JP6187065B2 - 細胞培養容器 - Google Patents

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Description

本発明は、受精卵などの個別管理が必要な細胞を培養するための細胞培養容器に関する。
培養系で精子と卵子とを体外受精させて受精卵(接合子)を作製して、さらに受精卵を卵割、桑実胚、胚盤胞の段階を経て、透明帯から孵化した脱出胚盤胞の段階まで培養することが可能となり、この卵割から胚盤胞の段階にある受精卵を子宮に移植して産子を得る補助的生殖技術(ART)が、家畜領域のみならずヒトの不妊医療でも確立されている。
しかし、体外受精による妊娠成功率は必ずしも高くはなく、たとえばヒトにおいては、その妊娠成功率は、依然として25〜35%程度に留まっている。その原因の一つとして、培養において子宮への移植に適した良質な受精卵を得られる確率が高くないことが挙げられる。培養された受精卵は、専門家が顕微鏡で個別に観察することにより、子宮への移植に適した良質な受精卵であるか否か判別されている。
体外受精においては、容器中に培養液のドロップを作り、この中に受精卵を入れて体外培養するマイクロドロップ法が用いられることが多い。従来、このマイクロドロップ法には、細胞培養容器として、底面が単一平面であり、直径が30〜60mmのシャーレが使用され、シャーレの底面に、培養液のドロップを、間隔をあけて複数個作製し、その中で細胞を培養する方法が使用されてきた。
通常のシャーレでドロップを作成すると、受精卵自身の細胞運動やドロップ内の対流によって受精卵の位置が変わってしまい、その中で培養して観察していた受精卵の特定が難しくなるという問題があった。したがって、受精卵の位置を制御できる手段が求められていた。
受精卵の培養効果をより効率的にするためには受精卵同士の相互作用(パラクライン効果)を利用することが好ましいとされている。これらの効果を利用しつつ、受精卵の位置を制御する目的で、シャーレの底面に受精卵のサイズと同程度のマイクロウェルを形成し、複数個のマイクロウェルを覆うように培養液のドロップを添加し、培養液で満たされたマイクロウェルに受精卵を配置して培養を行うシステムが知られている。それにより複数の受精卵の位置を制御して個別観察を可能としつつ、少量の培養液の中で複数の受精卵の培養を行うことができ、パラクライン効果を利用できる。
特許第4724854号公報
本発明者らは、受精卵培養を行う際に、マイクロウェルを有する細胞培養容器を利用すると、ウェルのサイズが小さいため培養液を入れる際に気泡がウェル内に残ってしまい、気泡を抜くための作業が必要で作業が煩雑であること、一方、気泡が抜けやすい構造とすると、マイクロウェル内から受精卵が外に飛び出るといったリスクがあるという課題を見出した。
したがって本発明は、細胞を収容するためのマイクロウェルを有する培養容器を用いたマイクロドロップ法による細胞培養において、マイクロウェル内に気泡が残りにくく、かつ細胞をマイクロウェル内に安定的に保持することができ、培養作業性と観察作業性を向上させることが可能な細胞培養容器を提供することを目的とする。
本発明者らは、傾斜角度の異なる2種類の側面を有し、傾斜角度の大きい方が液体進入路として機能するようなマイクロウェルをその底部に形成した細胞培養容器を用いることにより、上記課題が解決できることを見出した。
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)底部と側壁を有する細胞培養容器であって、
底部に、細胞を収容するためのマイクロウェルが一つ以上配置されており、
マイクロウェルが、底面と第1側面と第2側面とを有し、
第1側面は、マイクロウェルの底面に対して垂直に、または底面に対して傾斜して形成され、
第2側面は、マイクロウェルの底面に対して傾斜して形成され、
マイクロウェルの底面に垂直でマイクロウェルの中心と第1側面とを通る切断面において、マイクロウェルの底面に垂直な線と第1側面とのなす角度をθ1とし、マイクロウェルの底面に垂直でマイクロウェルの中心と第2側面とを通る切断面において、マイクロウェルの底面に垂直な線と第2側面とのなす角度をθ2としたとき、θ1<θ2である、
