JP6737638B2 - 鉄道車両の外観検査装置 - Google Patents

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Description

本発明は、鉄道車両の外観を観察して異常がないか検査する鉄道車両の外観検査装置に関する。
以前より、鉄道会社では鉄道車両の外観に異常がないか定期的に検査が行われている。外観検査では、検査員が車両の下に潜ったり、屋根上に登ったりして、主に目視により異常がないか確認を行う。異常が認められた場合には、速やかに関係部署に連絡がなされ、修復の手配がなされる。このような検査作業は、多くの手間を要し、検査員の危険を伴うものであった。
そこで、従来、撮影装置を用いて鉄道車両を撮影し、撮影画像から鉄道車両の外観の検査を行うことが提案されている(例えば特許文献1、2を参照)。特許文献1の技術は、鉄道車両の特定部位を所定のアングルから専用のカメラで撮影し、その撮影画像を基準画像と比較して異常の有無を判別するものである。特許文献2の技術は、線路上を走る列車を撮影して列車全体の画像を合成し、その中に所定の検査領域を設定して正常な列車画像と比較することで、異常の有無を判別するものである。列車全体の画像は、列車の側方から高速連写して得た複数の画像を切り貼りして作成される。
他方、工業製品等の外観検査の分野において、ラインスキャンカメラを用いた検査システムが一般に知られている。ラインスキャンカメラは、移動する被写体の映像を1ラインの光学像ごと取り込み、取り込まれた1ラインの撮影画像を連続的につなぎ合わせて二次元画像を得る。ラインスキャンカメラによれば、一方向に長い被写体の撮影を連続的に行える。加えて、光学像を電気信号に変える撮像処理を一次元の光学像ごとに行うため、二次元の撮像を行うエリアカメラと比べて非常に高い分解能が得られるという特徴がある。
特開平5−143714号公報 特開2013−53875号公報
撮影装置を用いて鉄道車両の外観検査を行う上記従来の提案には、幾つかの課題があった。例えば特許文献1の検査装置では、鉄道車両の画像を特定の部位ごとに専用のカメラで所定のアングルから撮影するため、必要な撮影機材が多く、コストが高騰するという課題がある。加えて、検査部位を個別に撮影するため撮影処理が非常に煩雑になるという課題がある。鉄道車両の検査箇所が増えると、それに伴ってコストと煩雑さが倍増する。
また、特許文献2の検査装置では、撮影処理は比較的に容易になるが、分解能が高く歪みの少ない列車の画像を得ることが難しく、目視による検査と比較して、検査精度が低くなるという課題がある。特許文献2に示されるように、列車の走行中に高速連写を行うと、列車速度と撮影タイミングのばらつき等により、1つの撮影画像の中心に写る箇所と、中心から外れた横方に写る箇所とが、撮影のたびに異なることになる。一般的な撮影画像では、画像中心部分はその箇所を真っ直ぐ見た形状を表示するが、横方の部分はその箇所を左右斜めから見た形状を表示することになり、形状の相違が生じる。このため、このような画像を合成して得た列車の撮影画像には、部分的に形状の歪みが表れ、さらに、形状の歪みの表れる箇所が撮影のたびごとに異なり一定しない。遠目から列車を撮影することでこのような形状の歪みを小さくできるが、その場合、撮影画像の分解能が非常に低くなる。
一方、ラインスキャンカメラを用いることで、左右斜めから見た形状が画像に含まれることを回避することができる。しかしながら、ラインスキャンカメラは、例えばライン生産工程などで一様に照らされ且つ正確な速度で搬送されてくる工業製品など、撮影環境が整った状況での被写体を撮影対象とするのが一般的であった。そして、このように環境の整った状況での撮影により、歪みのない高分解能の撮影画像が得られていた。
撮影画像により外観検査を行う場合、例えば鉄道車両が車両基地へ入区する際などに撮影を行えると、検査のためだけに車両を動かす手間と時間とが省けて都合がよい。しかしながら、このような条件では鉄道車両を正確に一定の速度で移動することは難しい。また、レールが敷設される地盤には強固な箇所と比較的に軟弱な箇所とが存在する。このため、レール上を鉄道車両が走行する際、鉄道車両は自重によって僅かに上下に変位する。さらに、台車と車体との間には空気バネなどのサスペンションが設けられているので、サスペンションの作用に起因する車体の上下動も生じる。従って、何ら工夫がないと、このように走行する鉄道車両をラインスキャンカメラにより撮影しても、高い分解能で且つ歪みの少ない撮影画像を得ることは困難であった。
