JP2016158665A - 義歯安定剤 - Google Patents

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明 宇野
Akira Uno
宇野  明
宏奈 安藤
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Abstract

【課題】粘着性及び粘着安定性に優れ、義歯を口腔内に長く安定固定化することができる義歯安定剤を提供する。
【解決手段】義歯安定剤に下記(A)及び(B)成分を配合する:
(A)低級アルキルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体、その誘導体、及びそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種の粘着成分
(B)塩化亜鉛。
【選択図】なし

Description

本発明は義歯安定剤に関する。より詳細は、本発明は水存在下での粘着性及び粘着安定性に優れ、口腔内に義歯を安定に固定化することのできる義歯安定剤に関する。
義歯安定剤は、従来から、多くの義歯装着者により、義歯を非咀嚼及び咀嚼時に口腔内の所定位置に固定するために使用されている。
市販の義歯安定剤には、カルボキシメチルセルロースナトリウムやポリエチレングリコールなどの水溶性高分子を流動パラフィンやワセリンなどの油性基剤に分散させ、口腔内の水分によって膨潤した水溶性高分子の粘着力により義歯の安定性を向上させる軟膏またはクリームタイプの義歯安定剤、及びポリ酢酸ビニルをエタノールなどの溶剤で可塑化し、義歯と顎堤粘膜の隙間を埋めて義歯の安定性を向上させるクッションタイプの義歯安定剤のほか、ジェルタイプ、粉末タイプ、シートタイプ、及びテープタイプの義歯安定剤がある。いかなる形態においても、義歯が口中に配置されると良好な粘着性が発揮され、しかもその粘着性が長く持続することが重要である。
そのため、これまで義歯安定剤に対して多くの改良が提案され、行われている。例えば、従来より低級アルキルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体、その誘導体、及びそれらの塩を使用する義歯安定剤は、水を含むと良好な粘着性を有することが知られており(例えば、特許文献1等参照)、特許文献2にはアルキルビニルエーテル−マレイン酸の部分中和物あるいは部分的に架橋されることもある当該無水共重合体とヒドロキシプロピルセルロースを含む義歯安定剤が、また特許文献3には、メチルビニルエーテル−マレイン酸共重合体のNa/Ca混合塩、カルボキシメチルセルロースナトリウム及び3価カチオンの実質的に無水の混合物を含有する改良された義歯安定剤ベース組成物が開示されている。また、特許文献4には、粘着塩として、マレイン酸または無水マレイン酸及びアルキルビニルエーテルの共重合体の部分塩(塩のカチオンは亜鉛イオンとマグネシウムイオンを含む)を含有する義歯粘着剤が、さらに特許文献5には、低級アルキルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体またはその誘導体に加えて、水不溶性及び水膨潤性重合体、及び天然ゴムや合成高分子などの粘着性物質を含有する義歯安定剤が開示されている。
米国特許公報第3,003,988号 米国特許公報第4,373,036号 米国特許公報第5,006,571号 特表平10-506928号公報 特開2007-186510号公報
このように、従来より、水存在下での粘着性及び粘着安定性に優れ、義歯を口腔内に安定に固定化することができる義歯安定剤が種々提案されているものの、改善すべきところがまだまだあるのが実情である。
このため、本発明の主な目的は、水存在下での粘着性及び粘着安定性に優れ、義歯を口腔内に安定に固定化することができるように、さらに改良された義歯安定剤を提供することである。
本発明者らは、従来の課題である義歯安定剤の粘着性及び粘着安定性の向上を図るため、粘着成分として低級アルキルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体、その誘導体、またはそれらの塩に着目し、検討した結果、これに塩化亜鉛を併用することで、上記目的が達成できること、具体的には、塩化亜鉛を併用することで低級アルキルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体、その誘導体、またはそれらの塩が有する水存在下での粘着性及び粘着安定性(粘着持続性)がより増強(向上)することを見出し、実際に義歯安定剤として口腔内で義歯の装着固定に使用した場合の使用感が向上することを確認した。
本発明はこれらの知見をもとにさらに研究を重ねた結果、完成したものであり、下記の実施態様を包含する。
(I)義歯安定剤
(I−1)下記(A)及び(B)成分を含有する義歯安定剤:
(A)低級アルキルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体、その誘導体、及びそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種の粘着成分
(B)塩化亜鉛。
(I−2)(A)成分100重量部に対する(B)成分の割合が1〜2.5重量部である、(I−1)に記載する義歯安定剤。
(I−3)(A)成分を10〜60重量%、(B)成分を0.3〜1重量%の割合で含有する、(I−1)または(I−2)に記載する義歯安定剤。
(I−4)さらに、粘着補助成分として水溶性高分子を含有する(I−1)〜(I−3)のいずれかに記載する義歯安定剤。
(II)義歯安定剤の粘着力の増強方法
(II−1)(A)低級アルキルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体、その誘導体、及びそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種の粘着成分を含む義歯安定剤組成物に、(B)塩化亜鉛を配合することを特徴とする、義歯安定剤の粘着力の増強方法。
(II−2)(A)成分100重量部に対する(B)成分の割合が1〜2.5重量部である、(II−1)に記載する増強方法。
(II−3)対象とする義歯安定剤組成物が、(B)成分を配合した後の義歯安定剤100重量%中の(A)成分の割合が10〜60重量%となるような割合で、(A)成分を含有するものである、(II−1)または(II−2)に記載する増強方法。
本発明の義歯安定剤は、(A)低級アルキルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体、その誘導体、及びそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種の粘着成分と(B)塩化亜鉛とを組み合わせて含むことにより、(A)成分の水存在下での粘着性及び粘着安定性(粘着持続性)がより増強(向上)されており、その結果、これを義歯安定剤として口腔内で義歯の装着固定に使用した場合に、良好な義歯の装着使用感を得ることができる。
また本発明の義歯安定剤の粘着性増強方法によれば、(A)低級アルキルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体、その誘導体、及びそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種の粘着成分が有する水存在下での粘着性、好ましくは加えて粘着安定性(粘着持続性)を、(B)塩化亜鉛を併用することで、より増強(向上)させることができる。このため、この方法を義歯安定剤の調製に利用することで、口腔内での義歯を安定に装着固定し、良好な義歯の装着使用感を得ることができる義歯安定剤を得ることができる。
(I)義歯安定剤
義歯安定剤は、義歯と顎堤(歯茎)や上顎との間を密着させて、義歯を顎堤(歯茎)や上顎上に装着固定化するために使用される製剤である。義歯粘着剤とも称される。対象とする義歯は通常、総義歯及び部分義歯である。
本発明が対象とする義歯安定剤は、その形態を特に制限するものでなく、クリームタイプ、ジェルタイプ等のペースト状、パウダータイプなどの粉末状、テープタイプやシートタイプなどのシート(テープ)状の種々の形態を有する義歯安定剤が含まれる。また対象とする義歯の床の材質も制限なく、レジン床及び金属床のいずれに対しても適用することができる。
本発明の義歯安定剤は、下記(A)及び(B)成分を含有することを特徴とする。
(A)低級アルキルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体、その誘導体、及びそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種の粘着成分、
(B)塩化亜鉛。
ここで(B)成分である塩化亜鉛は、(A)の粘着成分と併用することで、その粘着性(及び粘着安定性)を増強することができる成分である。このため、(B)成分は、(A)粘着成分の粘着性(及び粘着安定性)増強成分として位置づけることができる。
以下、これらの成分、並びに義歯安定剤を構成しえる他の成分について説明する。
(1)(A)粘着成分
本発明において(A)粘着成分として使用する低級アルキルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体、その誘導体またはそれらの塩(以下、これらを「AVE/MA共重合体類」と称する場合がある)は、水を吸収してゆっくりと溶解し、粘着性を発揮するという特性を有する。
ここで低級アルキルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体は、低級アルキルビニルエーテルモノマーと無水マレイン酸とを重合させて産生される共重合体である。当該共重合体は容易に加水分解されて酸ポリマーになりうる。