細胞培養容器。
(2)θ1が0°以上20°以下であり、θ2が25°以上45°以下である、(1)に記載の細胞培養容器。
(3)第1側面と第2側面が交互に存在し、第1側面と第2側面が4個以上12個以下ずつ存在する、(1)または(2)に記載の細胞培養容器。
(4)マイクロウェルの底面と平行な面と交わる第2側面の幅の最小値が150μm以下である、(1)〜(3)のいずれかに記載の細胞培養容器。
(5)マイクロウェルの底面と平行な面と交わる第2側面の幅が外縁側ほど広くなっている、(4)記載の細胞培養容器。
(6)マイクロウェルの底面と平行な面と交わる第2側面の幅の最大値が150μm以下であり、第2側面の幅が外縁側ほど狭くなっている、(1)〜(3)のいずれかに記載の細胞培養容器。
本発明により、培養作業性と観察作業性が向上した細胞培養容器が提供される。
本発明の細胞培養容器の一実施形態の上面図を示す概略図である。 本発明の細胞培養容器の一実施形態の垂直断面図を示す概略図である。 本発明の一実施形態のマイクロウェルの上面視を示す概略図である。 図3の実施形態のマイクロウェルの垂直断面図を示す概略図である。 本発明の一実施形態のマイクロウェルの上面視を示す概略図である。 図5の実施形態のマイクロウェルの垂直断面図を示す概略図である。 本発明の一実施形態のマイクロウェルの上面視を示す概略図である。 図7の実施形態のマイクロウェルの垂直断面図を示す概略図である。 本発明の細胞培養容器を用いた細胞培養方法の一実施形態の垂直断面図を示す概略図である。
以下、本発明について説明する。
本発明の細胞培養容器の一実施形態の概略図を図1〜3に示す。図1は上面図を、図2は垂直断面図を示す。図3はマイクロウェルの拡大図の上面視を、図4はマイクロウェルの拡大図の垂直断面図を示す。
図1〜4に示されるように、本実施形態の細胞培養容器1は、
底部2と側壁3を有し、
底部2に、細胞を収容するためのマイクロウェル4が一つ以上配置されており、
マイクロウェル4が、底面5と第1側面6と第2側面7とを有し、
第1側面6は、マイクロウェル4の底面5に対して垂直に、または底面に対して傾斜して形成され、
第2側面は、マイクロウェル4の底面5に対して傾斜して形成され、
マイクロウェル4の底面5に垂直でマイクロウェルの中心と第1側面6とを通る切断面において、マイクロウェル4の底面5に垂直な線8と第1側面6とのなす角度をθ1とし、マイクロウェル4の底面5に垂直でマイクロウェルの中心と第2側面7とを通る切断面において、マイクロウェル4の底面5に垂直な線8と第2側面7とのなす角度をθ2としたとき、θ1<θ2である、ことを特徴とする。
なお、図1および図2には、複数のマイクロウェルを囲む内壁9が記載されているが、内壁は必須の構成要件ではない。
例えば、図4(a)に示すように、マイクロウェルの第1側面は、底面に対して垂直に、または底面に対して傾斜して形成される。底面に対して傾斜して形成されるとは、図4、図6および図8に示すようなマイクロウェルの垂直切断面(マイクロウェルの底面に垂直でマイクロウェルの中心を通る切断面)において、マイクロウェルの底面から、開口端に向かって所定の傾斜構造をもって高くなっていることをいう。ここでマイクロウェルの中心とは、後述するマイクロウェルの底面の重心と同義である。マイクロウェルの外縁は、マイクロウェルの開口端と同義である。マイクロウェルの底面に垂直でマイクロウェルの中心と第1側面とを通る切断面において、マイクロウェルの底面に垂直な線と第1側面とのなす角度θ1は、好ましくは20°以下、より好ましくは10°以下、さらに好ましくは5°以下であり、好ましくは0°以上である。第1側面は第2側面よりも傾斜角度が小さく、マイクロウェル内の細胞を保持する機能を有する。第1側面の傾斜角度を一定以下とすることにより、マイクロウェルに収容された細胞がマイクロウェルから飛び出すのを防止することができ、多少の振動や横揺れを与えても細胞をマイクロウェル内に保持することができる。細胞を安定に保持する観点から、θ1は0°であり、すなわち第1側面は、マイクロウェルの底面に対して垂直であることが特に好ましい。