本発明は、撮影画像を用いて高精度な外観検査を行うことのできる鉄道車両の検査装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、
本発明に係る鉄道車両の外観検査装置は、
正常な鉄道車両の画像を蓄積した正常画像記憶手段と、
線路上を移動する鉄道車両を線路と交差する方向に走査して撮影画像を得るラインスキャン型の撮影手段と、
レールの沈み込みによる鉄道車両の上下動に起因する前記撮影画像の上下方向の歪みを矯正する補正、又は鉄道車両のうちサスペンションの作用により相対的に台車と車体部分とが上下動することに起因する前記撮影画像の上下方向の歪みを矯正する補正を行う補正手段と、
前記補正手段により補正された前記撮影画像の中から検査対象領域の画像を抽出する対象領域抽出手段と、
前記検査対象領域の画像と前記正常画像記憶手段に蓄積された画像とを比較して異常を検出する異常検出手段と、
を備えていることを特徴としている。
このような構成によれば、ラインスキャン型の撮影手段と補正手段とによって、不規則な歪みのない、各部が一定方向から見たときの形状で表わされた、高い分解能の鉄道車両の撮影画像を得ることができる。よって、このような撮影画像から検査対象領域の画像を抽出して正常画像と比較することで、従来の目視による検査と同程度あるいはそれ以上の精度で外観検査を行うことが期待できる。また、鉄道車両の撮影画像は少ない手間で取得することができる。
ここで、前記補正手段は、さらに、撮影時の鉄道車両の移動速度に起因する前記撮影画像の各部の縦横比のばらつきの補正と撮影時の明るさに起因する前記撮影画像の輝度の補正とを行うように構成するとよい。
このような構成によれば、例えば鉄道車両が車両基地へ入区する際など通常の走行時に鉄道車両を撮影しても、補正手段により、鉄道車両の速度のばらつき、上下動、並びに、環境の明るさに起因したばらつきを排除した撮影画像が得られる。よって、これらによってより精度の高い外観検査を行うことができる。
また、本発明に係る鉄道車両の外観検査装置は、
線路を挟んで前記撮影手段と対向する配置で前記撮影画像の背景となる面を有する背景構造体をさらに備え、
前記対象領域抽出手段は、前記検査対象領域として、少なくとも、鉄道車両の車体下部に取り付けられた部品が配置される領域と、鉄道車両の台車が配置される領域とを、個別に抽出するとよい。
このような構成によれば、車体下部又は台車の周辺など鉄道車両の向う側が写り込む領域において、上記背景構造体により一定の背景が写った撮影画像が得られる。よって、これらの部分を検査対象領域とした場合に、背景の影響を排除して精度の高い外観検査を行える。
また、本発明に係る鉄道車両の外観検査装置は、
外観の異常を示す撮影画像が蓄積される異常画像記憶手段をさらに備え、
前記異常検出手段が正常と判断した撮影画像が前記正常画像記憶手段に蓄積され、前記異常検出手段が異常と判断した撮影画像が前記異常画像記憶手段に蓄積されるように構成されるとよい。
このような構成によれば、検査回数を重ねることで正常画像記憶手段に蓄積される正常画像が増して、比較基準となる画像データを増やすことができる。比較基準が増えることで、適用可能な検査手法のバリエーションを増やすことができる。また、上記の構成によれば、異常と判断された撮影画像が異常画像記憶手段に蓄積される。よって、これらの画像を解析することで、劣化の経年的な進行度を分析したり、車種ごとの異常の傾向を分析したり、様々な異常の分析を行うことができる。そして、これらの分析結果に合わせて効率的なメンテナンス体系を実現できる。
また、本発明に係る鉄道車両の外観検査装置は、
検査対象の鉄道車両の車種情報を取得する情報取得手段をさらに備え、
前記正常画像記憶手段には、同一車種の複数の画像が蓄積され、
