合物の使用の有無、及び各原料化合物の使用割合を決めればよい。
本発明では、特に、原料として用いるマンガン化合物が、過マンガン酸塩を含むものであることが重要である。
従来、リチウムマンガン系複合酸化物の製造方法において、原料として過マンガン酸塩を使用できることは知られていない。本発明によれば、沈殿形成工程、水熱処理工程及び焼成工程を含む製造方法を採用し、且つ、沈殿形成に用いる原料として過マンガン酸塩を含むマンガン原料を用いる場合には、その他の水溶性マンガン化合物を原料とする場合と比較して、得られるリチウムマンガン系複合酸化物の充放電特性が大きく向上するという予想外の結果が見出された。具体的には、60℃程度の高温の使用環境において優れた充放電性能を有することに加えて、低温での大電流密度下での放電時にも優れた放電性能を発揮するリチウムマンガン系複合酸化物を得ることができる。
過マンガン酸塩を原料とする場合にこのような優れた性能を有するリチウムマンガン系複合酸化物が得られる理由については明確ではないが、後述する実施例の結果から明らかなように、過マンガン酸塩を原料とすることによって、最終的に形成されるリチウムマンガン系複合酸化物が微粉化され、これが優れた充放電性能を有する正極材料となる一因と推測される。また共沈物作製時に生成する可能性のある2価のマンガンイオンを含むスピネルマンガンフェライトMnFe2O4の生成を抑制する効果もあるものと考えられる。
本発明では、過マンガン酸塩は、原料とするマンガン化合物の全量中20モル%以上含まれることが必要であり、50モル%以上含まれることが好ましく、70モル%以上含まれることが更に好ましい。特に、マンガン化合物として過マンガン酸塩のみを用いることが最も好ましい。過マンガン酸塩としては、過マンガン酸カリウム等を用いることができる。
過マンガン酸塩以外のマンガン化合物としては、例えば、塩化物、硝酸塩、硫酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、水酸化物などの水溶性マンガン化合物を用いることができる。これらの水溶性マンガン化合物は、無水物および水和物のいずれであってもよく、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。
原料とする鉄化合物としては、特に限定はなく、通常、水溶性の化合物であればよい。この様な水溶性鉄化合物の具体例としては、塩化物、硝酸塩、硫酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩などの水溶性塩、水酸化物などを挙げることができる。これらの水溶性鉄化合物は、無水物および水和物のいずれであってもよい。また、金属や酸化物などの非水溶性化合物であっても、例えば、塩酸などの酸を用いて溶解させて水溶液として用いることが可能である。鉄化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
チタン化合物についても特に限定はなく、通常、水溶性の化合物であればよい。この様な水溶性チタン化合物の具体例としては、塩化物、硝酸塩、硫酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩などの水溶性塩、水酸化物などを挙げることができる。これらの水溶性チタン化合物は、無水物および水和物のいずれであってもよい。また、金属や酸化物などの非水溶性化合物であっても、例えば、硫酸などの酸を用いて溶解させて水溶液として用いることが可能である。チタン化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
マンガン化合物、鉄化合物及びチタン化合物の混合割合は、目的とするリチウムマンガン系複合酸化物における各元素比と同様の元素比となるようにすればよい。即ち、鉄イオン量(y値:Fe/(Mn+Fe+Ti))については、マンガンイオン、鉄イオン及びチタンイオンの合計量の75モル%以下(0≦Fe/(Mn+Fe+Ti)≦0.75)程度とすればよく、好ましくは60モル%以下(0≦Fe/(Mn+Fe+Ti)≦0.6)程度とすればよい。Feイオンの固溶量が過剰となる場合には、Feイオンの希釈が不十分となるばかりでなく、充放電に関与しないLi層内のFeイオンが多くなるので、電池特性上好ましくない。
チタンイオン量(z値:Fe/(Mn+Fe+Ti))については、マンガンイオン、鉄イオン及びチタンイオンの合計量の75モル%以下(0≦Ti/(Mn+Fe+Ti)≦0.75)程度とすればよく、好ましくは60モル%以下(0≦Ti/(Mn+Fe+Ti)≦0.6)程度とすればよい。後述するように、本発明の方法によって得られるリチウムマンガン系複合酸化物において、Tiイオンも、基本的にFeイオンと同様に、MnイオンやLiイオンを置換する形で層状岩塩型構造中に存在していると思われる。Tiイオンは、4価状態で存在しており、Li欠損の抑制や粉体特性の変化に寄与していると考えられるが、充放電に関与しないTiを多量に使用する場合には、充放電容量の低下を招くので好ましくない。
FeイオンとTiイオンの合計量は、前記組成式において0≦y+z<1程度の範囲とすればよい。
原料溶液中の各化合物の濃度については、特に限定的ではなく、均一な混合溶液を形成でき、且つ円滑に共沈物を形成できるように適宜決めればよい。通常、マンガン化合物、鉄化合物及びチタン化合物の合計濃度を、0.01〜5mol/l程度、好ましくは0.1〜2mol/l程度とすればよい。
該原料溶液の溶媒としては、水を単独で用いる他、メタノール、エタノールなどの水溶性アルコールを含む水−アルコール混合溶媒を用いても良い。水−アルコール混合溶媒を用いることにより、0℃を下回る温度での沈殿生成が可能となる。アルコールの使用量は、目的とする沈殿生成温度などに応じて適宜決めればよいが、通常、水100重量部に対して、50重量部程度以下の使用量とすることが適当である。
該原料溶液から沈殿物(共沈物)を生成させるには、該原料溶液をアルカリ性とすればよい。良好な沈殿物を形成する条件は、原料溶液に含まれる各化合物の種類、濃度などによって異なるので一概に規定出来ないが、通常、pH8程度以上とすることが好ましく、pH11程度以上とすることがより好ましい。
該原料溶液をアルカリ性にする方法については、特に限定はなく、通常は、該原料溶液にアルカリ又はアルカリを含む水溶液を添加すればよい。また、アルカリを含む水溶液に該原料溶液を添加する方法によっても共沈物を形成することができる。
該原料溶液をアルカリ性にするために用いるアルカリとしては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物、アンモニアなどを用いることができる。これらのアルカリを水溶液として用いる場合には、例えば、0.1〜20mol/l程度、好ましくは0.3〜10mol/l程度の濃度の水溶液として用いることができる。また、アルカリは、上記した原料溶液と同様に、水溶性アルコールを含む水−アルコール混合溶媒に溶解しても良い。
沈殿生成の際には、原料溶液の温度を-50℃から+15℃程度、好ましくは-40℃から+10℃程度にすることにより、反応時の中和熱発生に伴うスピネルフェライトなどの生成が抑制され均質な共沈物が形成されやすくなる。
該原料溶液をアルカリ性とした後、更に、0〜150℃程度(好ましくは10〜100℃程度)で、1〜7日間程度(好ましくは2〜4日間程度)にわたり、反応溶液に空気を吹き込みながら、沈殿物の酸化・熟成処理を行うことが好ましい。