例えば、図4(b)に示すように、マイクロウェルの第2側面は、マイクロウェルの第1側面よりも傾斜角度が大きい側面であり、第1側面がマイクロウェルの底面に対し垂直に形成される場合(θ1=0°)、垂直よりもマイクロウェルの外側に傾斜している側面は、すべて第2側面となる。第2側面は、マイクロウェルの外側に傾斜したテーパー部分であり、培養液の進入路および気泡抜け通路として機能する。マイクロウェルの底面に垂直でマイクロウェルの中心と第2側面とを通る切断面において、マイクロウェルの底面に垂直な線と第2側面とのなす角度θ2は、θ1より大きく、好ましくは25°以上、より好ましくは30°以上、さらに好ましくは35°以上であり、好ましくは55°以下であり、より好ましくは45°以下である。マイクロウェルが、このような角度θ2で傾斜した第2側面を有することにより、培養液を添加したときにマイクロウェル内に気泡が入りにくく、また、たとえ気泡が入ったとしても気泡が抜けやすく、マイクロウェル内に気泡が残るのを防止できる。したがって、作業効率が高い。一方、角度θ2を55°以下とすることにより、第2側面の部分から細胞が飛び出すのを防止することができ、多少の振動や横揺れを与えても細胞をマイクロウェル内に保持することができる。
図3にマイクロウェルの拡大図の上面視を示す。本実施形態のようなマイクロウェルの上面視において、第2側面の占める面積Z(各第2側面が占める面積の総和)の割合は、好ましくは上面視におけるマイクロウェル全体が占める面積の、好ましくは50%以下、より好ましくは33%以下であり、好ましくは10%以上である。第2側面は、マイクロウェルの外側に傾斜していることから、傾斜分だけマイクロウェルの容積が大きくなる。したがって、マイクロウェル全体に占める第2側面の割合を一定以下とすることで、マイクロウェルの容積を一定の範囲内とすることができ、細胞培養の際のオートクライン効果の維持が期待できる。
第1側面と第2側面の数は特に制限されず、少なくとも1個ずつ存在すればよい。図5および図6は、第2側面7が1個だけ存在し、その他の部分が第1側面を形成している実施形態を示す。図5は、マイクロウェルの拡大図の上面視を示し、図6は、マイクロウェルの垂直切断面を示す。第1側面と第2側面は、マイクロウェルの外周方向に交互に存在し、したがって、第1側面と第2側面は、通常、同数存在する。第1側面と第2側面は、それぞれ好ましくは4個以上、より好ましくは6個以上、さらに好ましくは8個以上ずつ存在し、好ましくは12個以下、より好ましくは10個以下ずつ存在する。図3および図4は、第1側面と第2側面が4個ずつ、マイクロウェルの外周方向に交互に存在する実施形態を示す。第2側面によって形成される進入路の数を一定以上とすることにより、培養液が注入しやすく、また気泡抜けの効果も高い。一方、第2側面によって形成される進入路の数を一定以下とすることにより、マイクロウェルの製造工程の複雑化や、マイクロウェルの側面の強度の低下を回避できる。
第2側面によって形成される進入路の幅を、一定以下、好ましくは細胞の直径より狭くすることにより、マイクロウェルに収容された細胞が、外側に傾斜した第2側面をつたわって、マイクロウェルの外に転げ出ることを防止できる。ここで、第2側面によって形成される進入路の幅は、第1側面と第2側面の形状ごとに定義される。例えば、図7および8に示すような、第2側面によって形成される進入路の幅が、マイクロウェルの外側ほど広いような実施形態においては、進入路の幅の最小値が150μm以下となるようにマイクロウェルを形成することが好ましい。ここで進入路の幅の最小値とは、マイクロウェルの底面と平行な面と交わる第2側面の幅X、すなわち、マイクロウェルを底面と平行な面で切断した切断面の上面視において、マイクロウェルの外周によって形成される図形における各第2側面の幅Xであって、マイクロウェルの中心Oから外周に向かう直線と直行する幅Xと定義できる(例えば、図7のXおよびX)。