前記異常検出手段は、検査対象の鉄道車両の撮影画像と、前記検査対象の鉄道車両と同一の車種の複数の画像とを用いて、前記検査対象領域の画像の比較を行い、前記複数の画像の中で差が小さい方の画像との比較結果に基づいて異常か否かの判断を行うように構成するとよい。
鉄道車両は、同一車種であっても、例えばケーブルなど僅かに部品の配置が異なったり、経年による正常な色褪せが生じたりして、完全に同一にはならない。そこで、上記構成のように、検査対象領域の比較を行う場合でも、同一車種の複数の正常な画像を用いて比較を行い、差が小さい方の画像との比較結果に基づいて異常か否かの判断を行うことで、正常な範囲での差分を除外して検査対象の異常の有無を判断できる。なお、異常の有無を判断する部分が微細でその画像の差異が比較的に小さくなる場合には、比較対象領域を小さく絞ることで、正常な範囲での差分があっても異常の有無を見逃すことなく高精度に判断できる。
本発明によれば、撮影画像を用いて高精度な外観検査を行うことのできる鉄道車両の検査装置を提供できるという効果が得られる。
本発明の実施形態に係る鉄道車両の外観検査装置の全体構成を示すブロック図である。 実施形態の外観検査装置の幾つかの構成要素の配置例を示す図である。 検査処理装置により実行される検査処理の手順を示すフローチャートである。 図3のステップS2により実行される歪み補正処理の詳細な手順を示すフローチャートである。 検査対象領域の一例を示す説明図である。 検査対象領域の比較処理と判定閾値とを示す説明図である。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る鉄道車両の外観検査装置の全体構成を示すブロック図である。図2は、実施形態の外観検査装置の幾つかの構成要素の配置例を示す図である。
本発明の実施形態の外観検査装置1は、図1および図2に示すように、車両近接検知装置11と、撮影装置12と、背景板14と、画像処理装置15と、検査処理装置20とを備えている。これらのうち、車両近接検知装置11、撮影装置12、背景板14、画像処理装置15は、図2に示すように、例えば車両基地の入区用又は出区用の線路の傍らに配置されている。検査処理装置20は、屋内に配置され、車両近接検知装置11および画像処理装置15と有線または無線により接続されている。外観検査装置1は、鉄道車両の左側および右側を撮影できるように、線路を挟んだ一方と他方とにそれぞれ配置された2組の撮影装置12を備えている。
車両近接検知装置11は、例えば光学的なセンサ或いは軌道回路を利用した電気的なセンサにより、鉄道車両が撮影区間に進入することを検知し、検知信号を撮影装置12へ出力する。さらに、車両近接検知装置11は、RFID(radio frequency identifier)の受信機を有し、鉄道車両に搭載されたRFIDと通信を行って鉄道車両の車号情報を読み出し、この情報を検査処理装置20へ送信する。検査処理装置20は車号情報から車種を特定できる。RFIDの受信機は、本発明に係る情報取得手段の一例に相当する。
撮影装置12は、撮影手段としてラインスキャンカメラ13を有し、線路上を走行する鉄道車両をラインスキャン方式で側方から撮影する。ラインスキャンカメラ13とは、一方向の走査、すなわちライン状の撮像を一定の周波数で繰り返し行っていくラインスキャン型の撮影装置である。ラインスキャンカメラ13は、所定方向に移動する撮影対象に対して、移動方向と交差する方向のライン状の撮像を繰り返し行い、ライン状の撮像データを逐次出力する。逐次出力された複数のライン状の撮像データを二次元方向に並べることで面状に広がった撮影画像が得られる。ライン状の撮像とは、例えば縦方向2000画素×横方向1画素の撮像など、縦方向に画素数が大きく横方向の画素数が単一の撮像を意味する。以下、ライン状の撮像のことを「ラインスキャン」と呼び、ラインスキャンにより撮像される画素列の方向を「ラインスキャン方向」と呼ぶ。
ラインスキャンカメラ13は、ラインスキャン方向が、例えば上下方向など線路と交差する方向に向くように設定される。撮影装置12は、車両近接検知装置11からの近接信号に基づいて自動的に撮影を開始する。撮影装置12は、ライン状の撮像データを連続的に取り込んで画像処理装置15へ送信する。ラインスキャン方式の撮影では、撮影対象がラインスキャン方向と直交する方向へ一定の速度で移動するとき、歪みのない高分解能の撮影画像が得られる。一方、撮影対象に速度のばらつき又はラインスキャン方向の変位があれば、これらが形状の歪みとなって撮影画像に表れる。