得られた沈殿を蒸留水等で洗浄して、過剰のアルカリ成分、残留原料等を除去し、濾別することによって、沈殿を精製することができる。
水熱処理工程
上記した方法で得られた沈殿物を、酸化剤および水溶性リチウム化合物とともにアルカリ性条件下で水熱処理に供する。水熱処理は、沈殿物、酸化剤及び水溶性リチウム化合物を含む水溶液をアルカリ性条件下で加熱することによって行うことができる。加熱は、通常、密閉容器中で行えばよい。
水熱反応に用いる水溶液では、上記工程で得られる沈殿物の含有量は、水1リットルあたり1〜100g程度とすることが好ましく、10〜80g程度とすることがより好ましい。
水溶性リチウム化合物としては、例えば、塩化リチウム、硝酸リチウム等の水溶性リチウム塩、水酸化リチウム等を用いることができる。これらの水溶性リチウム化合物は、一種単独又は二種以上混合して用いることができ、無水物および水和物の何れを用いても良い。
水溶性リチウム化合物の使用量は、Mn、Fe及びTiの合計モル数に対するリチウム元素モル比として、Li/(Mn+Fe+Ti)=1〜10程度とすることが好ましく、3〜7程度とすることがより好ましい。
水溶性リチウム化合物の濃度は、0.1〜10mol/l程度とすることが好ましく、1〜8mol/l程度とすることがより好ましい。
酸化剤としては、水熱反応時に分解して酸素を発生するものであれば、特に限定無く使用でき、具体例として、塩素酸カリウム、塩素酸リチウム、塩素酸ナトリウム、過酸化水素水等を挙げることができる。
酸化剤の濃度は、0.1〜10mol/l程度とすることが好ましく、0.5〜5mol/l程度とすることがより好ましい。
水熱反応を行う際の水溶液のpHについては、通常、pH8程度以上とすることが好ましく、pH11程度以上とすることがより好ましい。
沈殿物、酸化剤及び水溶液リチウム化合物を含む水溶液がアルカリ性条件下にある場合には、そのまま加熱すればよいが、pH値が低い場合には、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物、アンモニアなどを添加してpH値を上げればよい。
水熱反応は、通常の水熱反応装置(例えば、市販のオートクレーブ)を用いて行うことができる。
水熱反応条件は、特に限定されるものではないが、通常100〜300℃程度で0.1〜150時間程度とすればよく、好ましくは150〜250℃程度で1〜100時間程度とすればよい。
水熱反応終了後、通常、残存するリチウム化合物などの残存物を除去するために、反応生成物を洗浄する。洗浄には、例えば、水、水-アルコール、アセトンなどを用いることができる。次いで、生成物を濾過し、例えば、80℃以上の温度(通常は100℃程度)で乾燥することにより、リチウムマンガン系複合酸化物を得ることができる。
焼成工程
上記した方法によって得られたリチウムマンガン系複合酸化物をリチウム化合物とともに焼成することによって、Li含有量および粉体特性を制御して目的とする岩塩型を基本構造とするリチウムマンガン系複合酸化物を得ることができる。
リチウム化合物としては、リチウム元素を含む化合物であれば特に限定なく使用でき、具体例として、塩化リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム等のリチウム塩、水酸化リチウム、これらの水和物等を挙げることができる。リチウム化合物の使用量は、水熱法で得られたリチウムマンガン系複合酸化物1モルに対して0.01〜2モル程度とすればよい。
通常、反応性を向上させるために、水熱法で得られたリチウムマンガン系複合酸化物にリチウム化合物を加えて粉砕混合した後、焼成することが好ましい。粉砕の程度については、粗大粒子が含まれず、混合物が均一な色調となっていればよい。
リチウム化合物は、粉末形態、水溶液形態等として用いることができるが、反応の均一性を確保するために、水溶液の形態で使用することが好ましい。この場合、水溶液の濃度については、通常、0.1〜10mol/l程度とすればよい。
焼成雰囲気については、特に限定はなく、大気中、酸化性雰囲気中、不活性雰囲気中、還元雰囲気中等任意の雰囲気を選択できる。焼成温度は、200〜1000℃程度とすることが好ましく、300〜800℃程度とすることがより好ましい。焼成時間は、焼成温度まで達する時間を含めて0.1〜100時間程度とすることが好ましく、0.5〜60時間程度とすることがより好ましい。
焼成終了後、通常、過剰のリチウム化合物を除去するために、焼成物を水洗処理、溶媒洗浄処理等に供する。その後、濾過を行い、例えば、80℃以上の温度、好ましくは100℃程度の温度で加熱乾燥してもよい。
更に、必要に応じて、この加熱乾燥物を粉砕し、リチウム化合物を加えて、焼成し、洗浄し、乾燥するという一連の操作を繰り返し行うことにより、リチウムマンガン系複合酸化物の優れた特性(リチウムイオン二次電池用正極材料としての作動電圧領域における安定的な充放電特性、高容量など)をより一層改善することができる。
リチウムマンガン系複合酸化物
上記した方法で得られるリチウムマンガン系複合酸化物は、組成式(1):Li1+x(Mn1-y-zFeyTiz)1-xO2(式中、0<x<1/3, 0≦y≦0.75, 0≦z≦0.75, 0≦y+z<1)で表されるものである。
上記組成式(1)で表される複合酸化物の内で、例えば、組成式(2):Li1+x(Mn1−aFe)1-xO2(式中、0<x<1/3, 0.05≦a≦0.75)で表される複合酸化物は、公知の化合物であり、リチウムマンガン酸化物(Li2MnO3)とリチウムフェライトとからなる層状岩塩型構造の固溶体を主成分とするものであり、室温での充放電試験においてはリチウムコバルト酸化物並の4V近い平均放電電圧を有するものである。
また、上記組成式(1)で表される複合酸化物の内で、組成式(3):Li1+x(Mn1-bTib)1-xO2(式中、0<x<1/3, 0.01≦b≦0.75)で表される複合酸化物は、文献未記載の新規化合物である。この複合酸化物は、上記した特定量のTiイオンが含まれていることが重要である。Tiイオンが存在しないリチウム−マンガン複合酸化物では、該複合酸化物を製造する際に高温で焼成すると、Liが揮発してLi欠損組成になりやすい傾向がある。試料中に含まれるLiは充放電に寄与する成分であり、Li欠損は充放電特性を低下させることがある。組成式(3)の複合酸化物によれば、Tiが存在することによってLi欠損が著しく抑制され、充放電に関与するLi成分が増加して、リチウム−マンガン複合酸化物と比較してより一層充放電特性が向上するものと思われる。またTiイオンを固溶させることにより一次粒子径が減少する傾向が認められ、比表面積が増大していることから、微粉化により充放電特性の向上がはかられているものと思われる。さらにTiイオンの固溶によりLiMnO2というマンガン系特有の不純物の生成を短時間焼成においても抑制可能なことも充放電特性の向上の一因と思われる。
