JP4905861B2 - エネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルション及びこれを用いたエネルギーデバイス電極並びにエネルギーデバイス - Google Patents

エネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルション及びこれを用いたエネルギーデバイス電極並びにエネルギーデバイス Download PDF

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Description

本発明は、エネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルション及びこれを用いたエネルギーデバイス電極並びにエネルギーデバイスに関する。
従来から、電気を貯蔵する手段として、リチウムイオン二次電池(以下、単に「リチウム電池」と記す)や電気二重層キャパシタ(以下、単に「キャパシタ」と記す)等のエネルギーデバイスがあった。
リチウム電池は、過充放電に弱く、寿命が短いという短所があるものの、メモリー効果がない、高いエネルギー密度を有するという長所があり、ノート型パソコンや携帯電話、PDAといった携帯情報端末の電源等として広く使用されている。
一方、キャパシタは、電極の活物質と電解液との界面にできる電気二重層の静電容量を利用したエネルギーデバイスであり、リチウム電池に比べてエネルギー密度が小さい反面、長寿命(高信頼性)で、急速充放電性に優れる(高入出力)という長所があり、AV機器や電話機、ファクシミリ用メモリの小型バックアップ電源等として使用されている。
このようなエネルギーデバイスの電極は、通常、集電体と、この集電体上に配置された合剤層を含むものが使用される。この合剤層は、活物質とバインダ樹脂組成物とを含む層であり、集電体表面に活物質を配置する目的で形成される。集電体上の活物質は、イオンを授受する働きがある。
例えば、リチウム電池の場合、負極の活物質として炭素材料が用いられる。この炭素材料は多層構造を有し、この層間にリチウムイオンが挿入(リチウム層間化合物の形成)し、及び層間からリチウムイオンが放出されることによって、リチウムイオンの授受が行われる。
また、このリチウム電池の活物質を集電体上に配置するためのバインダ樹脂組成物としては、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)粒子の水分散エマルション、又は、SBRと、カルボキシメチルセルロース(CMC)のナトリウム塩あるいはアンモニウム塩(水溶性高分子増粘剤として)からなる二液型の材料が用いられてきた(特許文献1)。
しかし、SBRは、負極活物質である炭素材料に吸着しやすく、炭素材料表面を被覆する傾向がある。従って、上記活物質とバインダ樹脂組成物を含む合剤層にリチウムイオンを含む電解液が浸透しにくく、結果として、炭素材料でのリチウムイオンの授受が困難になることがあった。特に、ロールプレス機等で上記合剤層を集電体に高圧縮成形した場合、合剤層中に存在する隙間が少なくなり、より一層電解液が浸透しにくくなるので、充放電特性がさらに低下する場合があった。また、合剤層を製造する前の、活性炭を含むバインダ樹脂組成物の水分散エマルション中では、SBRが活物質である炭素材料に強く吸着して、炭素材料が沈降することがあり、このエマルションから得られる合剤層の均質化が図れなかった。
一方、キャパシタの場合、活物質として比表面積の大きい活性炭が用いられる。この活性炭に電解液中のイオンを物理的に吸脱着させることによって電気を充放電することができる。
このキャパシタの活物質を集電体に付着するためのバインダ樹脂組成物としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子の水分散エマルションとカルボキシメチルセルロース(CMC)のナトリウム塩あるいはアンモニウム塩(水溶性高分子増粘剤として)からなる二液型の材料が用いられてきた(特許文献2)。しかし、リチウム電池と同様に、活性炭にバインダ樹脂組成物が被覆する問題があり、イオンの吸脱着が困難になって電気二重層の形成が困難になり、その結果、得られるキャパシタの電極の抵抗が大きくなり、長期信頼性に問題があった。
特開平5−74461号公報 WO98/58397号公報
本発明の第一の目的は、エネルギーデバイス電極に使用され、より詳しくは、該電極の集電体上に活物質を配置するためのバインダーとして用いられる、エネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルションを提供することにある。
本発明の第二の目的は、上記エマルション中において、活物質が良好な分散安定性(耐沈降性)を示す、エネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルションを提供することにある。