背景板14は、単色で単一明度の背景表示面を有する構造物である。背景板14は、ラインスキャンカメラ13がラインスキャンする箇所に背景表示面が重なるように、線路を挟んで撮影装置12と対向する位置に配置される。背景板14は、線路に鉄道車両が進入したときに、車体下部又は台車の周辺など車両の向う側が写り込む領域で、背景としてラインスキャンカメラ13の撮影画像に写り込む。
画像処理装置15は、ラインスキャンカメラ13により連続的に取り込まれたライン状の撮像データをフレームメモリ16に展開して線路方向に長い鉄道車両全体の撮影画像データを生成し、これを検査処理装置20へ送信する。鉄道車両の撮影画像には、撮影環境の変動要因として、周囲の明るさに起因する輝度ばらつきが含まれる。また、鉄道車両の撮影画像には、鉄道車両の変動要因として、鉄道車両の速度ばらつき、レールの沈み込みによる鉄道車両の上下振動、鉄道車両の空気バネ(サスペンション)の作用による車体の上下振動にそれぞれ起因する複数系統の形状歪みが含まれる。
検査処理装置20は、制御プログラムを実行するCPU(中央演算処理装置)21と、CPU21に作業用のメモリ空間を提供するRAM(random access memory)22と、外部の機器と信号をやり取りするインタフェース23と、制御プログラムおよび制御データを記憶した記憶装置24とを有するコンピュータである。記憶装置24には、制御プログラムとして撮影画像に基づき鉄道車両の外観検査を行う外観検査プログラム24Aが記憶されている。また、記憶装置24には、外観検査の際に比較基準となる正常な鉄道車両の外観画像が蓄積される正常画像データベース(正常画像記憶手段に相当)24Bと、鉄道車両の外観異常を示す撮影画像が蓄積される異常画像データベース(異常画像記憶手段に相当)24Cとが設けられている。
続いて、外観検査プログラム24Aに従って検査処理装置20により実行される検査処理について説明する。
図3は、検査処理装置により実行される検査処理の手順を示すフローチャートである。図4は、図3のステップS2の歪み補正処理の詳細な手順を示すフローチャートである。
検査処理は、画像処理装置15から検査処理装置20へ鉄道車両の撮影画像が受信されることで開始される。検査処理が開始されると、先ず、検査処理装置20は、画像処理装置15から鉄道車両の撮影画像を入力する(ステップS1)。
撮影画像を入力すると、検査処理装置20は、この撮像画像の歪み補正(ステップS2)を行う。歪み補正では、レールの沈み込みによる鉄道車両の上下動に起因する歪みを矯正する補正と、撮影環境に起因する輝度のばらつきの補正と、鉄道車両の移動速度に起因する撮影画像の縦横比のばらつきを除去する補正と、鉄道車両のうちサスペンションの作用により相対的に台車と車体部分とが上下動することに起因する歪みを矯正する補正とが行われる。ステップS2およびステップS2の処理を実現するハードウェアおよびソフトウェアからなる構成が、本発明に係る補正手段の一例に相当する。
続いて、歪み補正処理の一具体例について、図4を参照しながら説明するが、本発明に係る歪み補正処理はこの内容に制限されるものではない。
歪み補正処理に移行すると、先ず、検査処理装置20は、撮影画像からレールエッジを抽出する(ステップS21)。次いで、検査処理装置20は、レールエッジが直線状になるように、幅1画素の縦長の画素列毎に、これらの画素列をラインスキャン方向にずらす(ステップS22)。これにより、レールが直線状になるように補正され、レールの沈み込みによる鉄道車両の上下動に起因した形状の歪みが修正される。
なお、ステップS21、S22の処理は、付加構成を利用して行ってもよい。すなわち、付加構成として、ラインスキャンされる線と重なる配置で、レールにキャリブレータを剛接続しておく。キャリブレータとは基準線を表示するパネルなどである。この場合、ラインスキャンカメラ13は、鉄道車両の走行中、キャリブレータと重なる線でラインスキャンを繰り返すので、撮影画像には先端から後端までキャリブレータの基準線の位置が連なって補正用ラインとして写しだされる。そして、ステップS21、22の処理においては、検査処理装置20が、レールエッジを抽出する代わりに、キャリブレータの補正用ラインを使用し、これが直線状になるように画素列をずらす補正処理を行えばよい。