本発明の製造方法で得られる組成式(1):Li1+x(Mn1-y-zFeyTiz)1-xO2(式中、0<x<1/3, 0≦y≦0.75, 0≦z≦0.75, 0≦y+z<1)で表されるリチウムマンガン系複合酸化物は、岩塩型構造を基本とした結晶構造であり、図1のような公知物質であるLiCoO2に類似した層状岩塩型構造を含むものである。図1の左側には、LiCoO2について、結晶の各層に含まれる元素を示し、図1の右側には、本発明方法で得られる複合酸化物について、結晶の各層に含まれる元素を示している。図1から判るように、LiCoO2は、立方最密充填した酸化物イオンの8面体格子間位置にa軸方向に沿って2次元的にCoイオンとLiイオンとがそれぞれ配列し、c軸方向に交互に積層した結晶構造を有するものである。本発明方法で得られるリチウム−マンガン系複合酸化物における層状岩塩型構造の結晶相は、Liイオン、Feイオン、Tiイオン及びMnイオンが、LiCoO2のCo層に存在していることと、Li層内にFeイオン及びTiイオンが部分的に置換していることが特徴である。これは図2に示されるリチウムマンガン酸化物の一つであるLi2MnO3(単斜晶)において、Mn-Li層内での両イオンの規則配列が区別がつかないほど乱れた構造に対応するものである。
本発明の製造方法で得られるリチウムマンガン系複合酸化物は、上記した層状岩塩型構造の結晶相の他に、図3に示される立方晶岩塩型構造の結晶相も含むものである。この結晶構造は図1と図2において陽イオンの区別がつかないほど完全に乱れた構造に対応するものである。この場合、層状岩塩型構造の結晶相と立方晶岩塩型構造の結晶相の割合は、通常、層状岩塩型構造結晶相:立方晶岩塩型構造結晶相(重量比)=10:90〜90:10程度の範囲となる。
本発明方法によって得られる複合酸化物は、充放電特性に重大な影響を及ぼさない範囲(最大10モル%程度)の水酸化リチウム、炭酸リチウム、マンガン化合物、鉄化合物、チタン化合物 (それらの水和物も含む)などの不純物相を含んでいても良い。
本発明の製造方法によって得られるリチウムマンガン系複合酸化物は、リチウムイオン二次電池における正極材料として用いた場合に、従来の製造方法で得られたリチウムマンガン系複合酸化物と比較すると、60℃程度の高温の使用環境において放電容量が高く、サイクル特性も良好である。更に、低温での大電流密度下での放電時にも優れた放電性能を発揮することができる。
本発明方法によって得られるリチウムマンガン系複合酸化物を用いるリチウムイオン二次電池は、公知の手法により製造することができる。すなわち、正極材料として、本発明方法で得られたリチウムマンガン系複合酸化物を使用する他は、負極材料として、公知の金属リチウム、炭素系材料(活性炭、黒鉛)などを使用し、電解液として、公知のエチレンカーボネート、ジメチルカーボネートなどの溶媒に過塩素酸リチウム、LiPF6などのリチウム塩を溶解させた溶液を使用し、さらにその他の公知の電池構成要素を使用して、常法に従って、リチウムイオン二次電池を組立てればよい。
本発明のリチウムマンガン系複合酸化物の製造方法によれば、従来の製造方法によって得られるリチウムマンガン系複合酸化物と比較して、高温の使用環境において優れた充放電性能を有し、且つ低温での大電流密度下での放電時にも優れた放電性能を発揮するリチウムマンガン系複合酸化物を得ることができる。
従って、本発明によれば、後述する実施例から明らかなように、安価な原料及び元素を使用して、平均放電電圧が3V以上を保持でき、且つリチウムコバルト酸化物系正極材料と同等またはそれ以上の放電容量(200mAh/g以上)および重量エネルギー密度(700mWh/g以上)を有する、正極材料として有用なリチウムマンガン系複合酸化物を得ることができる。
本発明によって得られるリチウムマンガン系複合酸化物がこのような大容量を有するのは、従来の正極材料とは異なり、放電曲線が放電終止電圧(2.0Vまたは1.5V)に向かって緩やかに低下していく形状であることによるものであり、放電終止電圧を2.0V程度又は1.5V程度まで下げることによって、容易に大容量化を実現することができる。
また、本発明方法で得られるリチウムマンガン系複合酸化物は、30℃以下という低温においても大きな放電容量を有していることから低温環境下においても優れた性能を発揮でき、小型民生用のみならず車載用などの大型リチウムイオン二次電池用正極材料としてきわめて有用である。
特に、本発明方法によって得られる複合酸化物は、微粉末から構成されているために優れた充放電特性を発揮することができる。
本発明の製造方法で得られるリチウムマンガン系複合酸化物は、上記した優れた性能を有するものであり、高容量かつ低コストのリチウムイオン二次電池用正極材料として、極めて有用である。
本発明の製造方法によって得られるリチウムマンガン系複合酸化物を構成する結晶相の内で、層状岩塩型構造の結晶相を模式的に示す図面である。 単斜晶Li2MnO3構造の結晶相を模式的に示す図面である。 本発明方法で得られるリチウムマンガン系複合酸化物を構成する結晶相の内で、立方晶岩塩型構造の結晶相を模式的に示す図面である。 実施例1及び比較例1で得られた試料のX線回折パターンを示す図面である。 実施例1で得られた複合酸化物の電子顕微鏡写真と比較例1で得られた複合酸化物の電子顕微鏡写真を電子的に画像処理した図面である。 充放電試験1で測定した初期充放電特性を示すグラフである。 充放電試験1で測定した放電容量の充放電サイクル数依存性を示すグラフである。 充放電試験2で測定した初期放電特性を示すグラフである。 充放電試験2で測定した1/3C、1C、2C、3C、5C、10Cの各電流密度における2.0Vまでの初期放電特性を示すグラフである。 実施例2、実施例3及び比較例2で得られた試料のX線回折パターンを示す図面である。 実施例2及び実施例3で得られた複合酸化物の電子顕微鏡写真と比較例2で得られた複合酸化物の電子顕微鏡写真を電子的に画像処理した図面である。 充放電試験3で測定した初期充放電特性を示すグラフである。 充放電試験3で測定した放電容量の充放電サイクル数依存性を示すグラフである。 実施例4及び比較例3で得られた試料のX線回折パターンを示す図面である。 実施例4で得られた複合酸化物の電子顕微鏡写真と比較例3で得られた複合酸化物の電子顕微鏡写真を電子的に画像処理した図面である。 充放電試験4で測定した初期充放電特性を示すグラフである。 充放電試験4で測定した放電容量の充放電サイクル数依存性を示すグラフである。 充放電試験5で測定した初期充放電特性を示すグラフである。 充放電試験5で測定した放電容量の充放電サイクル数依存性を示すグラフである。 実施例5及び比較例4で得られた試料のX線回折パターンを示す図面である。 実施例5で得られた複合酸化物の電子顕微鏡写真と比較例4で得られた複合酸化物の電子顕微鏡写真を電子的に画像処理した図面である。 充放電試験6で測定した初期充放電特性を示すグラフである。 充放電試験6で測定した放電容量の充放電サイクル数依存性を示すグラフである。
以下、実施例および比較例を示し、本発明の特徴とするところを一層明確にするが、本発明はこれら実施例に限定されない。
実施例1
硝酸鉄(III)9水和物50.50g及び過マンガン酸カリウム19.75g (全量0.25mol、Fe:Mnモル比=1:1)を500mlの蒸留水に加え、完全に溶解させた。別のビーカーに水酸化リチウム水溶液(蒸留水500mlに水酸化リチウム1水和物50gを溶解させた溶液)を作製した。この水酸化リチウム水溶液をチタン製ビーカーに入れ、エタノール150mlを加えて攪拌後、恒温漕内に静置し、恒温漕内を-10℃に保った。次いで、この水酸化リチウム水溶液に上記金属塩水溶液を2〜3時間かけて徐々に滴下して、Fe-Mn沈殿物を形成させた。反応液が完全にアルカリ性(pH11以上)になっていることを確認し、攪拌下に共沈物を含む反応液に室温で1日間空気を吹き込んで沈殿を熟成させた。
