JP3069973B2 - かしめ取付用ナット部材の製造方法 - Google Patents

かしめ取付用ナット部材の製造方法

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正和 佐藤
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、かしめ取付用ナット部
材、特に、筒体の一端にフランジ部を備え、その筒体
は、フランジ部に連設されて、そのフランジ部との間に
板材の取付孔周縁部を挟着すべく、かしめ加工を施され
るかしめ筒部と、そのかしめ筒部に連設されて内周面に
ねじを刻設されたねじ筒部とを有するナット部材の製造
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種ナット部材は、Al−Mg
系合金に焼鈍処理を施したAl合金材を用い、それに冷
間鍛造加工、切削加工等を施すことによって製造されて
いる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】現在、例えば自動車用
ボディの構成材料としては、その軽量化を目的としてA
l合金板が用いられている。このようなボディに他のA
l合金製部品をボルト止めする場合には、電食防止の観
点よりAl合金製ナット部材を用いるのが望ましい。
【0004】ところが、自動車用ボディは、他の部品を
ボルト止めされた後、塗装ラインへ搬送され、その塗膜
焼付け工程では、最高180℃の高温下に280分間と
いう長時間に亘って保持されるので、ボルトの締付トル
ク低下を極力抑制するためには、特にかしめ筒部の座屈
を防止し得るような大きな耐力を備えたナット部材が必
要となる。
【0005】しかしながら、従来のナット部材は、その
材質に起因した耐力不足から前記要求に応ずることがで
きない、という問題がある。
【0006】本発明は前記に鑑み、Al合金材および熱
処理法を特定することによって、大きな耐力を備えたナ
ット部材を得ることのできる前記製造方法を提供するこ
とを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は,筒体の一端に
フランジ部を備え,その筒体は,前記フランジ部に連設
されて,そのフランジ部との間に板材の取付孔周縁部を
挟着すべく,かしめ加工を施されるかしめ筒部と,その
かしめ筒部に連設されて内周面にねじを刻設されたねじ
筒部とを有するナット部材をAl系材料により製造する
ようにした,かしめ取付用ナット部材の製造方法におい
て,Al−Mg−Si系合金に焼鈍処理を施したAl合
金材を用いて前記筒体およびフランジ部を備えた中間体
を製造した後,その中間体に対し溶体化処理を施すよう
にし,その溶体化処理が,大気中,490〜510℃,
2〜4時間の条件下で行われることを第1の特徴とす
る。また本発明は,前記製造方法において,Al−Mg
−Si系合金に焼鈍処理を施したAl合金材を用いて前
記筒体およびフランジ部を備えた中間体を製造した後,
その中間体に対し溶体化処理を施すようにし,その溶体
化処理が,還元性雰囲気中,490〜520℃,2〜4
時間の条件下で行われることを第2の特徴とする。
【0008】
【実施例】図1において、かしめ取付用ナット部材1
は、筒体2の一端にフランジ部3を備えている。筒体2
は、フランジ部3に連設されてかしめ加工を施される薄
肉のかしめ筒部4と、そのかしめ筒部4に連設されて内
周面にねじ5を刻設された厚肉のねじ筒部6とを有す
る。
【0009】ナット部材1を自動車用ボディ7に取付け
る場合には、先ず、ナット部材1を図示しないかしめ工
具に保持させて、図1に示すように、筒体2をボディ7
を構成する板材8の取付孔9に挿通し、フランジ部2を
取付孔周縁部10の一面側に係止させる。次いで、図2
に示すように、かしめ筒部4をかしめ工具により軸線方
向に圧縮して、そのかしめ筒部4における板材8および
ねじ筒部6間が二重のフランジ部11を形成するように
変形し、その二重のフランジ部11と前記フランジ部2
とにより取付孔周縁部10を挟着するものである。
【0010】ボディ7に、部品12をボルト止めする場
合には、図2に示すように、部品12の挿通孔13に取