低級アルキルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体、及びその材料である低級アルキルビニルエーテルモノマーにおいて、「低級アルキル基」としては、通常、炭素数1〜8個のアルキル基を挙げることができる。好ましくは炭素数1〜6個のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜4個のアルキル基である。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、sec−ブチル基などを例示することができる。このため、低級アルキルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体として、具体的には、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体、エチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体、ジビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体、プロピルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体、及びイソブチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体を挙げることができる。
低級アルキルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体の誘導体は、低級アルキルビニルエーテルモノマーと無水マレイン酸誘導体とを重合させて製造するか、または低級アルキルビニルエーテルと無水マレイン酸を共重合させた後、得られたアルキルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体を誘導化することで製造することができる。
ここで低級アルキルビニルエーテルにおける低級アルキル基としては、前述する通り、炭素数1〜8個、好ましくは炭素数1〜6個、より好ましくは炭素数1〜4個のアルキル基を同様に挙げることができる。
また無水マレイン酸誘導体としては、マレイン酸、及びマレイン酸半エステルを挙げることができる。ここで、マレイン酸半エステルとしては、通常炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜8、特に好ましくは炭素数1〜6のアルコールのエステル類を好適に例示することができる。
低級アルキルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体の誘導体は、アルキルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体を公知の方法で加水分解、エステル化、あるいは金属化合物と反応させることにより得ることができる。
例えば、低級アルキルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体の加水分解は、90〜95℃に加熱した水100重量部に、低級アルキルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体を1〜70重量部、好ましくは10〜50重量部を添加することにより低級アルキルビニルエーテル/マレイン酸共重合体にすることができる。また、アルキルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体をエステル化するには、アルコールを反応溶媒として用い(半エステルの10〜20%溶液となる計算量のアルコール)、アルコールの還流温度で数時間から10数時間反応させることによってアルキルビニルエーテル/マレイン酸半エステルにすることができる。また、特公昭43−25982号公報に記載の方法、すなわち粉末状の無水マレイン酸/ビニル化合物共重合体と気体状態のアルコールを反応させて、該共重合体の半エステルを粉末状で得る方法を採用することもできる。アルキルビニルエーテルとマレイン酸塩の共重合体の製造方法も、カルボン酸の塩を製造する公知の方法を用いることができる。
制限されないものの、本発明において低級アルキルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体、及びその誘導体としては、20万〜240万の重量平均分子量を有するものであることが好ましい。より好ましくは100万〜200万の重量平均分子量を有するものである。