本発明の第三の目的は、上記活物質と上記バインダ樹脂エマルションとから得られた合剤層において、エネルギーデバイス、特に、リチウム電池の負極活物質の表面を被覆せず、かつ、電解液が良好に浸透し得る、エネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルション及びこれを用いたエネルギーデバイス電極を提供することにある。
本発明の第四の目的は、高密度で良好な充放電特性を有するリチウム電池用電極及びこれを用いたリチウム電池、並びに、抵抗が低減し長期信頼性が向上したキャパシタ電極及びこれを用いたキャパシタを提供することにある。
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、カルボキシル基を有する変性ポリオレフィンを中和して得られるバインダ樹脂の水分散エマルションが、上記課題を解決できることを見出した。
即ち、本発明は、
1.中和剤で中和したα−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸との共重合体及び水を含むことを特徴とする、エネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルションに関する。
2.前記共重合体がエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体であり、前記中和剤がアミン化合物である、上記1のエネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルションに関する。
3.前記共重合体が30〜100g/10分のMFRを有し、エチレンユニット/(メタ)アクリル酸ユニットの質量比が85/15〜75/25である、上記2に記載のエネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルションに関する。
4.前記中和剤がアルカノールアミンである、上記2又は3記載のエネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルションに関する。
5.前記共重合体の20〜100モル%のカルボキシル基が中和されている、上記1〜4のいずれか1項記載のエネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルションに関する。
6.集電体と、該集電体の少なくとも1面に設けられた合剤層とを有するエネルギーデバイス電極であって、前記合剤層が、以下の工程:
(a)活物質及び上記1〜5のいずれか1項に記載のエネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルションを含むスラリーを前記集電体上に塗布する工程:及び
(b)塗布されたスラリーから溶媒を除去する工程、
から得られるものである、エネルギーデバイス電極に関する。
7.上記6記載のエネルギーデバイス電極を含む、エネルギーデバイスに関する。
8.前記エネルギーデバイスがリチウム電池又はキャパシタである、上記7のエネルギーデバイスに関する。
本発明のエネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルションは、このバインダ樹脂エマルションと活物質を含む水系スラリー中で、炭素材料などの活物質に吸着しにくく、活物質の表面を被覆しにくいものである。このため、本発明のバインダ樹脂エマルションを用いて作製されたエネルギーデバイスの電極、特にリチウム電池の負極は、上記水系スラリーを塗布、乾燥して得た合剤層への電解液浸透性に優れ、エネルギーデバイスの高密度化及び充放電特性の向上を図ることができる。また、本発明のバインダ樹脂エマルションを用いて作製されたキャパシタ電極を用いたキャパシタは、抵抗が小さく、長期信頼性に優れる。したがって、これらのエネルギーデバイス電極を使用することにより、高性能なエネルギーデバイスが得られる。
本発明のバインダ樹脂エマルションは、エネルギーデバイス、特にエネルギーデバイスの電極に使用される。上述のように、エネルギーデバイスの電極は集電体とその上に設けられた合剤層を含む。合剤層はバインダ樹脂エマルションから得られたバインダ樹脂組成物と活物質とを含む。バインダ樹脂エマルションは、合剤層の製造にあたり使用されるものであり、活物質をバインダ樹脂エマルションに分散してスラリーを得、このスラリーを集電体上に塗布し、乾燥することによって合剤層が得られる。以下、バインダ樹脂エマルション、エネルギーデバイスの電極、及びこれらの製造方法等について、詳述する。
(1)エネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルション
本発明のエネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルションは、中和剤で中和したα−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸との共重合体、水のような溶媒、及び任意のその他の材料を含む。
(1-1)α−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸との共重合体
本発明におけるα−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸との共重合体は、α−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸とを、適宜触媒を用いて共重合することによって得られる。重合は、例えば、加圧重合等の既存の重合方法を利用できる。
(1-1-1) α−オレフィン
α−オレフィンとしては、例えば、下記式(I):
CH2=CH−R (I)
で示される化合物が挙げられる。(I)式中、Rは、水素原子、炭素数1〜12、好ましくは1〜4の直鎖又は分枝鎖の、飽和又は不飽和のアルキル基、炭素数3〜10の飽和又は不飽和の脂環式アルキル基、炭素数6〜12のアリール基から選択される。上記Rのアルキル基は、任意にハロゲン、アルキル基、アルコキシル基等で置換されていてもよい。使用し得るα−オレフィンとして特に好ましくは、エチレン、プロピレン、ブチレンである。
(1-1-2)α,β−不飽和カルボン酸
α,β−不飽和カルボン酸としては、下記式(II):
Figure 0004905861
で示される化合物が挙げられる。(II)式中、R1及びR2は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、カルボキシル基、酢酸基、炭素数1〜12、好ましくは1〜4の直鎖又は分枝鎖の、飽和又は不飽和のアルキル基、炭素数3〜10の飽和又は不飽和の脂環式アルキル基、炭素数6〜12のアリール基から選択される。上記R1及びR2のアルキル基は、任意にハロゲン、アルキル基、アルコキシル基、カルボキシル基等で置換されていてもよい。使用し得るα,β−不飽和カルボン酸として、特に好ましくは、(メタ)アクリル酸(アクリル酸又はメタクリル酸を意味する、以下同様)、エタアクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸等が挙げられる。
(1-1-3)共重合体
α−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸の質量比は、α−オレフィンユニット/αβ−不飽和カルボン酸ユニットが、例えば、96/4〜50/50、好ましくは90/10〜65/35、より好ましくは85/15〜75/25であることが適当である。
好ましいα−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸との組み合わせとしては、電極の柔軟性・可とう性等の点で、α−オレフィンとしてエチレン、α,β−不飽和カルボン酸として(メタ)アクリル酸の組み合わせが好ましい。この組み合わせによりエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体が得られる。なお共重合に際しては、式(II)の化合物の代わりにα,β−不飽和カルボン酸としてα,β−不飽和カルボン酸の無水物を使用してもよい。また、α−オレフィン及びα,β−不飽和カルボン酸は、それぞれ1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
(1-1-4)共重合体の性質
得られたα−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸との共重合体は、特に限定されないが、電極の柔軟性・可とう性と中和剤による水分散エマルション化のバランス等の点で、3〜500g/10分、好ましくは10〜300g/10分、より好ましくは、30〜100g/10分のMFR(メルトフローレート、JIS K−6760、以下同様)を有することが適当である。
特に好ましいα−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸との共重合体は、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体であって、3〜500g/10分のMFRに相当する分子量を有し、かつ、エチレンユニット/(メタ)アクリル酸ユニットが96/4〜50/50(質量比)である共重合体;より好ましくは、10〜300g/10分のMFRに相当する分子量を有し、かつ、エチレンユニット/(メタ)アクリル酸ユニットが90/10〜65/35(質量比)である共重合体;及び、更に好ましくは、30〜100g/10分のMFRに相当する分子量を有し、かつ、エチレンユニット/(メタ)アクリル酸ユニットが85/15〜75/25(質量比)である共重合体が適当である。