得られた沈殿を蒸留水で洗浄して濾別し、この沈殿生成物を水酸化リチウム1水和物50g、塩素酸カリウム50g、水酸化カリウム309g及び蒸留水600mlとともにポリテトラフルオロエチレンビーカー中に入れ、よく攪拌した。この水溶液のpHは11以上であった。その後、水熱反応炉(オートクレーブ)内に設置し、220℃で5時間水熱処理した。
水熱処理終了後、反応炉を室温付近まで冷却し、水熱処理反応液を含むビーカーをオートクレーブ外に取り出し、生成している沈殿物を蒸留水で洗浄して、過剰に存在する水酸化リチウムなどの塩類を除去し、濾過することにより、粉末状生成物(リチウムマンガン系複合酸化物)を得た。
濾過して得た粉末を、水酸化リチウム1水和物5.25gを蒸留水100mlに溶解させた水酸化リチウム水溶液と混合し、攪拌後、100℃において一晩乾燥し、粉砕して粉末を作製した。
次いで、得られた粉末を大気中で1時間かけて850℃まで昇温し、その温度で1分間焼成後、炉中で室温まで冷却し、過剰のリチウム塩を除去するために、焼成物を蒸留水で水洗し、濾過し、乾燥して、目的物であるリチウム−鉄−マンガン複合酸化物(鉄含有Li2MnO3)を粉末状生成物として得た。
この最終生成物のX線回折パターンを図4に示す。リートベルト解析結果(プログラムはRIETAN-2000を使用)より、図中○で示される炭酸リチウム由来のピークを除いたすべてのピークは層状岩塩型の鉄含有Li2MnO3の単位胞
Figure 0004997609
を有する結晶相(第一相:a=2.8871(18)Å, c=14.259(6)Å)と、立方晶岩塩型のα-LiFeO2の単位胞
Figure 0004997609
(第二相:a=4.1028(3Å、第一相と第二相の存在割合30:69)で指数付けできた。得られた層状岩塩型結晶相の格子定数値は、既に報告されているリチウム−鉄−マンガン複合酸化物の値(格子定数a=2.882Å, c=14.287Å)に近い値であった(M.Tabuchi, A.Nakashima, H.Shigemura, K.Ado, H.Kobayashi, H.Sakaebe, H.Kageyama, T.Nakamura, M.Kohzaki, A.Hirano and R.Kanno, Journal of The Electrochemical Society, 149, A509-A524, 2002。)
化学分析(下記表1)により、Feが仕込量に近いそれぞれ50モル%(y値)含まれていること、Li/(Fe+Mn)値より計算されるx値が0.21であることから、実施例1において、鉄含有Li2MnO3(Li1.21(Fe0.50Mn0.50)0.79O2)が得られたことが確認できた。
図5は、実施例1で最終生成物として得られた鉄含有Li2MnO3の電子顕微鏡写真を電子的に画像処理した図面である。図5から、実施例1により、一次粒子径が100nm以下で1〜50μm程度に凝集した鉄含有Li2MnO3が形成されていることが明らかである。また比表面積は24.2m2/gであり、後述する比較例1の値21.8m2/gより大きく、より微粉のリチウムマンガン系複合酸化物が得られたことが明らかである。
比較例1
原料として、硝酸鉄(III)9水和物50.50gと塩化マンガン(II)4水和物24.74g(全量0.25mol、Fe:Mnモル比=1:1)を500mlの蒸留水に加えることによって得られたFe-Mn混合水溶液を用いること以外は、実施例1と同様の方法で、沈殿形成と水熱処理を行い、更に、実施例1と同様にして水酸化リチウムを添加して焼成し、焼成物を蒸留水で水洗し、濾過し、乾燥して、鉄含有Li2MnO3を粉末状生成物として得た。
この最終生成物のX線回折パターンを図4に示す。すべての回折ピークは、層状岩塩型構造由来の単位胞
Figure 0004997609
を有する結晶相(第一相:a=2.8854(3)Å, c=14.2964(14)Å)と、立方晶岩塩型のα-LiFeO2の単位胞
Figure 0004997609
(第二相:a=4.1035(7)Å、第一相と第二相の存在割合77:23)で指数付けできた。上記結果より層状岩塩型結晶相を含むリチウム−鉄−マンガン複合酸化物が生成していることが確認できた。得られた層状岩塩型結晶相の格子定数値は、既に報告されているリチウム−鉄−マンガン複合酸化物の値(格子定数a=2.882Å, c=14.287Å)に近い値であった(M.Tabuchi, A.Nakashima, H.Shigemura, K.Ado, H.Kobayashi, H.Sakaebe, H.Kageyama, T.Nakamura, M.Kohzaki, A.Hirano and R.Kanno, Journal of The Electrochemical Society, 149, A509-A524, 2002。)
化学分析(下記表1)により、Feが仕込量通り50モル%(y値)含まれていること、Li/(Mn+Fe)値より計算されるx値が0.20であることから、比較例1で得られた試料の平均組成は(Li1.20(Fe0.50Mn0.50)0.80O2)となる。このように比較例1においても、実施例1とほぼ同様の化学組成を有する鉄含有Li2MnO3が作製できたことがわかる。
図5には、比較例1において最終生成物として得られた鉄含有Li2MnO3の電子顕微鏡写真を電子的に画像処理した図面を示す。図5から、比較例1においても、実施例1と同様に一次粒子径が100nm以下で1〜50μm程度に凝集した鉄含有Li2MnO3が形成されていることが確認できるが、比較例1の一次粒子径は実施例1に比べて僅かに大きくなっていることがわかる。比較例1で得られた酸化物の比表面積は21.8m2/g であり、前述した実施例1で得られた酸化物の値24.2m2/gに比べて小さくなっており、より粗粉のリチウム−鉄−マンガン複合酸化物が得られたことが明らかである。
以上の結果より、比較例1では、マンガン源が塩化マンガン(II)であること以外は実施例1と同じ製造条件で作製したにもかかわらず、粒成長が生じたことが明らかである。この結果から、実施例1において過マンガン酸カリウムを原料としたことにより、微粉化の効果が得られたことが確認できた。
以上の実施例1及び比較例1における元素分析結果を下記表1に示す。
Figure 0004997609
充放電試験1
上記実施例1および比較例1で得た各複合酸化物を正極材料とし、Li金属を負極材料として用い、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの混合溶媒に支持塩であるLiPF6を溶解させた1M溶液を電解液としてコイン型リチウム電池を作成した。このリチウム電池の充放電特性を60℃において(電位範囲2.0-4.5V、電流密度42.5mA/g)充電開始にて検討した。
図6は、実施例1と比較例1の各正極材料を用いたリチウム電池について、初期充放電特性を示すグラフである。図6において、右上がりの曲線は充電曲線に対応し、右下がりの曲線は放電曲線に対応する。図6および表2から、過マンガン酸カリウムをマンガン原料として調製した実施例1の鉄含有Li2MnO3正極材料を用いた電池は、塩化マンガン(II)をマンガン原料として調製した鉄含有Li2MnO3正極材料を用いた電池と比較して、初期充放電容量が大きく(238mAh/g)、充放電効率に優れる(75%)ことが明らかである。
Figure 0004997609