マイクロウェルを底面と平行な面で切断した切断面の上面視におけるマイクロウェルの外周は、マイクロウェルを底面と平行な面で切断したと仮定したときのマイクロウェルの開口端と同義である。その幅Xの最小値(図7のX)が150μm以下、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下となるように第2側面を形成することにより、細胞が外側に傾斜した第2側面をつたわって、マイクロウェルの外に転げ出ることを防止できる。幅Xは、底面と平行ないずれかの切断面の上面視において、最小値が150μm以下であればよく、すべての切断面の上面視において最小値が150μm以下でなくてもよい。幅Xの最小値が150μm以下であるとは、第2側面が複数存在する場合は、いずれの第2側面についても、幅Xの最小値が150μm以下であることを意味する。ここで、マイクロウェルの中心Oは、マイクロウェルの底面の重心、すなわち、マイクロウェルの底面が形成する図形の重心であり、マイクロウェルの底面が円形の場合はその中心である。切断面の上面視におけるマイクロウェルの中心Oは、マイクロウェルの底面の重心を通る底面と垂直な線と切断面とが交わる点とする。
図7は、マイクロウェルを底面と平行な面で切断した切断面の上面視において、第2側面の幅Xが外縁側ほど広くなっている実施形態を示している。このような実施形態においては、例えば、幅Xが150μmより大きくても、幅Xの最小値、すなわち切断面の上面視においてマイクロウェルの底面と第2側面とが接する部分の幅Xが150μm以下であれば、幅Xの部分で細胞をブロックすることができるため、細胞をマイクロウェル内に安定に保持することができる。ここで、マイクロウェルの底面と第2側面と接する部分とは、切断面において接する部分をさす。また、幅Xは、培養液の進入路および気泡抜けの機能を持たせる観点から、好ましくは10μm以上である。好ましくはマイクロウェルの底面と第2側面とが実際に接する部分の幅も10μm以上150μm以下であることが好ましい。
一方、図3〜6は、マイクロウェルを底面と平行な面で切断した切断面の上面視において、第2側面の幅が、外縁側ほど狭くなっている実施形態を示している。このような実施形態においては、マイクロウェルの切断面の上面視において、マイクロウェルの外周によって形成される図形における各第2側面の幅であって、マイクロウェルの中心から外周に向かう直線と直行する幅の最大値X、すなわち切断面においてマイクロウェルの底面と第2側面とが接する部分の幅Xが150μm以下となるように第2側面を形成することにより、第2側面によって形成される進入路に細胞が進入するのをブロックすることができるため、細胞をマイクロウェル内に安定に保持することができる。第2側面が複数存在する場合は、いずれの第2側面についても、幅Xが150μm以下となるように第2側面を形成することを意味する。図7の実施形態と同様に、好ましくはマイクロウェルの底面と第2側面とが実際に接する部分の幅も150μm以下であることが好ましい。
マイクロウェルの底面の形状は特に制限されず、第1側面および第2側面の数などによって左右されるが、好ましくは円状(円形、略円形、楕円形、略楕円形、および半円形を含む)であり、特に好ましくは円形である。例えば図7に示すように、第1側面と第2側面がそれぞれ8個ずつ存在するような実施形態においては、マイクロウェルの底面は、好ましくは略16角形あるいは略円形である。
マイクロウェルの底面のサイズも特に制限されない。マイクロウェルの底面の面積は、好ましくは3mm以下、より好ましくは1mm以下、さらに好ましくは0.5mm以下であり、好ましくは0.03mm以上である。マイクロウェルの底面が円形である場合、その直径(例えば、図4、図6および図8のR)は、好ましくは0.1mm以上1mm以下である。好ましくは0.25mm以上、より好ましくは0.26mm以上、さらに好ましくは0.27mm以上であり、好ましくは0.7mm未満、さらに好ましくは0.45mm未満である。細胞培養容器により受精卵を培養する場合、胚盤胞の段階まで培養することが望ましいため、円形の底面の直径は、胚盤胞の段階の細胞の最大寸法より大きいものであることが望ましい。