これらのα−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸との共重合体は、単独で又は二種類以上組み合わせて用いられる。
(1-2)中和剤
本発明における中和剤としては、α−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸との共重合体のカルボキシル基を中和する能力を有する塩基性化合物であれば特に制限はない。中和剤としては、例えば、アミン化合物(アンモニア、トリエチルアミン、ジエチルアミン等のモノアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン等のアルカノールアミン)、水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)、モルホリンなどが挙げられる。これらの中では、入手容易性、加熱しても揮発せずに残留してしまう金属イオンを含まない等の点でアミン化合物が好ましく、中でも、高い親水性を有し、水分散エマルション化能力に優れる等の点でアルカノールアミンがより好ましい。これらの中和剤は、単独で又は二種類以上組み合わせて用いられる。
(1-3)溶媒
本発明のバインダ樹脂エマルションに加えられる溶媒は、水である。従って、本発明のバインダ樹脂エマルションは水分散エマルションの形態で存在する。また得られる水分散エマルションの粒径の調節等のため、必要に応じて水以外の溶媒を加えることもできる。水以外の溶媒としては、特に制限はないが、高い親水性を有するメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール等の低級アルコール類が好ましい。これらの溶媒は、単独で又は二種類以上組み合わせて用いることができる。
(1-4)他の材料
本発明のバインダ樹脂エマルションには、必要に応じて他の材料を加えることができる。他の材料としては、例えば、電解液に対する耐膨潤性を補完するための架橋成分、電極の柔軟性・可とう性を補完するためのゴム成分、スラリーの電極塗工性を向上させるための増粘剤(粘度調節剤)、沈降防止剤、消泡剤、レべリング剤が挙げられる。これらの他の材料は、本発明のバインダ樹脂エマルション中にあらかじめ添加するほか、活物質とバインダ樹脂エマルションとを混合してスラリーを調製する際に添加してもよい。これらの他の材料は、単独で又は二種類以上組み合わせて用いることができる。
(1-5)バインダ樹脂エマルションの製法
本発明のバインダ樹脂エマルションは、上述のようにα−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸との共重合体を中和剤で中和したものを含む。
α−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸との共重合体と、中和剤との中和反応は、水の存在下であれば特に制限はないが、通常、常圧で進行する。常圧の場合、反応可能な温度範囲は、水が液体状態を保つ温度範囲である0〜100℃、好ましくは40〜95℃、より好ましくは70〜95℃、更に好ましくは80〜95℃である。また、終始あるいは一旦、用いる共重合体の融点以上の温度に上げることが特に好ましい。反応時間は、反応効率、作業効率等の点で、10分以上が好ましく、30分〜20時間がより好ましく、1〜10時間が特に好ましい。
中和剤の量としては、α−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸との共重合体の水分散エマルション化に必要な最小限の量以上であれば特に制限はないが、過剰の中和剤を残存させない等の点で、該共重合体のカルボキシル基の20〜100モル%、好ましくは、 40〜100モル%、より好ましくは60〜100モル%を中和するのに相当する量が好ましい。具体的には、α−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸との共重合体中に含まれるα,β−不飽和カルボン酸1モルに対して、1規定の中和剤を0.2〜1モル、好ましくは、0.4〜1モル、より好ましくは、0.6〜1モル存在させることが適当である。
水のような溶媒の量もまた、上記共重合体の水分散エマルション化に必要な最小限の量以上であれば特に制限はないが、活物質とバインダ樹脂エマルションとを混合してスラリーを調製する際にも粘度調節を行うために溶媒を添加するので、バインダ樹脂エマルション中に過剰に存在しないことが好ましい。例えば、水の場合、α−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸との共重合体と水との合計質量に対して、例えば30〜95質量%、好ましくは、40〜90質量%、より好ましくは、50〜85質量%であることが適当である。また、水以外の他の溶媒を加える場合、他の溶媒は、水を含む溶媒全体に対し、例えば、0.1〜30質量%、好ましくは、0.5〜20質量%、より好ましくは、1〜10質量%であることが適当である。