図7は、各電池の放電容量の充放電サイクル数依存性を示すグラフである。この結果から、実施例1の鉄Li2MnO3正極材料を用いたリチウム電池は、すべてのサイクル数にわたって高容量であることが判る。
以上の結果から、過マンガン酸カリウムをマンガン原料として調製した本発明の鉄含有Li2MnO3複合酸化物は、60℃という高温の充放電試験において優れた充放電特性を示すものであり、リチウムイオン二次電池用リチウムマンガン系正極材料として、優れた性能を有することが確認できた。
充放電試験2
上記実施例1および比較例1で得た各複合酸化物を正極材料とし、Li金属を負極材料として用い、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとの混合溶媒に支持塩であるLiPF6を溶解させた1M溶液を電解液としてコイン型リチウム電池を作製した。このリチウム電池の充放電特性を30℃において(電位範囲2.0-4.8V、電流密度42.5mA/g)充電開始にて検討した。なお放電時の温度を30℃の他に0℃、-20℃と変化させた。-20℃の放電時は、電流密度を8.5mA/gに下げて特性評価を実施した。また各温度の放電試験前に同一の電流密度で30℃での充電-放電-充電を実施した。
尚、30℃および0℃での放電容量測定は、電流密度42.5mA/gで実施し、その前の充電は30℃、上限電圧4.8Vで電流密度42.5mA/gで実施した。また、-20℃放電容量測定は、電流密度8.5mA/gで実施し、その前の充電は30℃、上限電圧4.8Vで電流密度8.5mA/gで実施した。
図8は、実施例1(図中の実線)と比較例1(図中の破線)の各正極材料を用いたリチウム電池について、30℃、4.8Vまで充電後の3種の異なる温度(30℃、0℃、-20℃)での放電特性を示すグラフである。また、下記表3には、この試験で得られた充放電データ値を示す。
Figure 0004997609
図8および表3から、実施例1の鉄含有Li2MnO3正極材料を用いた電池は、比較例1の正極材料を用いた電池と比較して、どの温度においても放電容量が大きく、特に低温になるに従い両者の比率が増大していることが明らかである。
以上の結果から、過マンガン酸カリウムをマンガン原料として得られた鉄含有Li2MnO3複合酸化物は、60℃という高温の充放電試験時のみならず30℃、0℃、及び-20℃においても優れた放電特性を示すものであり、リチウムイオン二次電池用のリチウム−鉄−マンガン複合酸化物からなる正極材料として、優れた性能を有することが確認できた。
また上記実施例1および比較例1で得た各複合酸化物を正極材料とし、Li金属を負極材料として用い、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとの混合溶媒に支持塩であるLiPF6を溶解させた1M溶液を電解液としてコイン型リチウム電池を作製した。このリチウム電池の充放電特性を30℃において、電位範囲2.0-4.8Vで、充電開始にて検討した。更に、放電時の電流密度を127.5mA/gを1Cとして、42.5mA/g(1/3C)、127.5mA/g(1C)、255mA/g(2C)、382.5mA/g(3C)、637.5mA/g(5C)、1275mA/g(10C)と変化させて充放電特性の評価を行った。尚、充電時は、電流密度を1/3C(42.5mA/g)に固定して特性評価を実施した。また電流密度の放電試験前に同一の電流密度で30℃での充電-放電-充電を実施した。
図9は、実施例1(図中の実線)と比較例1(図中の破線)の各正極材料を用いたリチウム電池について、30℃、4.8Vまで充電後の上記6種の異なる電流密度での2.0Vまでの放電特性を示すグラフである。また、下記表4には、この試験で得られた放電容量値を示す。
Figure 0004997609
図9及び表4から、KMnO4を原料として調製した実施例1の鉄含有Li2MnO3正極材料を用いた電池は、MnCl2・4H2Oを原料として調製した比較例1の鉄含有Li2MnO3正極材料を用いた電池と比較して、どの電流密度においても放電容量が大きいことが明らかである。また3C以上の高い電流密度における平均放電電圧も高かった。
実施例2
出発原料として過マンガン酸カリウム39.51g(全量0.25mol)を用いること、及び水熱反応時間を48時間とすること以外は、実施例1と同様にして、沈殿作製、沈殿熟成、水熱処理、水洗処理、濾過、及び乾燥を行い、粉末状生成物(リチウムマンガン系複合酸化物)を得た。
この最終生成物のX線回折パターンを図10に示す。リートベルト解析結果(プログラムはRIETAN-2000を使用)より、すべてのピークは層状岩塩型のLi2MnO3の単位胞
Figure 0004997609
で指数付けできた。得られた結晶相の格子定数値は、a=4.9242(9)Å, b=8.5346(14)Å, c=9.6173(9)Å, β=99.803(19)°であり、既に報告されている単斜晶Li2MnO3の値(格子定数a=4.921(6)Å, b=8.526(3)Å, c=9.606(5)Å, β=99.47(5)°)に近い値であった(A. Riou, A. Lecerf, Y. Gerault and Y. Cudennec, Materials Research Bulletin, 27, p.269-275, 1992.)。
化学分析(下記表5)により、Li/Mn値より計算されるx値が0.29であることから、実施例2において、Li2MnO3(Li1.33Mn0.67O2)に近い組成(Li1.29Mn0.71O2)が得られたことが確認できた。
図11は、実施例2で最終生成物として得られたLi2MnO3の電子顕微鏡写真(10万倍)を電子的に画像処理した図面である。図11から、実施例2により、一次粒子径が100nm以下で凝集した鉄含有Li2MnO3が形成されていることが明らかである。また比表面積は44.0m2/gであり、後述する比較例2の値2.5m2/gより大きく、より微粉のリチウムマンガン系複合酸化物が得られたことが明らかである。
実施例3
実施例2と同様にして、沈殿作製、沈殿熟成、水熱処理、及び水洗処理を行い、粉末状生成物(リチウムマンガン系複合酸化物)を得た。
濾過して得た粉末を、水酸化リチウム1水和物5.25gを蒸留水100mlに溶解させた水酸化リチウム水溶液と混合し、攪拌後、100℃において一晩乾燥し、粉砕して粉末を作製した。
次いで、得られた粉末を大気中で1時間かけて650℃まで昇温し、その温度で20時間焼成後、炉中で室温まで冷却し、過剰のリチウム塩を除去するために、焼成物を蒸留水で水洗し、濾過し、乾燥して、目的物であるリチウムマンガン複合酸化物を粉末状生成物として得た。
この最終生成物のX線回折パターンを図10に示す。リートベルト解析結果(プログラムはRIETAN-2000を使用)より、すべてのピークは層状岩塩型のLi2MnO3の単位胞
Figure 0004997609
で指数付けできた。得られた結晶相の格子定数値は、a=4.9249(9)Å, b=8.5374(14)Å, c=9.6169(10)Å, β=99.787(18)°であり、既に報告されている単斜晶Li2MnO3の値(格子定数a=4.921(6)Å, b=8.526(3)Å, c=9.606(5)Å, β=99.47(5)°)に近い値であった(A. Riou, A. Lecerf, Y. Gerault and Y. Cudennec, Materials Research Bulletin, 27, p.269-275, 1992.)。