図4、図6および図8に示すようなマイクロウェルの垂直切断面において、底面と第1側面の接続部、底面と第2側面の接続部、およびマイクロウェルの開口端は、丸みを帯びていること、すなわち曲率を有することが好ましい。その場合、曲率は、それぞれ好ましくは0.01mm以上、より好ましくは0.02mm以上であり、好ましくは0.1mm以下、より好ましくは0.07mm以下である。曲率を持たせることにより、気泡がより抜けやすくなることで作業性が改善すること、およびプラスチックによる射出成形加工が容易になり歩留まりが向上するなどの効果が期待できる。
マイクロウェルの第1側面および第2側面の表面粗さは、大きい値であると、顕微鏡で透過観察を行った画像を輪郭抽出処理に付す際に、傾斜面上の凹凸に起因して明瞭な輪郭が得られない恐れがあるため、可能な限り小さい値であることが好ましい。具体的には、最大高さRy(粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけを抜き取り、この抜き取り部分における山頂線と谷底線との間隔をいう)が1μm未満、特に0.5μm未満であることが好ましい。なお、傾斜面の表面粗さは、培養容器の鋳型を作製する際に磨き処理を施す等して、鋳型の加工精度を高めることにより小さくすることができる。
マイクロウェルの深さは、マイクロウェルの開口部から最深部までを垂直に測った深さ(図4、図6および図8のL)をいい、0.05mm以上、好ましくは0.1mm以上であり、0.5mm以下、好ましくは0.4mm以下である。マイクロウェルの深さは、浅過ぎると、培養容器の輸送時や細胞の分裂時などに細胞が動き、細胞がマイクロウェルの範囲外に出てしまう恐れがあるため、確実に細胞をマイクロウェル内に保持できるように設定される。例えば、細胞をマイクロウェル内に保持するには、深さが細胞の最大径の1/3以上であることが好ましく、1/2以上であることがさらに好ましい。一方、深過ぎると、マイクロウェル内に培養液や細胞を導入することが難しくなるため、細胞をマイクロウェル内に保持しつつ、深過ぎない値になるよう適宜設定される。
マイクロウェルは、細胞培養容器の底部に、少なくとも1個形成され、好ましくは4個以上、好ましくは6個以上、より好ましくは8個以上が、近接して形成される。さらに近接していないマイクロウェルが別途形成されていてもよい。また、近接して形成されたマイクロウェルの群が、複数群配置されていてもよく、それらの群は互いに近接していなくてもよい。近接するマイクロウェル間のピッチは1mm以下である。ただし、上記ピッチは収容する細胞の種類に依存して異なる。上記のようなピッチでマイクロウェルを密に配置することにより、細胞を個別に管理しつつ多くの細胞を同時に培養でき、さらに顕微鏡の一視野に多くの細胞が入るため、一度に多くの細胞の画像を取得することができる。
細胞培養容器のサイズは、特に制限されないが、開口部が好ましくは円形で、開口幅(例えば、図2のr)が、好ましくは30〜60mm、特に35mmのものが用いられる。これは従来の細胞培養に用いられているシャーレと同等のサイズであり、汎用のシャーレから簡便に作製できること、および既存の培養装置等に適合しやすいことから、上記のようなサイズのものが好ましい。マイクロウェルは、細胞培養容器の底部に形成され、底部は通常平面上であり、細胞培養容器は、通常、その底部平面が水平となる状態で配置されて使用される。
1個または複数近接して形成されたマイクロウェルは、それらを囲む内壁(例えば、図1および図2の9)により、培養容器内のその他の部分と隔てられていてもよい。当該実施形態では、近接したマイクロウェル(細胞収容部)の群ごとに内壁で囲まれており、複数のマイクロウェルの群が細胞培養容器の底面に存在する場合は、群ごとに内壁で囲まれることが好ましい。通常、受精卵等の培養においては、培養容器に受精卵を含む培養液の液滴を形成し、液滴をオイルで覆うことにより培養液の乾燥が防止されている。1個または複数マイクロウェルをさらに内壁で囲むことにより、その内部に培養液を収容して安定なドロップを形成し、培養液の分散を防ぐことができる。培養液をミネラルオイル等のオイルで覆う場合も同様である。