中和剤の量と水の量は、得られるバインダ樹脂エマルションの粒子の大きさを基準に、適宜調節してもよい。バインダ樹脂エマルションの平均粒子径は、例えば、0.001〜10μm、好ましくは、0.01〜1μm、より好ましくは、0.05〜0.3μmであることが適当である。平均粒子径が0.001μm以上であれば、エネルギーデバイス電極活物質の表面に存在する空隙を埋めず、活物質表面が被覆されることもなく、平均粒子径が10μm以下であれば、活物質とバインダ樹脂エマルションとを混合してスラリーを調製する際に凝集体(継粉)が形成することもなく、良好なスラリーの取り扱い性及び集電体への塗布性が得られるので好ましい。
(2)バインダ樹脂エマルションの用途
本発明のバインダ樹脂エマルションは、上記のようにして製造され、通常、そのままの水分散エマルションの状態で使用される。
本発明のバインダ樹脂エマルションは、エネルギーデバイス、特にエネルギーデバイスの電極に使用されるバインダとして好適に利用される。ここで、「エネルギーデバイス」とは、蓄電又は発電デバイス(装置)を言う。エネルギーデバイスとしては、例えば、リチウム電池、キャパシタ、燃料電池、太陽電池等が挙げられる。このうち、本発明のバインダ樹脂エマルションは、特に、リチウム電池の電極(負極)やキャパシタの電極に使用することが好ましい。
なお、本発明のバインダ樹脂エマルションは、エネルギーデバイスの電極のみならず、塗料、接着剤、硬化剤、印刷インキ、ソルダレジスト、研磨剤、電子部品の封止剤、半導体の表面保護膜や層間絶縁膜、電気絶縁用ワニス、バイオマテリアル等の各種コーティングレジンや成形材料、繊維などに幅広く利用できる。
(2-1)エネルギーデバイス電極
本発明のエネルギーデバイス電極は、集電体と、該集電体の少なくとも1面に設けられた合剤層とを有する。ここで合剤層は、以下の工程:
(a)活物質及び上述したエネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルションを含むスラリーを前記集電体上に塗布する工程;及び
(b)塗布されたスラリーから溶媒を除去する工程;、
から得られる。
(2-1-1)集電体
本発明における集電体は、導電性を有する物質であればよく、例えば、金属、エッチング金属箔、エキスパンドメタル、導電性プラスチックが使用できる。金属としては、アルミニウム、銅及びニッケル等が使用できる。導電性プラスチックとしては、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリp-フェニレン、ポリフェニレンビニレン等が使用できる。さらに、集電体の形状は、特に限定はないが、リチウム電池の高エネルギー密度化という点から、薄膜状が好ましい。集電体の厚みは、例えば、5〜100μm、好ましくは、8〜70μm、より好ましくは、10〜30μm、更に好ましくは、15〜25μmである。
(2-1-2)合剤層
本発明における合剤層は、活物質等を含む上記バインダ樹脂エマルションからなる。合剤層は、例えば、本発明のバインダ樹脂エマルション、活物質、必要に応じて追加の溶媒及びその他の添加剤等を混合してスラリーを調製し、このスラリーを前記集電体に塗布し、溶媒を乾燥除去することによって得られる。
(a)活物質
本発明の活物質は、使用するエネルギーデバイスの種類、及び使用される電極の極性によって異なるが、例えば、黒鉛、非晶質炭素、コークス、活性炭、炭素繊維、シリカ、アルミナ等が挙げられる。
また活物質は、導電助剤と組み合わせて使用してもよい。導電助剤としては、例えば、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック等が挙げられる。これらの活物質及び導電助剤は、それぞれ単独で又は二種類以上組み合わせて使用することができる。
(b)溶媒
合剤層の形成に用いられる溶媒としては、特に制限はなく、上述した共重合体のようなバインダ樹脂成分を均一に分散できる溶媒であればよい。このような溶媒としては、前述のバインダ樹脂エマルションに用いられる溶媒がそのまま使用される。例えば、水が好ましく、水に、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール等の低級アルコール類を加えることもできる。これらの溶媒は、単独で又は二種類以上組み合わせて用いることができる。
(c)その他の添加剤