次に、検査処理装置20は、撮影画像の輝度が基準画像と同一になるように画像全体の輝度を補正する(ステップS23)。この輝度補正の処理についても、次のような付加構成を利用して行ってもよい。すなわち、付加構成として、ラインスキャンカメラ13によりラインスキャンされる箇所の一部に、複数の輝度を表示した輝度表示パネルを固定しておく。そして、ステップS23においては、検査処理装置20が、輝度表示パネルの画像部分から撮影画像の輝度と基準画像の輝度の差を計算し、この差がなくなるように撮影画像全体の輝度を補正すればよい。輝度表示パネルは、例えば上述したキャリブレータに設けてもよい。
次に、検査処理装置20は、鉄道車両の特徴部分のエッジ抽出を行って(ステップS24)、同車種の特徴部分が示された基準プロファイルと抽出されたエッジとを比較する(ステップS25)。比較処理では、鉄道車両の前後方向の各部ごとに、撮影画像の縦横比のズレが計算される。縦横比のズレが計算されたら、検査処理装置20は、撮影画像に横方向の伸縮補正処理を行う(ステップS26)。伸縮補正処理では、撮影画像がラインスキャン方向に長い短冊状の画像要素に分割され、分割された全ての短冊状の画像要素を縦横比のズレを解消するように横方向に伸縮され、伸縮された全ての短冊状の画像が貼り合わされて、補正後の撮影画像が生成される。これにより、撮影画像から鉄道車両の移動速度のばらつきに起因する形状の歪みが修正される。
続いて、検査処理装置20は、鉄道車両のサスペンションの作用による車体の上下振動に起因する形状歪みを補正するため、先ず、撮影画像中のレールと台車の部分をマスクする処理を行う(ステップS27)。次いで、検査処理装置20は、マスクされていない部分で直線状のエッジ(例えば車体下縁部など)を抽出する処理を行う(ステップS28)。そして、検査処理装置20は、抽出したエッジが直線状になるように、マスクされていない部分(車体と車体下部に固定的に接続された各種部品など)のみ、横幅数画素の縦長の画像要素をラインスキャン方向にずらし、このような画像要素をずらす処理を撮影画像の始端から終端まで行う(ステップS29)。その後、検査処理装置20は、マスクされた部分を元の画像に復元する(ステップS30)。これにより、鉄道車両のサスペンションの作用による車体の上下振動に起因する形状歪みが補正される。
なお、上述した各補正処理は、様々に変更が可能である。例えば、ステップS22では、レールエッジを基準として縦方向の画像補正を行ったが、他の部位を基準に縦方向の画像補正を行ってもよい。また、ステップS27〜S30では、車体の下縁部を基準に車体および車体に固定的に接続された部分の縦方向の画像補正を行ったが、他の特徴部分を基準画像に照らし合わせてズレを検出することで上記縦方向の画像補正を行うようにしてもよい。
図4の歪み補正処理が完了したら、検査処理装置20は、撮影画像に基づき異常の有無を検査するループ処理(図3のステップS3〜S8)を実行する。ループ処理に移行すると、検査処理装置20は、先ず、予め設定されている複数の検査対象領域の中から各検査対象領域を順に選択する(ステップS3)。
図5は、検査対象領域の一例を示す説明図である。図5(a)は検査対象の鉄道車両の一例を示す画像図、図5(b)〜(d)は鉄道車両の各部に設定される複数の検査対象領域を示す部分拡大図である。なお、図5(a)には、一両の鉄道車両が示されているが、実際には複数の鉄道車両が連結された編成が検査対象となる。
検査対象領域Eは、任意に設定可能であり、例えば台車81の全体或いはブレーキ装置85の全体など大きな領域としてもよいし、ドアを開閉するエア通路のコック82或いはブレーキ装置85のレバー86など一部の部品を囲んだ小さな領域としてもよい。或いは、台車内の一部の部品83、84など大きい検査対象領域Eの中に小さな検査対象領域Eを設定してもよい。