本実施形態の細胞培養容器の材質は、特に制限されない。具体的には、金属、ガラス、およびシリコン等の無機材料、プラスチック(例えば、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂、ナイロン、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、メチルペンテン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂)で代表される有機材料を挙げることができる。本実施形態の細胞培養容器は、当業者に公知の方法で製造することができる。例えば、プラスチック材料からなる培養容器を製造する場合には、慣用の成形法、例えば射出成形により製造することができる。
本実施形態の細胞培養容器は、培養細胞の非特異的接着を防止し、また培養液のドロップが表面張力によって偏ることを防止する観点から、プラズマ処理などの表面親水化処理することが好ましい。製造後の容器に付着している菌数(バイオバーデン数)が100cfu/容器以下であることが好ましい。また、さらにγ線滅菌などの滅菌処理を施されていることがより好ましい。
本実施形態の細胞培養容器は、受精卵の発育を促進するような表面処理または表面コートがなされていてもよい。特に、受精卵の発育を促進するために、他の器官の細胞(例えば、子宮内膜細胞や卵管上皮細胞)と共培養をする場合、これらの細胞をあらかじめ培養容器に接着させる必要がある。このような場合に、培養容器の表面に細胞接着性の材料をコートすると有利である。
培養対象となる細胞は、特に制限されないが、例えば、受精卵、卵細胞、ES細胞(胚性幹細胞)およびiPS細胞(人工多能性幹細胞)が挙げられる。卵細胞は、未受精の卵細胞をさし、未成熟卵母細胞および成熟卵母細胞が含まれる。受精卵は、受精後、卵割により2細胞期、4細胞期、8細胞期と細胞数が増えていき、桑実胚を経て、胚盤胞へと発生する。受精卵には、2細胞胚、4細胞胚および8細胞胚などの初期胚、桑実胚、胚盤胞(初期胚盤胞、拡張胚盤胞および脱出胚盤胞を含む)が含まれる。胚盤胞は、胎盤を形成する潜在能力がある外部細胞と胚を形成する潜在能力がある内部細胞塊からなる胚を意味する。ES細胞は胚盤胞の内部細胞塊から得られる未分化な多能性または全能性細胞をさす。iPS細胞は、体細胞(主に線維芽細胞)へ数種類の遺伝子(転写因子)を導入することにより、ES細胞に似た分化万能性を持たせた細胞をさす。すなわち、本実施形態において細胞には、受精卵や胚盤胞のように複数の細胞の集合体も包含される。
本実施形態の細胞培養容器は、好ましくは哺乳動物および鳥類の細胞、特に哺乳動物の細胞の培養に好適である。哺乳動物は、温血脊椎動物をさし、例えば、ヒトおよびサルなどの霊長類、マウス、ラットおよびウサギなどの齧歯類、イヌおよびネコなどの愛玩動物、ならびにウシ、ウマおよびブタなどの家畜が挙げられる。本実施形態の細胞培養容器は、ヒトの受精卵の培養に特に好適である。
通常、マイクロウェルを覆うように培養液10を添加した後、培養液を覆うようにオイル11を添加し、さらに培養液中に細胞12を添加する。これらの作業は、通常ピペットやガラスキャピラリー等の器具を用いて実施される。本実施形態の細胞培養容器は、開口が大きいので、これらの操作を比較的容易に実施できる(図9)。
培養は、通常、細胞培養容器を培養細胞の発育および維持に必要なガスを含む環境雰囲気および一定の環境温度をもたらすインキュベータに入れることにより実施される。必要なガスには、水蒸気、遊離酸素(O)および二酸化炭素(CO)が含まれる。環境温度とCO含有量を調節することにより、培養液のpHを一定時間内に安定させることができる。安定なCO含有量と安定な温度により安定なpHが得られる。画像比較プログラムにより、培養中の細胞の画像を予め保存された画像と比較することにより、培養の際の温度、ガスおよび培養液などの培養条件を調節することもできる。