付ボルト14を挿通した後ナット部材1のねじ筒部6に
螺着する。
【0011】ナット部材1、ボディ7を構成する板材8
および部品12はAl合金より構成され、これによりナ
ット部材1、板材8および部品12間の電食が防止され
る。ボルト14は鋼製である。
【0012】ナット部材1の製造に当っては、Al合金
材を用いて冷間鍛造加工、切削加工等により筒体2およ
びフランジ部3を備えた中間体を製造し、次いで中間体
に溶体化処理を施し、その後中間体に時効処理を施すも
のである。
【0013】Al合金材としては、Al−Mg−Si系
合金に焼鈍処理を施したものが用いられる。Al−Mg
−Si系合金には、強度、耐食性および伸びの優れた6
000系Al合金が該当し、また焼鈍処理には、伸びの
向上を狙ったJIS調質記号「O」で示される熱処理が
該当する。
【0014】したがって、Al合金材は6000系Al
合金O材として表わされる。このAl合金材は、冷間鍛
造加工等の加工性が良好であるから、ナット部材1の量
産性を向上させる上で有効である。
【0015】溶体化処理は、大気中で行う場合と、還元
性雰囲気中で行う場合とがある。大気中で行うときの条
件は、加熱温度490〜510℃、加熱時間2〜4時
間、水冷であり、また還元性雰囲気中で行うときの条件
は、加熱温度490〜520℃、加熱時間2〜4時間、
水冷である。
【0016】この溶体化処理によって6000系Al合
金O材の耐力を向上させることができる。
【0017】Al合金材の耐力が低い場合には、ナット
部材1とボルト14との熱膨脹係数の相違に起因して、
薄肉かしめ筒部4の非かしめ領域4aにおいて座屈を生
じ、その結果、ボルト14の締付トルクが大幅に低下す
る、といった問題を生じるが、本発明によれば、このよ
うな問題を解消することができる。
【0018】また還元性雰囲気下で溶体化処理を行う
と、薄肉かしめ筒部4の酸化を防止して、その強度低下
を回避することができる。
【0019】溶体化処理において、加熱温度が490℃
未満ではAl合金材が固溶体状態にならず、一方、大気
中で行う場合に加熱温度が510℃を超えると、高温酸
化による中間体の強度低下を招き、また還元性雰囲気中
で行う場合に加熱温度が520℃を超えると、ナット部
材1の強度が高くなり過ぎて伸びが低下するためかしめ
性が悪化する。また加熱時間が2時間未満では品質が不
安定となり、一方、4時間を超えるとコスト高となる。
【0020】時効処理は、120〜180℃、1〜8時
間の条件下で行われ、この時効処理によってナット部材
1の耐衝撃性が向上する。
【0021】次に具体例について説明する。
【0022】6061Al合金O材より中間体を製造
し、その中間体に次のような溶体化処理および時効処理
を施してナット部材1を製造した。即ち、中間体を50
0℃にて2時間加熱した後水冷を行い、次いで120℃
にて1時間加熱した後炉冷を行った。
【0023】このようにして得られたナット部材1を用
いて、次のようなボルト締結性能テストを行った。
【0024】図2に示すように、ナット部材1を、厚さ
1.0mmのAl合金製板材8にかしめにより取付け、次
いで鋼製ボルト14によりAl合金製部品12をねじ止
めした。このときの締付トルクは、1.1kgf・mであ
り、これは実使用時と同じである。
【0025】このように組立てられたテスト部材に、塗
膜焼付け工程を想定して、180℃、40分間の加熱処
理を施し、次いで140℃、40分間の加熱を6回繰返
す加熱処理を施した。この場合、各加熱終了毎に、20
分間以上の空冷時間をとった。その後、トルクレンチに
より戻しトルクを測定したところ、その戻しトルクは
0.7kgf・mであった。
【0026】比較のため、Al−Mg系合金、例えば5
154Al合金O材よりなるナット部材(従来例に相
当)を用いて前記同様のテストを行ったところ、その戻
しトルクは0.4kgf・mであった。
【0027】前記テストより、本発明により得られたナ
ット部材1によれば、比較例のものに比べて、締付トル
クの低下を大幅に抑制し得ることが明らかである。
【0028】またかしめ性を調べたところ、本発明によ
り得られたナット部材は優れた伸びを有することから、
設定板厚2.0〜3.0mmを超えた板厚範囲、即ち1.