化学分析(下記表5)により、Li/Mn値より計算されるx値が0.31であることから、実施例3において、Li2MnO3(Li1.33Mn0.67O2)に近い組成(Li1.31Mn0.69O2)が得られたことが確認できた。
図11は、実施例3で最終生成物として得られたLi2MnO3の電子顕微鏡写真(10万倍)を電子的に画像処理した図面である。図11から、実施例3により、一次粒子径が100nm以下で凝集した鉄含有Li2MnO3が形成されていることが明らかである。また比表面積は26.4m2/gであり、後述する比較例2の値2.5m2/gより大きく、より微粉のリチウムマンガン系複合酸化物が得られたことが明らかである。
比較例2
出発原料として、過マンガンカリウムに代えて塩化マンガン(II)4水和物49.48g(全量0.25mol)を用いること以外は実施例3と同様にして、沈殿作製、沈殿熟成、水熱処理、Li塩添加、焼成、及び水洗処理を行い、粉末状生成物(リチウムマンガン系複合酸化物)を得た。
この最終生成物のX線回折パターンを図10に示す。リートベルト解析結果(プログラムはRIETAN-2000を使用)より、すべてのピークは層状岩塩型のLi2MnO3の単位胞
Figure 0004997609
で指数付けできた。得られた結晶相の格子定数値は、a=4.9266(2)Å, b=8.5270(4)Å, c=9.6084(4)Å, β=99.600(3)°であり、既に報告されている単斜晶Li2MnO3の値(格子定数a=4.921(6)Å, b=8.526(3)Å, c=9.606(5)Å, β=99.47(5)°)に近い値であった(A. Riou, A. Lecerf, Y. Gerault and Y. Cudennec, Materials Research Bulletin, 27, p.269-275, 1992.)。
化学分析(下記表5)により、Li/Mn値より計算されるx値が0.32であることから、実施例3において、Li2MnO3(Li1.33Mn0.67O2)に近い組成(Li1.32Mn0.68O2)が得られたことが確認できた。
図11は、比較例2で最終生成物として得られたLi2MnO3の電子顕微鏡写真(1万倍)を電子的に画像処理した図面である。図11から、比較例2により、微粒子も見られるものの多くは一次粒子径が1mm以上のLi2MnO3が形成されていることが明らかである。また比表面積は2.5m2/gであり、実施例2および3の値44.0および26.4m2/gより小さく、より粗粉のリチウムマンガン系複合酸化物が得られたことが確認できた。
以上の実施例2、3及び比較例2における元素分析結果を下記表1に示す。
Figure 0004997609
充放電試験3
上記実施例2、3および比較例2で得た各複合酸化物を正極材料とし、Li金属を負極材料として用い、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとの混合溶媒に支持塩であるLiPF6を溶解させた1M溶液を電解液としてコイン型リチウム電池を作成した。このリチウム電池の充放電特性を30℃において(電位範囲2.0-4.8V、電流密度42.5mA/g)充電開始にて検討した。
図12は、実施例2、3と比較例2の各正極材料を用いたリチウム電池について、初期充放電特性を示すグラフである。図12において、右上がりの曲線は充電曲線に対応し、右下がりの曲線は放電曲線に対応する。また充放電データを下記表6に示す。
Figure 0004997609
図12および表6から、過マンガン酸カリウムをマンガン原料として調製した実施例2および3のLi2MnO3正極材料を用いた電池は、塩化マンガン(II)をマンガン原料として調製した比較例3のLi2MnO3正極材料を用いた電池と比較すると、平均電圧はほぼ同等であり、初期充放電容量、初期放電エネルギー密度が大きいことが明らかである。
図13は、各電池の放電容量の充放電サイクル数依存性を示すグラフである。この結果から、実施例2および3のLi2MnO3正極材料を用いたリチウム電池は、比較例3の正極を用いた電池と比較して、すべてのサイクル数にわたって高容量であることが判る。
以上の結果から、過マンガン酸カリウムをマンガン原料として調製して得られるLi2MnO3複合酸化物は、30℃の充放電試験において優れた充放電特性を示すものであり、リチウムイオン二次電池用リチウムマンガン系複合酸化物正極材料として、優れた性能を有することが確認できた。
実施例4
出発原料として硝酸鉄(III)九水和物40.40g、30%硫酸チタン(IV)水溶液40.00g、及び過マンガン酸カリウム15.80g(全量0.25mol,Fe:Mn:Tiモル比=2:2:1)を用いること以外は、実施例2と同様にして、沈殿作製、沈殿熟成、水熱処理、及び水洗処理を行い、粉末状生成物(リチウムマンガン系複合酸化物)を得た。
濾過して得た粉末を、水酸化リチウム1水和物5.25gを蒸留水100mlに溶解させた水酸化リチウム水溶液と混合し、攪拌後、100℃において一晩乾燥し、粉砕して粉末を作製した。
次いで、得られた粉末を大気中で1時間かけて750℃まで昇温し、その温度で1分間焼成後、炉中で室温まで冷却し、過剰のリチウム塩を除去するために、焼成物を蒸留水で水洗し、濾過し、乾燥して、目的物であるリチウムマンガン系複合酸化物を粉末状生成物として得た。
この最終生成物のX線回折パターンを図14に示す。リートベルト解析結果(プログラムはRIETAN-2000を使用)より、すべてのピークは層状岩塩型の鉄含有Li2MnO3の単位胞
Figure 0004997609
を有する結晶相(第一相:a=2.929(5) Å, c=14.253(14) Å)と立方晶岩塩型のα-LiFeO2の単位胞
Figure 0004997609
(第二相:a=4.1053(2) Å、第一相と第二相の存在割合21:79)で指数付けできた。得られた層状岩塩型結晶相の格子定数値は、既に報告されているリチウム−鉄−マンガン複合酸化物の値(格子定数a=2.882 Å, c=14.287 Å)に近い値であった(M.Tabuchi, A.Nakashima, H.Shigemura, K.Ado, H.Kobayashi, H.Sakaebe, H.Kageyama, T.Nakamura, M.Kohzaki, A.Hirano and R.Kanno, Journal of The Electrochemical Society, 149, A509-A524, 2002。)。
化学分析(下記表7)により、Li/(Mn+Fe+Ti)値より計算されるx値が0.18、Fe/(Mn+Fe+Ti) 値より計算されるy値が0.40、Ti/(Mn+Fe+Ti) 値より計算されるz値が0.19であることから、実施例4において、仕込み組成(Li1+x(Fe0.4Mn0.4Ti0.2)1-xO2, 0<x<1/3)に近い組成(Li1.18(Fe0.40Mn0.41Ti0.19)0.82O2)の複合酸化物が得られたことが確認できた。
図15は、実施例4で最終生成物として得られた鉄およびチタン含有Li2MnO3の電子顕微鏡写真(10万倍)を電子的に画像処理した図面である。図15から、実施例4により、一次粒子径が100nm以下で凝集した鉄およびチタン含有Li2MnO3が形成されていることが明らかである。また比表面積は30.2m2/gであり、後述する比較例3の値27.4m2/gより大きく、Mn源としてKMnO4を用いたため、より微粉のリチウムマンガン系複合酸化物が得られたことが明らかである。