低級アルキルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体またはその誘導体の塩としては、例えば、1価、2価又は3価カチオンを挙げることができる。具体的には、カリウム塩やナトリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩やマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、亜鉛塩、及びストロンチウム塩などを挙げることができる。好ましくはナトリウム塩、カルシウム塩である。これらの塩は、一種単独で用いてもよいし、また2種を組み合わせて使用することもできる。組み合わせの態様は特に制限されないものの、例えばナトリウム塩とカルシウム塩をともに含む混合塩、亜鉛塩とマグネシウム塩をともに含む混合塩、及び亜鉛塩とストロンチウム塩をともに含む混合塩などを挙げることができる。好ましくはナトリウム塩とカルシウム塩との組み合わせである。
このような低級アルキルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体、その誘導体及びそれらの塩は、アイエスピージャパン(International Specialty Products of Wayne, New Jersey, USAの日本法人)からGantrez(登録商標、以下同じ)という商品名で商業的に入手することができる。具体的には、低級アルキルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体はGantrez ANシリーズとして、また低級アルキルビニルエーテル/マレイン酸共重合体はGantrez Sシリーズとして入手することができる。また低級アルキルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体またはその誘導体の塩としてナトリウム塩とカルシウム塩の両方を含むものとしてはGantrez MS-955を用いることができる。なお、Gantrez MSの重量平均分子量は約100万であり、そのブルックフィールド粘度(mPa. S(11.1% solids aq.))は700〜3000である。
本発明において、(A)粘着成分として、低級アルキルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体、その誘導体またはそれらの塩は、1種単独で使用してもよいし、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
本発明の義歯安定剤100重量%中に含まれる上記(A)粘着成分の割合として、総量で、通常10〜60重量%、好ましくは20〜50重量%、より好ましくは25〜35重量%を挙げることができる。この割合は、最終製品の形態にかかわらず、最終製品の全体重量(シートタイプなどのように支持体を有する形態の場合は支持体を除く重量)を100重量%とした場合に当該製品に含まれる(A)粘着成分の割合(重量%)を意味する。以下、(B)塩化亜鉛、水溶性高分子、及び油性基剤などの配合割合(重量%)についても同様である。
(2)(B)塩化亜鉛
前述するように、(B)成分である塩化亜鉛は、(A)の粘着成分(AVE/MA共重合体類)と併用することで、その粘着性(及び粘着安定性)を増強することができる成分である。
本発明の義歯安定剤中に含まれる(A)粘着成分100重量部に対する(B)塩化亜鉛の割合としては、上記(B)塩化亜鉛の特性を発揮して本発明の効果を奏する範囲であればよく、例えば0.1〜10重量部の範囲を挙げることができる。好ましくは0.5〜5重量部、より好ましくは1〜2.5重量部である。また本発明の義歯安定剤100重量%中に含まれる上記(B)塩化亜鉛の割合として、その総量で、通常0.03〜3重量%、好ましくは0.15〜1.5重量%、より好ましくは0.3〜1重量%を挙げることができる。
(3)その他の成分
本発明の義歯安定剤は、本発明の効果を損なわないことを限度として、上記(A)及び(B)成分以外に水溶性高分子を配合することもできる。
水溶性高分子としては、(A)成分として使用するAVE/MA共重合体類とともに、口腔内の水分を吸収して適度な粘着力を発揮し、口腔内における義歯の固定安定化に貢献するものを好適に挙げることができる。この意味で、水溶性高分子は、粘着補助成分として位置づけることができる
かかる水溶性高分子としては、例えばアルギン酸、アルギン酸塩類(例えば、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸エステルなど)、アラビアガム、トラガントガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、グアガム、寒天、ゼラチン、カラヤガム、カラギーナンなどの天然高分子化合物;カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(以上、セルロース系高分子)、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、メチルビニルエーテル、カルボキシビニルポリマー、アクリルアミドとアクリル酸との共重合体、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンオキサイドなどの合成高分子化合物を挙げることができる。これらの水溶性高分子は1種単独で用いてもよいし、2種以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