本発明における合剤層を製造するための上記スラリーには、スラリーの分散安定性や塗工性を改善することを目的に、増粘剤を添加することができる。増粘剤としては、特に制限はないが、例えば、水溶性高分子が挙げられる。水溶性高分子としては、グアーガム、ローカストビーンガム、クインシードガム、カラギーナン、ペクチン、マンナン、デンプン、寒天、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、コラーゲン等の植物系天然高分子、ザンサンガム、サクシノグリカン、カードラン、ヒアルロン酸、デキストラン等の微生物系天然高分子、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びそれらの誘導体等のセルロース系半合成高分子、カルボキシメチルデンプン及びその誘導体等のデンプン系半合成高分子、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系半合成高分子、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド及びそれらの誘導体等のビニル系合成高分子、ポリエチレンオキサイド等のアルキレンオキサイド系合成高分子、粘土鉱物、シリカ等の無機系高分子などが挙げられる。これらの中では、入手容易性、増粘効果等の点でセルロース系半合成高分子が好ましく、中でも、結着機能も兼ね備えている等の点でカルボキシメチルセルロース及びその誘導体がより好ましい。これらの増粘剤は、単独で又は二種類以上組み合わせて用いることができる。
(d)合剤層を構成する成分の組成
合剤層を構成する活物質は、溶媒を除去して得られた合剤層に対して、例えば、50〜99質量%、好ましくは、80〜99質量%添加されることが好ましい。
バインダ樹脂エマルションは、バインダ樹脂エマルションに含まれる固形分が、溶媒を除去して得られた合剤層に対して、例えば、1〜10質量%、好ましくは2〜7質量%の量で存在するように添加されることが適当である。
また、溶媒は、バインダ樹脂溶液中の溶媒量にもよるが、溶媒を加えた後のバインダ樹脂溶液の固形分が、例えば、1〜70質量%、好ましくは、10〜60質量%となるように存在することが好ましい。
その他の材料は、溶媒を除去して得られた合剤層に対して、例えば、0.1〜20質量%、好ましくは、1〜10質量%添加されることが好ましい。
(2-1-3)電極の製法
本発明の集電体と、該集電体の少なくとも1面に設けられた合剤層とを有するエネルギーデバイス電極を製造する方法は、以下の工程:
(i)活物質及び上述したエネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルションを含むスラリーを集電体の少なくとも1面に塗布する工程;
(ii)塗布されたスラリーから溶媒を除去する工程;及び必要に応じて
(iii)得られた集電体と合剤層の積層体を圧延する工程
を含む。
工程(i)は、活物質及び上述したエネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルションを含むスラリーを準備し、このスラリーを集電体の少なくとも1面、好ましくは、両面に塗布することにより行われる。塗布は、例えば、転写ロール、コンマコーター等を用いて行うことができる。塗布は、対向する電極において、単位面積あたりの活物質利用率が負極/正極=1以上になるように行うことが適当である。スラリーの塗布量は、合剤層の乾燥質量が、例えば、1〜50mg/cm2、好ましくは、5〜30mg/cm2、より好ましくは、10〜15mg/cm2となる量である。
工程(ii)は、溶媒を、例えば50〜150℃、好ましくは、80〜120℃で、1〜20分間、好ましくは、3〜10分間乾燥して除去することによって行われる。
工程(iii)は、例えばロールプレス機を用いて行われ、合剤層のかさ密度が、1〜5g/cm3、好ましくは、2〜4g/cm3となるようにプレスされる。さらに、電極内の残留溶媒、吸着水の除去等のため、例えば、100〜150℃で1〜20時間真空乾燥してもよい。
(2-2)電池
本発明のエネルギーデバイス電極は、さらに電解液と組み合わせることにより、所望のエネルギーデバイスを製造することができる。
(2-2-1)電解液
本発明で使用する電解液としては、エネルギーデバイスの種類によって異なるが、使用するエネルギーデバイスとしての機能を発揮させるものであれば特に制限はない。
電解液中の電解質としては、例えばリチウム電池では、LiPF6のようなリチウム系化合物、キャパシタではテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートなどのアンモニウム系化合物が使用される。