これらの検査対象領域Eの位置を示す座標情報は、例えば記憶装置24に設けられた座標情報データベース24D(図3を参照)に記憶されている。検査処理装置20は、図3のステップS3において、座標情報データベース24Dから情報を読み出して1つずつ検査対象領域Eを選択する。なお、検査対象領域Eの座標情報は、撮影画像の絶対座標の情報としてもよいし、例えば、鉄道車両に設定された基準点からの相対座標の情報としてもよい。
1つの検査対象領域を選択したら、検査処理装置20は、撮影画像からこの検査対象領域の画像を抽出し(ステップS4:対象領域抽出手段に相当)、正常画像データベース24Bに格納されている正常な鉄道車両の画像(以下、「正常画像」と呼ぶ)と比較する(ステップS5)。正常画像データベース24Bには、車種毎に1つ又は複数の正常な鉄道車両の画像が蓄積されており、検査処理装置20は、ステップS5において、検査対象の鉄道車両と同一車種の1つの正常画像を正常画像データベース24Bから読み出して、これを比較基準とする。比較処理では、例えば、撮影画像と正常画像との各画素の色合いおよび明度の差異を数値化し、比較対象領域の全画素における差異の総和を距離値として計算する。なお、各画素の差異を数値化する際、明度又は色合いの差を二乗して差異値としたり、明度又は色合いに応じて重み付けを行って差異値を計算してもよいなど、具体的な計算手法は適宜変更可能である。また、比較の前に、両者の間の小さな位置ズレを解消する処理を行ってから比較処理を行ってもよいし、比較する位置を少しずつずらして複数回の比較を行い最少の距離値を比較結果として採用するようにしてもよい。
続いて、検査処理装置20は、正常画像データベース24Bに蓄積されている同一車種の全ての正常画像との比較を完了したか判別し(ステップS6)、未だであればステップS5に戻って、次の正常画像を読み出して比較するループ処理を繰り返す。一方、完了していれば、検査処理装置20はループ処理を抜けて次のステップに処理を移行する。ステップS5、S6のループ処理により、1つの検査対象領域の撮影画像が、正常画像データベース24Bに蓄積されている同一車種の全ての正常画像と比較される。
全ての正常画像との比較が完了したら、検査処理装置20は、複数回の画像比較で得られた距離値と閾値との比較を行って、検査対象領域の異常の有無を判定する(ステップS7)。
図6は、検査対象領域の比較処理と判定閾値とを示す説明図である。
正常な鉄道車両の画像同士を多数比較した場合、ステップS5において計算される距離値は、図6に示すような度数分布で表れる。度数は出現頻度と言い換えてもよい。図6では、距離値の最大値が”1”になるように正規化している。従って、ステップS7で用いられる判定用の閾値は、図6に示すように、度数がピークとなる距離値よりも大きく、且つ、正常な画像同士の比較では余り生じない距離値になるように設定される。このような閾値は、検査対象領域ごとに適宜設定され、記憶装置24に設けられた判定閾値データベース24E(図3を参照)に記憶されている。検査処理装置20は、この閾値を用いて、ステップS7の判定処理を行う。
なお、ステップS7の判定処理では、複数回の画像比較でそれぞれ得られた複数の距離値のうち、最も小さい距離値が使用されて閾値との比較が行われるとよい。このような判定処理により、正常画像データベースに蓄積されている複数の正常画像のうち、検査対象領域の画像が最も近い正常画像と撮影画像との比較が行われて、この比較に基づいて異常の有無が判定されることになる。
鉄道車両は、同一車種であっても、例えばケーブルなど僅かに部品の配置が異なったり、経年による正常な色褪せが生じたりして、完全に同一にはならない。よって、検査対象領域の比較を行う場合でも、上述のように複数の同一車種の正常画像を用いて比較を行い、異常か否かの判断を行うことで、正常な範囲での小さな差分を除外して検査対象の異常の有無を高精度に判断することができる。なお、異常の有無を判断する部分が微細でその画像の差異が比較的に小さくなる場合には、小さく絞った比較対象領域を設定しておくことで、正常な範囲での差分があっても異常の有無を見逃すことなく高精度に判断することができる。
上記のステップS5〜S7の処理を実現する構成が、本発明に係る異常検出手段の一例に相当する。