例えば受精卵を培養する場合には、通常、培養後に、子宮への移植に適した良質な受精卵であるか否かが判別される。判別は自動で行ってもよいし、顕微鏡等により手動で行ってもよい。培養細胞の自動判別においては、顕微鏡により取得された培養容器内の細胞の画像をCCDカメラ等の検出装置によって撮像し、得られた像を輪郭抽出処理に付し、画像中の細胞に該当する部分を抽出し、抽出された細胞の画像を画像解析装置で解析することによりその質を判別することができる。画像の輪郭抽出処理については、例えば、特開2006−337110に記載された処理を利用できる。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は実施例の範囲に限定されるものではない。
<実施例1>
図7および図8において、θ1が0°であり、θ2が30°であり、円形の底面の直径が285mmであり、深さが160mmであり、第2側面の幅の最小値(図7のX)が、それぞれ10μm、50μm、100μmまたは150μmであるマイクロウェルを有する細胞培養容器を作製した。
まず、培養液を分注した際に、マイクロウェル内に気泡が残りやすいかを、N=20回で評価した。その結果、Xが10μmはほとんど気泡が残ったが、容器を叩くことで気泡を取り除くことができた。50μmのものは気泡が数回残ったが、それらも容器を数回たたくことで簡単に気泡を抜くことができた。残りの容器は気泡が残ることはなかった。
次に受精卵と同様のサイズである樹脂ビーズ(粒径150μm)をモデルとして、細胞をマイクロウェル内に安定的に保持できるか(細胞保持性)を確認した。マイクロウェルに培養液を分注後、さらに樹脂ビーズを添加し、震度4〜6の横揺れに相当する加速度をJIS60068−3−3に従って加えた後に、樹脂ビーズが保持されているか確認した。その結果、いずれのマイクロウェルについても問題なく保持できていた。
<実施例2>
実施例1と同様のマイクロウェルであって、ただし、Xが200μmであるマイクロウェルを有する細胞培養容器を作製した。実施例1と同様に、培養液を分注後、さらに樹脂ビーズを添加し、震度4〜6の横揺れに相当する加速度をJIS60068−3−3に従って加えた後に、樹脂ビーズが保持されているか確認した。その結果、樹脂ビーズが何個かマイクロウェルから外に出てしまう場合があった。
<実施例3>
実施例1と同様のマイクロウェルであって、第1側面と第2側面を交互に、それぞれ2個ずつ、4個ずつ、8個ずつ、12個ずつ、または16個ずつ有し、θ1が0°であり、θ2が30°であり、円形の底面の直径が285mmであり、深さが160mmであり、Xが50μmであるマイクロウェルを有する細胞培養容器を作製し、気泡残りと細胞保持性を実施例1と同様に評価した。第2側面の数が増えるほど容易に液体が入ることが確認された。また細胞保持性も確認された。
ただし、第2側面を16個有するマイクロウェルは、加工が困難であり成形精度が悪くなってしまったため、気泡が残りやすくなった。
1:細胞培養容器
2:底部
3:側壁
4:マイクロウェル
5:マイクロウェルの底面
6:第1側面
7:第2側面
8:マイクロウェルの底面に垂直な線
9:内壁
10:培養液
11:オイル
12:細胞
r:細胞培養容器の開口幅
R:マイクロウェルの底面の直径
L:マイクロウェルの深さ
θ1:第1側面の傾斜角度
θ2:第2側面の傾斜角度
X:第2側面の幅
Z:マイクロウェル上面視における第2側面が占める面積

Claims (9)

  1. 底部と側壁を有する細胞培養容器であって、
    底部に、細胞を収容するためのマイクロウェルが一つ以上配置されており、
    マイクロウェルが、底面と第1側面と第2側面とを有し、
    第1側面は、マイクロウェルの底面に対して垂直に、または、底面に対して傾斜して形成され、
    第2側面は、マイクロウェルの底面に対して傾斜して形成され、
    マイクロウェルの底面に垂直でマイクロウェルの中心と第1側面とを通る切断面において、マイクロウェルの底面に垂直な線と第1側面とのなす角度をθ1とし、マイクロウェルの底面に垂直でマイクロウェルの中心と第2側面とを通る切断面において、マイクロウェルの底面に垂直な線と第2側面とのなす角度をθ2としたとき、θ1<θ2であり、