比較例3
出発原料として過マンガン酸カリウムに代えて塩化マンガン4水和物19.79g(全量0.25mol,Fe:Mn:Tiモル比=2:2:1)を用いること以外は、実施例4と同様にして、沈殿作製、沈殿熟成、水熱処理、LiOH添加、焼成、水洗処理、濾過、及び乾燥処理を行い、目的物である粉末状生成物(リチウムマンガン系複合酸化物)を粉末状生成物として得た。
この最終生成物のX線回折パターンを図14に示す。リートベルト解析結果(プログラムはRIETAN-2000を使用)より、すべてのピークは層状岩塩型の鉄含有Li2MnO3の単位胞
Figure 0004997609
を有する結晶相(第一相:a=2.8861(16) Å, c=14.280(6) Å)と立方晶岩塩型のα-LiFeO2の単位胞
Figure 0004997609
(第二相:a=4.1086(3) Å、第一相と第二相の存在割合26:74)で指数付けできた。得られた層状岩塩型結晶相の格子定数値は、既に報告されているリチウム−鉄−マンガン複合酸化物の値(格子定数a=2.882 Å, c=14.287 Å)に近い値であった(M.Tabuchi, A.Nakashima, H.Shigemura, K.Ado, H.Kobayashi, H.Sakaebe, H.Kageyama, T.Nakamura, M.Kohzaki, A.Hirano and R.Kanno, Journal of The Electrochemical Society, 149, A509-A524, 2002。)。
化学分析(下記表7)により、Li/(Mn+Fe+Ti)値より計算されるx値が0.18、Fe/(Mn+Fe+Ti) 値より計算されるy値が0.40、Ti/(Mn+Fe+Ti) 値より計算されるz値が0.19であることから、比較例3において、仕込み組成(Li1+x(Fe0.4Mn0.4Ti0.2)1-xO2, 0<x<1/3)に近い組成(Li1.18(Fe0.40Mn0.41Ti0.19)0.82O2)の複合酸化物が得られたことが確認できた。
図15は、比較例3で最終生成物として得られた鉄およびチタン含有Li2MnO3の電子顕微鏡写真(10万倍)を電子的に画像処理した図面である。図15から、比較例3でも、一次粒子径が100nm以下で凝集した鉄およびチタン含有Li2MnO3が形成されていることが確認できるが、比表面積は27.4m2/gであり、前述の実施例4の値30.2m2/gより小さい値であった。よって、比較例3では、Mn源としてMnCl2を用いたため、より粗粉のリチウムマンガン系複合酸化物が得られたことが明らかである。
以上の実施例4及び比較例3における元素分析結果を下記表7に示す。
Figure 0004997609
充放電試験4
上記実施例4および比較例3で得た各複合酸化物を正極材料とし、Li金属を負極材料として用い、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの混合溶媒に支持塩であるLiPF6を溶解させた1M溶液を電解液としてコイン型リチウム電池を作成した。このリチウム電池の充放電特性を60℃において(電位範囲2.0-4.5V、電流密度42.5mA/g)充電開始にて検討した。
図16は、実施例4および比較例3の各正極材料を用いたリチウム電池について、初期充放電特性を示すグラフである。図16において、右上がりの曲線は充電曲線に対応し、右下がりの曲線は放電曲線に対応する。表8には充放電初期データを示す。
Figure 0004997609
図16および表8から、過マンガン酸カリウムをマンガン原料として調製した実施例4の鉄およびチタン含有Li2MnO3正極材料を用いた電池は、塩化マンガン(II)をマンガン原料として調製した比較例3の鉄およびチタン含有Li2MnO3正極材料を用いた電池と比較して、初期放電容量およびエネルギー密度が大きく、充放電効率に優れることが明らかである。
図17は、各電池の放電容量の充放電サイクル数依存性を示すグラフである。この結果から、実施例4の鉄およびチタン含有Li2MnO3正極材料を用いたリチウム電池は、すべてのサイクル数にわたって高容量であることが判る。
充放電試験5
上記実施例4および比較例3で得た各複合酸化物を正極材料とし、Li金属を負極材料として用い、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとの混合溶媒に支持塩であるLiPF6を溶解させた1M溶液を電解液としてコイン型リチウム電池を作成した。このリチウム電池の充放電特性を30℃において(電位範囲2.0-4.8V、電流密度42.5mA/g)充電開始にて検討した。
図18は、実施例4および比較例3の各正極材料を用いたリチウム電池について、初期充放電特性を示すグラフである。図18において、右上がりの曲線は充電曲線に対応し、右下がりの曲線は放電曲線に対応する。表9には充放電初期データを示す。
Figure 0004997609
図18および表9から、過マンガン酸カリウムをマンガン原料として調製した実施例4の鉄およびチタン含有Li2MnO3正極材料を用いた電池は、塩化マンガン(II)をマンガン原料として調製した比較例3の鉄およびチタン含有Li2MnO3正極材料を用いた電池と比較して、初期放電容量およびエネルギー密度が大きく、充放電効率に優れることが明らかである。
図19は、各電池の放電容量の充放電サイクル数依存性を示すグラフである。この結果から、実施例4の鉄およびチタン含有Li2MnO3正極材料を用いたリチウム電池は、すべてのサイクル数にわたって高容量であることが判る。
以上の結果から、過マンガン酸カリウムをマンガン原料として調製した鉄及びチタン含有Li2MnO3複合酸化物は、60℃という高温の充放電試験のみならず30℃での充放電試験において優れた充放電特性を示すものであり、リチウムイオン二次電池用リチウムマンガン系正極材料として、優れた性能を有することが確認できた。
実施例5
出発原料として30%硫酸チタン(IV)水溶液60.00g、及び過マンガン酸カリウム27.66g(全量0.25mol, Mn:Tiモル比=7:3)を用いること以外は、実施例2と同様にして、沈殿作製、沈殿熟成、水熱処理、及び水洗処理を行い、粉末状生成物(リチウムマンガン系複合酸化物)を得た。
濾過して得た粉末を、水酸化リチウム1水和物5.25gを蒸留水100mlに溶解させた水酸化リチウム水溶液と混合し、攪拌後、100℃において一晩乾燥し、粉砕して粉末を作製した。
次いで、得られた粉末を大気中で1時間かけて550℃まで昇温し、その温度で1分間焼成後、炉中で室温まで冷却し、過剰のリチウム塩を除去するために、焼成物を蒸留水で水洗し、濾過し、乾燥して、目的物であるリチウムマンガン系複合酸化物を粉末状生成物として得た。
この最終生成物のX線回折パターンを図20に示す。リートベルト解析結果(プログラムはRIETAN-2000を使用)より、すべてのピークは層状岩塩型の鉄含有Li2MnO3の単位胞
Figure 0004997609
を有する結晶相(第一相:a=2.8583(8) Å, c=14.239(3) Å)と立方晶岩塩型のα-LiFeO2の単位胞
Figure 0004997609