ステップS7の判定処理の結果、距離値が閾値より小さくて正常と判定されたら、検査処理装置20はステップS9へ処理を進める。一方、距離値が閾値以上となって異常と判定されたら、検査処理装置20は、異常と判定された鉄道車両の撮影画像を異常画像データベース24Cに登録する(ステップS8)。登録する際、異常と判定された検査対象領域が分かるように、該当する検査対象領域を示すデータが付加されてもよい。また、同一の撮影画像の複数の検査対象領域で異常と判定された場合には、同じ撮影画像が二重に登録されないように、1つの撮影画像と異常と判定された複数の検査対象領域を示す情報とが蓄積されるようにするとよい。
異常と判定された撮影画像を蓄積することで、その後、これらの撮影画像の解析により、劣化の経年変化を分析したり、車種ごとの異常の傾向を分析したり、様々な異常の分析を行うことができる。そして、これらの分析結果に合わせて効率的なメンテナンス体系を実現できる。
なお、ステップS8の異常登録処理では、検査処理装置20が、係員へ異常を知らせる通知処理を行ってもよい。通知処理では、鉄道車両の撮影画像上に異常と判断された検査対象領域を識別可能な態様で表示して通知するようにするとよい。
正常又は異常の判定がなされたら、検査処理装置20は、全ての検査対象領域についての処理を完了したか判別し(ステップS9)、未だであればステップS3に戻ってループ処理を続ける。一方、完了していればループ処理を抜けて、次のステップに処理を移行する。上述したステップS3〜ステップS9のループ処理により、鉄道車両の異常の有無の判定が、撮影画像中の複数の検査対象領域について行われる。
ループ処理を抜けると、検査処理装置20は、全ての検査対象領域の画像比較の結果が正常であるか判別し(ステップS10)、否であれば、この検査処理を終了する。一方、全て正常であれば、検査処理装置20は、撮影画像が正常画像データベース24Bへの登録条件を満たしているか判別し(ステップS11)、満たしていれば、撮影画像を車種情報とともに正常画像データベース24Bに登録する(ステップS12)。登録する撮影画像は、補正処理後の画像のみとしてもよいし、補正処理の前後両方の画像としてもよい。正常と判定された撮影画像が蓄積されることで、検査回数を重ねることで正常画像データベース24Bの正常画像が増す。これにより、異常の有無を判定する様々な手法を取り入れることが可能となり、さらに高い精度の検査を行うことが可能となる。
撮影画像の登録条件としては、例えばステップS5の画像比較で計算された距離値の最大値或いは平均値が正常な範囲にあるという条件、或いは、正常画像データベース24Bに蓄積された同一車種の撮影画像数が上限に達していないという条件など、様々な条件を適用してよい。
正常画像を登録したら、検査処理装置20は、図4の検査処理を終了する。また、ステップS11で、登録条件を満たしていないと判別したら、そのまま図4の検査処理を終了する。
以上のように、この実施の形態の鉄道車両の外観検査装置1によれば、ラインスキャンカメラ13による撮影と検査処理装置20による補正処理によって、不規則な歪みが無く、何れの箇所でも一定方向から見たときの形状が示された、分解能の高い鉄道車両の撮影画像を得ることができる。よって、このような撮影画像から検査対象領域の画像を個別に抽出して正常画像と比較することで、従来の目視による検査と同程度あるいはそれ以上の精度で外観検査を行うことができる。
また、この実施の形態の鉄道車両の外観検査装置1によれば、検査処理装置20の補正処理に、鉄道車両の移動速度のばらつきに起因する各部の縦横比のばらつきの補正と、鉄道車両の上下動に起因する形状歪みの補正と、撮影時の明るさのばらつきに起因する輝度ばらつきの補正とが含まれている。よって、例えば鉄道車両が車両基地へ入区する際など通常の走行時に鉄道車両を撮影しても、補正処理により、鉄道車両の速度のばらつき、上下動、並びに、環境の明るさに起因したばらつきを排除した撮影画像が得られる。よって、これらによってより精度の高い外観検査を行うことができる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限られるものではない。例えば、上記の実施形態では、鉄道車両の左右の側面を撮影し、主に車体より下方の部分を検査対象領域とする外観検査について説明したが、車体又は車体上部を検査対象とする外観検査に利用してもよい。さらに、鉄道車両の上方または下方から撮影を行い、この撮影画像を用いて車体上部或いは車体下部の外観検査を行う構成としてもよい。