好ましくは、水を含んだときに膨潤し、粘着性または/及び弾性を示すものである。かかるものとしては、アルギン酸、アルギン酸塩(例えば、アルギン酸ナトリウム)、カラヤガム、ポリエチレンオキサイド、及びカルボキシメチルセルロースナトリウムを挙げることができる。より好ましくはアルギン酸、及びカルボキシメチルセルロースナトリウムであり、特に好ましくはカルボキシメチルセルロースナトリウムである。
水溶性高分子を用いる場合、本発明の義歯安定剤100重量%中に配合する当該水溶性高分子の割合として、その総量で、通常10〜60重量%、好ましくは20〜40重量%、より好ましくは20〜30重量%を挙げることができる。また、義歯安定剤に含まれる(A)粘着成分(AVE/MA共重合体類)100重量部に対する割合として、制限はされないものの、総量で通常10〜200重量部、好ましくは50〜150重量部、より好ましくは80〜120重量部を挙げることができる。
また本発明の義歯安定剤は、その形態や性状に応じて、本発明の効果を損なわないことを限度として、さらに油性基剤、水性基剤、粉体基剤、ガム基剤、賦形剤、乳化剤、湿潤剤、pH調整剤、粘度調整剤、可塑剤、防腐剤、殺菌剤、色素、香料、矯味剤、清涼化剤、甘味剤などを配合することができる。かかる担体及び添加剤は、従来から義歯安定剤に広く使用されているものを同様に用いることができる。
例えば、油性基剤は、義歯安定剤をクリームタイプなどペースト状の形態に調製する場合に、その基剤として使用される。
油性基剤としては、非水系の義歯安定剤(例えば、クリームタイプ)に通常用いられている鉱油成分を挙げることができる。例えば、流動パラフィン、ワセリン、ゲル化炭化水素などを挙げることができる。
流動パラフィンとして、具体的には、軽質流動パラフィン、及び重質流動パラフィンを挙げることができる。好ましくは平均炭素数が15〜50、より好ましくは25〜50の軽質流動パラフィンである。ワセリンとしては、通常、外用基剤として使用されるワセリンはいずれも使用することができ、例えば、黄色ワセリン、白色ワセリン、及びこれらの混合物を挙げることができる。また、白色ワセリンにさらしろう、ステアリルアルコール、またはコレステロールを配合した親水ワセリンを使用することができる。好ましくは白色ワセリンである。ゲル化炭化水素としては、例えば流動パラフィン100重量部に対してポリエチレンを5〜10重量部、好ましくは5.5〜7.5重量部の割合で配合し、ポリエチレンが溶融する温度(110〜130℃程度)で加熱混合して調製されるゲル状物を挙げることができる。これらの鉱油成分は1種単独で油性基剤として用いてもよいし、また2種以上を任意に組み合わせて油性基剤として用いてもよい。
クリームタイプの義歯安定剤に用いられる油性基剤の割合(総量)としては、義歯安定剤100重量%中、通常10〜70重量%、好ましくは20〜60重量%、より好ましくは30〜50重量%の範囲を挙げることができる。
水性基剤は、水系の義歯安定剤(例えば、ジェルタイプ)に調製する場合に、その基剤として通常使用される。水性基剤としては、例えば、水、グリセリン、プロピレングリコールなどを挙げることができる。
一方、パウダータイプの義歯安定剤の調製には、基剤としてもっぱら水溶性高分子が用いられるものの、顆粒化する際に乳糖やスターチなどの賦形剤、及びエタノールなどの溶媒が使用される場合もある。
本発明の義歯安定剤は、その形態(クリームタイプ、ジェルタイプ、パウダータイプ、シート(テープ)タイプなど)に応じて、当業界の慣用技術に従って調製することができる。
また本発明の義歯安定剤の使用方法も、その形態(クリームタイプ、ジェルタイプ、パウダータイプ、シート(テープ)タイプなど)に応じて、適宜選択することができる。例えば、クリ−ムタイプなどペースト状の義歯安定剤は、水分を除いた義歯床(入れ歯の土台)の歯茎(または上顎)と接触する面全体に薄く伸ばしながら塗布付着させることで用いられる。またパウダータイプ等の粉末状の義歯安定剤は、水分が少し付着した状態の義歯床(入れ歯の土台)の歯茎(または上顎)と接触する面全体に均一に薄く振りかけ、余分な粉末を振り落とすことで用いられる。さらにシート(テープ)タイプの義歯安定剤は、水分を除いた義歯床(入れ歯の土台)の歯茎(または上顎)と接触する面に貼付付着することで用いられる。斯くして義歯安定剤を付着させた義歯は、口腔内に入れて歯茎(または上顎)に装着すると、義歯安定剤が唾液の水分を吸収し膨潤することで粘着性を発揮して、歯茎(または上顎)に安定に固定される。
(II)義歯安定剤の粘着力の増強方法
本発明は、義歯安定剤の粘着力の増強方法に関する。より詳細には、前述する(A)の粘着成分(AVE/MA共重合体類)を含む義歯安定剤(但し、塩化亜鉛を含まない)の粘着力の増強方法である。