(第二相:a=4.0791(5) Å、第一相と第二相の存在割合43:57)で指数付けできた。得られた層状岩塩型結晶相の格子定数値は、既に報告されているリチウム−鉄−マンガン複合酸化物の値(格子定数a=2.882 Å, c=14.287 Å)に近い値であった(M.Tabuchi, A.Nakashima, H.Shigemura, K.Ado, H.Kobayashi, H.Sakaebe, H.Kageyama, T.Nakamura, M.Kohzaki, A.Hirano and R.Kanno, Journal of The Electrochemical Society, 149, A509-A524, 2002。)。
化学分析(下記表10)により、Li/(Mn+Ti)値より計算されるx値が0.28、Ti/(Mn+Ti) 値より計算されるz値が0.29であることから、実施例5において、仕込み組成(Li1+x(Mn0.7Ti0.3)1-xO2, 0<x<1/3)に近い組成(Li1.28(Mn0.71Ti0.29)0.72O2)が得られたことが確認できた。
図21は、実施例5で最終生成物として得られたチタン含有Li2MnO3の電子顕微鏡写真(10万倍)を電子的に画像処理した図面である。図21から、実施例5により、一次粒子径が100nm以下で凝集したチタン含有Li2MnO3が形成されていることが明らかである。また比表面積は32.5m2/gであり、後述する比較例3の値34.3m2/gと同等であり、微粉のリチウムマンガン系複合酸化物が得られたことが確認できた。尚、実施例5で得られたチタン含有Li2MnO3は立方晶岩塩型相を含むのに対して、後述する比較例4で得られたチタン含有Li2MnO3は、立方晶岩塩型相を含んでおらず、この点が充放電特性の向上の一因とも考えられる。
比較例4
出発原料として過マンガン酸カリウムに代えて塩化マンガン4水和物34.63g((全量0.25mol, Mn:Tiモル比=7:3)を用いること以外は、実施例5と同様にして、沈殿作製、沈殿熟成、水熱処理、LiOH添加、焼成、水洗処理、濾過、及び乾燥処理を行い、目的物である粉末状生成物(リチウムマンガン系複合酸化物)を粉末状生成物として得た。
この最終生成物のX線回折パターンを図20に示す。リートベルト解析結果(プログラムはRIETAN-2000を使用)より、すべてのピークは層状岩塩型の鉄含有Li2MnO3の単位胞
Figure 0004997609
を有する結晶相(第一相:a=2.8634(3) Å, c=14.2525(13) Å)のみで指数付けできた。得られた層状岩塩型結晶相の格子定数値は、既に報告されているリチウム−鉄−マンガン複合酸化物の値(格子定数a=2.882 Å, c=14.287 Å)に近い値であった(M.Tabuchi, A.Nakashima, H.Shigemura, K.Ado, H.Kobayashi, H.Sakaebe, H.Kageyama, T.Nakamura, M.Kohzaki, A.Hirano and R.Kanno, Journal of The Electrochemical Society, 149, A509-A524, 2002。)。
化学分析(下記表10)により、Li/(Mn+Ti)値より計算されるx値が0.28、Ti/(Mn+Ti) 値より計算されるz値が0.29であることから、比較例4において、仕込み組成(Li1+x(Mn0.7Ti0.3)1-xO2, 0<x<1/3)に近い組成(Li1.28(Mn0.71Ti0.29)0.72O2)が得られたことが確認できた。
図21は、比較例4で最終生成物として得られたチタン含有Li2MnO3の電子顕微鏡写真(10万倍)を電子的に画像処理した図面である。図21から、比較例4により、一次粒子径が100nm以下で凝集したチタン含有Li2MnO3が形成されていることが明らかである。また比表面積は34.3m2/gであり、前述の実施例5の値32.5m2/gと同等であり微粉のリチウムマンガン系複合酸化物が得られたことが確認できた。
以上の実施例5及び比較例4における元素分析結果を下記表1に示す。
Figure 0004997609
充放電試験6
上記実施例5および比較例4で得た各複合酸化物を正極材料とし、Li金属を負極材料として用い、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとの混合溶媒に支持塩であるLiPF6を溶解させた1M溶液を電解液としてコイン型リチウム電池を作成した。このリチウム電池の充放電特性を30℃において(電位範囲2.0-4.8V、電流密度42.5mA/g)充電開始にて検討した。
図22は、実施例5および比較例4の各正極材料を用いたリチウム電池について、初期充放電特性を示すグラフである。図22において、右上がりの曲線は充電曲線に対応し、右下がりの曲線は放電曲線に対応する。表11には充放電初期データを示す。
Figure 0004997609
図22および表11から、過マンガン酸カリウムをマンガン原料として調製した実施例5のチタン含有Li2MnO3正極材料を用いた電池は、塩化マンガン(II)をマンガン原料として調製した比較例4のチタン含有Li2MnO3正極材料を用いた電池と比較して、初期放電容量およびエネルギー密度が大きく、充放電効率に優れることが明らかである。
図23は、各電池の放電容量の充放電サイクル数依存性を示すグラフである。この結果から、実施例4の鉄およびチタン含有Li2MnO3正極材料を用いたリチウム電池は、すべてのサイクル数にわたって高容量であることが判る。
以上の通り、過マンガン酸カリウムをマンガン原料として調製したチタン含有Li2MnO3複合酸化物は、30℃での充放電試験において優れた充放電特性を示すものであり、リチウムイオン二次電池用リチウムマンガン系正極材料として、優れた性能を有することが確認できた。
以上の各実施例及び比較例の結果から、本発明の製造方法によって得られたリチウムマンガン系複合酸化物は、60℃という温度範囲において優れた充放電特性を示すだけでなく、30℃においても優れた充放電特性を示すことが見いだせ、リチウムイオン二次電池用正極材料として、優れた性能を有することが確認できた。

Claims (4)

  1. 組成式(1):Li1+x(Mn1-y-zFeyTiz)1-xO2(式中、0<x<1/3, 0≦y≦0.75, 0≦z≦0.75,
    0≦y+z<1)で表され、層状岩塩型構造の結晶相を含むリチウムマンガン系複合酸化物の製造方法であって、
    マンガン化合物、鉄化合物及びチタン化合物を、組成式(1)中の元素比と同じ割合で水又は水−アルコール混合物からなる溶媒に溶解してなる原料溶液をアルカリ性として沈殿物を形成し、得られた沈殿物を酸化剤および水溶性リチウム化合物と共にアルカリ性条件下で水熱処理し、次いで、水熱処理後の生成物をリチウム化合物の存在下で焼成する工程を含み、原料として用いるマンガン化合物が過マンガン酸塩をマンガン化合物の全量の20モル%以上含むものであることを特徴とするリチウム−マンガン系複合酸化物の製造方法。
  2. リチウムマンガン系複合酸化物が、組成式(2):Li1+x(Mn1−aFe)1−xO2(式中、0<x<1/3, 0.05≦a≦0.75)で表されるものである請求項1に記載の方法。
  3. 原料として用いるマンガン化合物における過マンガン酸塩の割合が50モル%以上である請求項1に記載の方法。
  4. 原料として用いるマンガン化合物が、過マンガン酸カリウムである請求項1に記載の方法。
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