また、上記実施形態では、検査処理装置20内の記憶装置24に、正常画像データベース24Bと異常画像データベース24Cとを設けた例を示した。しかしながら、正常画像データベース24Bと異常画像データベース24Cとは別の記憶装置内に設け、例えばLANにより検査処理装置20(コンピュータ)と接続される構成としてもよい。
また、上記実施形態では、画像の補正処理および異常検出を行う検査処理装置が撮影手段から離れて配置される例を示した。しかしながら、検査処理装置は撮影手段と同様に線路の傍らに配置されてもよいし、その場合、検査処理装置(20)に画像処理装置(15)の機能を組み込んで、両者を一体的に構成してもよい。
1 外観検査装置
11 車両近接検知装置(情報取得手段)
13 ラインスキャンカメラ(撮影手段)
14 背景板(背景構造体)
20 検査処理装置(補正手段、対象領域抽出手段、異常検出手段)
21 CPU
22 RAM
23 インタフェース
24 記憶装置
24A 外観検査プログラム
24B 正常画像データベース(正常画像記憶手段)
24C 異常画像データベース(異常画像記憶手段)
E 検査対象領域

Claims (5)

  1. 正常な鉄道車両の画像を蓄積した正常画像記憶手段と、
    線路上を移動する鉄道車両を線路と交差する方向に走査して撮影画像を得るラインスキャン型の撮影手段と、
    レールの沈み込みによる鉄道車両の上下動に起因する前記撮影画像の上下方向の歪みを矯正する補正、又は鉄道車両のうちサスペンションの作用により相対的に台車と車体部分とが上下動することに起因する前記撮影画像の上下方向の歪みを矯正する補正を行う補正手段と、
    前記補正手段により補正された前記撮影画像の中から検査対象領域の画像を抽出する対象領域抽出手段と、
    前記検査対象領域の画像と前記正常画像記憶手段に蓄積された画像とを比較して異常を検出する異常検出手段と、
    を備えていることを特徴とする鉄道車両の外観検査装置。
  2. 前記補正手段は、さらに、撮影時の鉄道車両の移動速度に起因する前記撮影画像の各部の縦横比のばらつきの補正と撮影時の明るさに起因する前記撮影画像の輝度の補正とを行うことを特徴とする請求項1記載の鉄道車両の外観検査装置。
  3. 線路を挟んで前記撮影手段と対向する配置で前記撮影画像の背景となる面を有する背景構造体をさらに備え、
    前記対象領域抽出手段は、前記検査対象領域として、少なくとも、鉄道車両の車体下部に取り付けられた部品が配置される領域と、鉄道車両の台車が配置される領域とを、個別に抽出することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の鉄道車両の外観検査装置。
  4. 外観の異常を示す撮影画像が蓄積される異常画像記憶手段をさらに備え、
    前記異常検出手段が正常と判断した撮影画像が前記正常画像記憶手段に蓄積され、前記異常検出手段が異常と判断した撮影画像が前記異常画像記憶手段に蓄積されることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の鉄道車両の外観検査装置。
  5. 検査対象の鉄道車両の車種情報を取得する情報取得手段をさらに備え、
    前記正常画像記憶手段には、同一車種の複数の画像が蓄積され、
    前記異常検出手段は、検査対象の鉄道車両の撮影画像と、前記検査対象の鉄道車両と同一の車種の複数の画像とを用いて、前記検査対象領域の画像の比較を行い、前記複数の画像の中で差が小さい方の画像との比較結果に基づいて異常か否かの判断を行うことを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載の鉄道車両の外観検査装置。
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