当該方法は、(A)粘着成分に(B)塩化亜鉛を併用することを特徴とする。
(A)の粘着成分(AVE/MA共重合体類)、及びこれに組み合わせて配合する(B)塩化亜鉛については、すでに(I)で説明した通りであり、ここに上記(I)の説明が援用される。
粘着力を増強する対象の義歯安定剤組成物は、(B)塩化亜鉛を配合した後の義歯安定剤(最終義歯安定剤)中の(A)粘着成分(AVE/MA共重合体類)の割合が、通常10〜60重量%、好ましくは20〜50重量%の割合で含有するものであることが好ましい。より好ましくは最終義歯安定剤中の(A)粘着成分(AVE/MA共重合体類)の割合が25〜35重量%となるような割合で、(A)粘着成分(AVE/MA共重合体類)を含有するものである。
当該義歯安定剤組成物に対する(B)塩化亜鉛の配合割合としては、本発明の効果を奏する範囲であればよく、特に制限されるものではないが、上記義歯安定剤組成物中に含まれる(A)粘着成分の総量100重量部に対して、通常0.1〜10重量部の割合を挙げることができる。好ましくは0.5〜5重量部、より好ましくは1〜2.5重量部である。また、(A)粘着成分及び(B)塩化亜鉛を含有する最終の義歯安定剤(最終義歯安定剤)100重量%中の(B)塩化亜鉛の割合が、0.03〜3重量%となるように(B)塩化亜鉛を配合することが好ましい。より好ましくは0.15〜1.5重量%であり、さらに好ましくは0.3〜1重量%である。
斯くして調製される義歯安定剤は、(B)塩化亜鉛を含有しない義歯安定剤、つまり(A)粘着成分(AVE/MA共重合体類)に(B)塩化亜鉛を併用しないで調製される義歯安定剤(対照義歯安定剤)と比較して、水存在下での粘着性がより増強している。このため、本発明の方法を利用して調製される義歯安定剤は、口腔内での粘着性に優れているという効果を有している。また後述する試験例3に示すように、当該方法によれば、(B)塩化亜鉛を併用しないで調製される対照義歯安定剤と比較して、水存在下(口腔内)での粘着安定性がより増強している。このため、本発明の方法を利用して調製される義歯安定剤は、口腔内での粘着安定性に優れており、粘着力の持続性も良好であるという効果を有している。
以下、試験例及び実施例に基づいて、本発明の構成及び効果を説明する。但し、本発明はかかる試験例及び実施例に制限されるものではない。なお、特に言及しないかぎり、以下に記載する%は「重量%」を意味するものとする。
試験例1 増粘効果の評価
表1に記載する割合で調製した(A)粘着成分及び(B)塩化亜鉛の混合物を水中に投入し、撹拌溶解した溶液(実施例1及び2)(25℃)の粘度を、B型粘度計(ブルックフィールド社製)(ローターNo.2)を用いて、回転数20rpm、測定時間1分間の条件で測定した。また比較試験として、表3に記載する割合で(A)粘着成分を水中に投入し、撹拌溶解した溶液(比較例1及び2)(25℃)の粘度を、上記と同じ条件で測定した。結果を表1に示す。
なお、ここでは粘着成分としてメトキシエチレン/無水マレイン酸共重合体ナトリウム/カルシウム塩(Gantrez MS-955、アイエスピー・ジャパン製)を用いた。なお、表1にはこれを「AME/MA共重合体類」と表記する。
Figure 2016158665
表1に示すように、実施例1と比較例1、及び実施例2と比較例2の各粘度の相対比から、(a)粘着成分(AME/MA共重合体類、以下同じ)に(b)塩化亜鉛を併用することで、粘着成分による粘度が増加することがわかる。
試験例2 粘度及び粘着力の評価
(1)被験試料の調製
表2に記載する処方に従って、クリームタイプの義歯安定用組成物(実施例3〜4、比較例3)を調製した。具体的には、鉱油成分(軽質流動パラフィン、ワセリン)を加熱混合した後、これに粘着成分、塩化亜鉛、水溶性高分子(カルボキシメチルセルロースナトリウム)を添加し、均一に混合することによって調製した。なお、ここでは粘着成分としてメトキシエチレン/無水マレイン酸共重合体ナトリウム/カルシウム塩(Gantrez MS-955、アイエスピー・ジャパン製)を用いた。なお、表2にはこれを「AME/MA共重合体類」と表記する。
(2)粘度の測定
上記(1)で調製した義歯安定剤(実施例3〜4、比較例3)を入れた容器に20倍量(重量比)の水を添加し、混練溶解して粘度測定用の溶液を調製した。その溶液(25℃)の粘度を、B型粘度計(ブルックフィールド社製)(ローターNo.3)を用いて、回転数50rpm、測定時間1分間の条件で測定した。結果を表2に示す。
(3)粘着力の測定
上記(1)で調製した義歯安定剤(実施例3〜4、比較例3)を入れた容器に4倍量(重量比)の水を添加し、混練溶解して粘着力測定用の試料を調製した。この試料の粘着力を、レオメーター(CR−500DX、サン科学社製)を用いて下記に記載する方法で測定した。
(a)試料15gを、10mL容量のガラス製平底ビーカーに入れ、表面を平らにした。
(b)直径15mmのレジン製のアダプターを50mm/分の速度で試料表面から10mmの深さまで挿入した。