    第1側面と第2側面のそれぞれが、マイクロウェルの底面に接している、細胞培養容器。
  2. θ1が0°以上20°以下であり、θ2が25°以上45°以下である、請求項1に記載の細胞培養容器。
  3. 第1側面と第2側面がマイクロウェルの外周方向に交互に存在し、第1側面と第2側面が4個以上12個以下ずつ存在する、請求項1または2に記載の細胞培養容器。
  4. マイクロウェルの底面と平行な面と交わる第2側面の幅の最小値が150μm以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の細胞培養容器。
  5. マイクロウェルの底面と平行な面と交わる第2側面の幅が外縁側ほど広くなっている、請求項4記載の細胞培養容器。
  6. マイクロウェルの底面と平行な面と交わる第2側面の幅の最大値が150μm以下であり、
    第2側面の幅が外縁側ほど狭くなっている、
    請求項1〜3のいずれか1項に記載の細胞培養容器。
  7. 底部と側壁を有する細胞培養容器であって、
    底部に、細胞を収容するためのマイクロウェルが一つ以上配置されており、
    マイクロウェルが、底面と第1側面と第2側面とを有し、
    第1側面は、マイクロウェルの底面に対して垂直に、または、底面に対して傾斜して形成され、
    第2側面は、マイクロウェルの底面に対して傾斜して形成され、
    マイクロウェルの底面に垂直でマイクロウェルの中心と第1側面とを通る切断面において、マイクロウェルの底面に垂直な線と第1側面とのなす角度をθ1とし、マイクロウェルの底面に垂直でマイクロウェルの中心と第2側面とを通る切断面において、マイクロウェルの底面に垂直な線と第2側面とのなす角度をθ2としたとき、θ1<θ2であり、
    第1側面と第2側面がマイクロウェルの外周方向に交互に存在し、第1側面と第2側面が4個以上12個以下ずつ存在する、細胞培養容器。
  8. 底部と側壁を有する細胞培養容器であって、
    底部に、細胞を収容するためのマイクロウェルが一つ以上配置されており、
    マイクロウェルが、底面と第1側面と第2側面とを有し、
    第1側面は、マイクロウェルの底面に対して垂直に、または、底面に対して傾斜して形成され、
    第2側面は、マイクロウェルの底面に対して傾斜して形成され、
    マイクロウェルの底面に垂直でマイクロウェルの中心と第1側面とを通る切断面において、マイクロウェルの底面に垂直な線と第1側面とのなす角度をθ1とし、マイクロウェルの底面に垂直でマイクロウェルの中心と第2側面とを通る切断面において、マイクロウェルの底面に垂直な線と第2側面とのなす角度をθ2としたとき、θ1<θ2であり、
    マイクロウェルの底面と平行な面と交わる第2側面の幅の最小値が150μm以下である、細胞培養容器。
  9. 底部と側壁を有する細胞培養容器であって、
    底部に、細胞を収容するためのマイクロウェルが一つ以上配置されており、
    マイクロウェルが、底面と第1側面と第2側面とを有し、
    第1側面は、マイクロウェルの底面に対して垂直に、または、底面に対して傾斜して形成され、
    第2側面は、マイクロウェルの底面に対して傾斜して形成され、
    マイクロウェルの底面に垂直でマイクロウェルの中心と第1側面とを通る切断面において、マイクロウェルの底面に垂直な線と第1側面とのなす角度をθ1とし、マイクロウェルの底面に垂直でマイクロウェルの中心と第2側面とを通る切断面において、マイクロウェルの底面に垂直な線と第2側面とのなす角度をθ2としたとき、θ1<θ2であり、
    マイクロウェルの底面と平行な面と交わる第2側面の幅の最大値が150μm以下であり、
    第2側面の幅が外縁側ほど狭くなっている、細胞培養容器。
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