0〜3.5mmにおいても、かしめ得ることが確認され
た。
【0029】
【発明の効果】本発明によれば,一端側のフランジ部と
の間に板材の取付孔周縁部を挟着すべく,かしめ加工を
施されるかしめ筒部と,そのかしめ筒部に連設されて内
周面にねじを刻設されたねじ筒部とを有してAl合金材
で構成されるナット部材の製造方法において,Al−M
g−Si系合金に焼鈍処理を施したAl合金材製の中間
体に対する溶体化処理を,特に大気中では「490〜5
10℃,2〜4時間」の条件下で,また還元性雰囲気中
においては,「490〜520℃,2〜4時間」の条件
下でそれぞれ行うようにしたので,かしめ加工時は元よ
り,かしめ加工後のボルト締結時等においても上記かし
め筒部に割れの生じない優れた耐力を有し,苛酷な環境
下におかれてもボルトの締付トルク低下が殆ど起こらな
いナット部材が得られる。 また特に上記溶体化処理にお
いて加熱温度の下限を490℃に限定したので,加熱温
度が低過ぎてAl合金材が固溶体状態にならないような
不都合を回避できる。またその溶体化処理を大気中で行
う場合に加熱温度の上限を510℃に限定したので,加
熱温度が高過ぎて高温酸化により中間体の強度低下を招
くような不都合を回避でき,一方,かしめ筒部の酸化防
止のために溶体化処理を還元性雰囲気中で行う場合に,
加熱温度の上限を520℃に限定したので,加熱温度が
高過ぎてナット部材の強度が必要以上に高くなりかしめ
性が悪化するような不都合を回避できる。しかも上記溶
体化処理のための加熱時間を2〜4時間としたことで,
加熱コストの節減を図りながら,製品の品質安定が図ら
れる。
【0030】以上の結果,優れたかしめ性,耐食性およ
び耐応力腐食割れ性を兼ね備えた極めて高品質のナット
部材が低コストで得られるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】Al合金製板材にナット部材を設置した状態を
示す断面図である。
【図2】かしめ後のナット部材に取付ボルトにより部品
を取付けた状態を示す断面図である。
【符号の説明】
1 ナット部材 2 筒体 3 フランジ部 4 かしめ筒部 5 ねじ 6 ねじ筒部 8 板材 10 取付孔周縁部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C22F 1/00 630 C22F 1/00 630A 631 631A 691 691B 691C 691Z (72)発明者 佐藤 正和 埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式 会社本田技術研究所内 (72)発明者 梅村 博徳 愛知県豊橋市西赤沢町字郷ノ内100番地 (56)参考文献 特開 平3−66911(JP,A) 特開 昭48−19416(JP,A) 特開 平2−30729(JP,A) 実開 昭58−11112(JP,U) アルミニウムハンドブック(第4 版),社団法人軽金属協会,平成2年1 月15日発行 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22F 1/04 - 1/057 F16B 37/04

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 筒体(2)の一端にフランジ部(3)を
    備え,その筒体(2)は,前記フランジ部(3)に連設
    されて,そのフランジ部(3)との間に板材(8)の取
    付孔周縁部(10)を挟着すべく,かしめ加工を施され
    るかしめ筒部(4)と,そのかしめ筒部(4)に連設さ
    れて内周面にねじ(5)を刻設されたねじ筒部(6)と
    を有するナット部材(1)をAl系材料により製造する
    ようにした,かしめ取付用ナット部材の製造方法におい
    て, Al−Mg−Si系合金に焼鈍処理を施したAl合金材
    を用いて前記筒体(2)およびフランジ部(3)を備え
    た中間体を製造した後,その中間体に対し溶体化処理を
    施すようにし, その溶体化処理は,大気中,490〜510℃,2〜4
    時間の条件下で行われる ことを特徴とする,かしめ取付
    用ナット部材の製造方法。
  2. 【請求項2】 筒体(2)の一端にフランジ部(3)を
    備え,その筒体(2)は,前記フランジ部(3)に連設
    されて,そのフランジ部(3)との間に板材(8)の取
    付孔周縁部(10)を挟着すべく,かしめ加工を施され
    るかしめ筒部(4)と,そのかしめ筒部(4)に連設さ
    れて内周面にねじ(5)を刻設されたねじ筒部(6)と
    を有するナット部材(1)をAl系材料により製造する
    ようにした,かしめ取付用ナット部材の製造方法におい
    て, Al−Mg−Si系合金に焼鈍処理を施したAl合金材
    を用いて前記筒体(2)およびフランジ部(3)を備え
    た中間体を製造した後,その中間体に対し溶体化処理を
    施すようにし, その溶体化処理は,還元性雰囲気中,490〜520
    ℃,2〜4時間の条件下で行われる ことを特徴とする,
    かしめ取付用ナット部材の製造方法。
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