(c)挿入後、直ちにアダプターを50mm/分の速度で後退させ、その際にアダプターに係る最大荷重(g重)を測定し、下式に従って粘着力(kPa)を算出した。
Figure 2016158665
結果を表2に示す。
Figure 2016158665
この結果から、粘着成分(AME/MA共重合体類)に塩化亜鉛を併用することで、粘度とともに粘着性も増加することがわかる。またそれらの増加の程度は、塩化亜鉛の配合割合が多くなるに従って大きくなることがわかる。
試験例3 装着使用感の評価
試験例2で調製した義歯安定剤(実施例3〜4、比較例3)について、パネラー6名を対象として、その装着使用感(装着安定性及びその持続性)を評価した。具体的には、総義歯使用者(使用歴3年以上)6名に、各義歯安定剤を使用して総義歯を装着してもらい、義歯が安定して歯茎に接着していると感じた時間を各々測定してもらい、下記の基準で得点をつけてもらった。
なお、各義歯安定剤は、総義歯(上顎用、下顎用)の土台の歯茎に接触する面に大豆4粒に相当する分量(総量2g)を付けて、これを当該面の全面にわたって薄く塗り伸ばして、口腔内に装着してもらった。また各パネラーには、試験日を変えて合計4種類の義歯安定剤について、それぞれ装着使用感を同一基準にて評価してもらった。
[評価基準]
義歯が安定して接着していると感じた時間
10時間超 :10点
5〜10時間以下 : 3点
0〜5時間以下 : 1点。
各パネラーが評価した得点を平均した結果を表3に示す。
Figure 2016158665
表3に示すように、粘着成分(AME/MA共重合体類)に塩化亜鉛を併用することで、粘着安定性(粘着持続性)も増加することがわかる。またこの結果は、試験例2で評価した粘着力の増加効果と相関しており、粘着成分(AME/MA共重合体類)に塩化亜鉛を併用することで、粘着力とともに粘着安定性(粘着持続性)も向上(増加)すること、またその増加の程度は、塩化亜鉛の配合割合が多くなるに従って大きくなることがわかる。
処方例
以下に示す処方に従って、クリームタイプ、パウダータイプ、及びシートタイプの義歯安定剤を製造することができる。なお、下記に示す「AME/MA共重合体類」として、メトキシエチレン/無水マレイン酸共重合体ナトリウム/カルシウム塩(Gantrez MS-955)、メトキシエチレン/無水マレイン酸共重合体(Gantrez AN-169、Gantrez AN-179)のいずれも使用することができる。
処方例1 クリームタイプの義歯安定剤
下記の原料を加熱しながら混合してクリーム状の義歯安定剤を調製する。
AME/MA共重合体類 30(重量%)
塩化亜鉛 0.5
カルボキシメチルセルロースNa 25
流動パラフィン 15
ワセリン 29.5
合 計 100.0重量%。
処方例2 ジェルタイプの義歯安定剤
下記の原料を加熱しながら混合溶解してジェル状の義歯安定剤を調製する。
AME/MA共重合体類 20(重量%)
塩化亜鉛 0.3
カルボキシメチルセルロースNa 10
プロピルパラベン 0.05
水 69.65
合 計 100.00重量%。
処方例3 パウダーまたは顆粒状タイプの義歯安定剤
下記の原料を混合してパウダー状にするか、さらに慣用方法で造粒することで顆粒状の義歯安定剤を調製する。
AME/MA共重合体類 60(重量%)
塩化亜鉛 1
カルボキシメチルセルロースNa 39
合 計 100 重量%。
処方例4 シートタイプの義歯安定剤
下記の原料を混合してパウダー状にするか、さらに慣用方法で造粒することで顆粒状とし、これを不織布などの支持体の上に均一に散布し、さらにその上に同様の支持体を被せて、熱圧着またはニードルパンチにより一体化させる。次いで義歯床の形状の合わせて、所望の形状にカットして、シートタイプの義歯安定剤を調製する。
AME/MA共重合体類 60(重量%)
塩化亜鉛 1
カルボキシメチルセルロースNa 39
合 計 100 重量%。

Claims (3)

  1. 下記(A)及び(B)成分を含有する義歯安定剤:
    (A)低級アルキルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体、その誘導体、及びそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種の粘着成分
    (B)塩化亜鉛。
  2. (A)成分100重量部に対する(B)成分の割合が1〜2.5重量部である、請求項1に記載する義歯安定剤。
  3. (A)低級アルキルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体、その誘導体、及びそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種の粘着成分を含む義歯安定剤組成物に、(B)塩化亜鉛を配合することを特徴とする、義歯安定剤の粘着力の増強方法。
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