また、このような電解質は、水以外の溶媒、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等のカーボネート類、γ−ブチロラクトン等のラクトン類、トリメトキシメタン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、2−エトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等のエーテル類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン等のオキソラン類、アセトニトリル、ニトロメタン、N−メチル−2−等の含窒素類、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、リン酸トリエステル等のエステル類、ジグライム、トリグライム、テトラグライム等のグライム類、アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、スルホラン等のスルホン類、3−メチル−2−オキサゾリジノン等のオキサゾリジノン類、1,3−プロパンスルトン、4−ブタンスルトン、ナフタスルトン等のスルトン類などの有機溶媒中に適宜加えられ、溶解して電解液とされる。
(2-2-2)エネルギーデバイスの製法
本発明のエネルギーデバイスは、特に制約はないが、上述した本発明のエネルギーデバイス電極を使用する以外は公知の方法を利用して製造できる。
(3)エネルギーデバイス電極及びエネルギーデバイスの具体的製法
以下、本発明のエネルギーデバイス電極及びエネルギーデバイスの具体的製法を、リチウム電池の電極及びこれを用いたリチウム電池、キャパシタの電極及びこれを用いたキャパシタを例にとって説明する。
(3-1)リチウム電池の電極
(3-1-1)集電体
本発明で使用するリチウム電池用の集電体は、導電性を有する物質であればよく、例えば、金属が使用できる。具体的な金属としては、アルミニウム、銅及びニッケル等が使用できる。さらに、集電体の形状は、特に限定はないが、リチウム電池の高エネルギー密度化という点から、薄膜状が好ましい。集電体の厚みは、例えば、5〜30μm、好ましくは、8〜25μmである。
(3-1-2)活物質
本発明で使用するリチウム電池用の活物質は、例えば、リチウム電池の充放電により可逆的にリチウムイオンを挿入放出できるものであれば特に制限はない。しかしながら、正極は、充電時にリチウムイオンを放出し、放電時にリチウムイオンを受け取るという機能を有する一方、負極は、充電時にリチウムイオンを受け取り、放電時にリチウムイオンを放出するという正極とは逆の機能を有するので、正極及び負極で使用される活物質は、通常、それぞれの有する機能にあわせて、異なる材料が使用される。
負極活物質としては、例えば、黒鉛、非晶質炭素、炭素繊維、コークス、活性炭等の炭素材料が好ましく、このような炭素材料とシリコン、すず、銀等の金属又はこれらの酸化物との複合物なども使用できる。
一方、正極活物質としては、例えば、リチウム及び鉄、コバルト、ニッケル、マンガンから選ばれる1種類以上の金属を少なくとも含有するリチウム含有金属複合酸化物が好ましい。これらの活物質は単独で又は二種以上組み合わせて用いられる。なお、前記導電助剤は、正極活物質と組み合わせて使用することが好ましい。
(3-1-3)その他、合剤層、溶媒、その他の添加剤については、上記(2-1)エネルギーデバイス電極の項で述べた通りである。
(3-2)リチウム電池の電極の製法
本発明のリチウム電池の電極の製法は、原則として、上記(2-1-3)電極の製法の項で述べた通りである。
ただし、合剤層を圧延する場合、合剤層のかさ密度が、負極の合剤層の場合、例えば、1〜2g/cm3、好ましくは、1.2〜1.8g/cm3となるように、正極の合剤層の場合、例えば、2〜5g/cm3、好ましくは、3〜4g/cm3となるようにプレスされることが適当である。さらに、電極内の残留溶媒、吸着水の除去等のため、例えば、100〜150℃で1〜20時間真空乾燥してもよい。
(3-3)リチウム電池
本発明のリチウム電池の電極は、さらに電解液と組み合わせることにより、リチウム電池を製造することができる。
(3-3-1)電解液
本発明のリチウム電池で使用する電解液としては、リチウム電池としての機能を発揮させるものであれば特に制限はない。電解液としては、上述した電解質用の有機溶媒に、LiClO4、LiBF4、LiI、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、LiCl、LiBr、LiB(C25)4、LiCH3SO3、LiC49SO3、Li(CF3SO2)2N、Li[(CO2)2] 2Bなどの電解質を溶解した溶液などが挙げられる。これらの中では、カーボネート類にLiPF6を溶解した溶液が好ましい。電解液は、例えば上記有機溶媒と電解質を、それぞれ単独で又は二種類以上組み合わせて調製し、リチウム電池において用いられる。
(3-3-2)リチウム電池の製法
本発明のリチウム電池の製造方法については特に制約はないが、いずれも公知の方法を利用できる。例えば、まず、正極と負極の2つの電極を、ポリエチレン微多孔膜からなるセパレータを介して捲回する。得られたスパイラル状の捲回群を電池缶に挿入し、予め負極の集電体に溶接しておいたタブ端子を電池缶底に溶接する。得られた電池缶に電解液を注入し、さらに予め正極の集電体に溶接しておいたタブ端子を電池の蓋に溶接し、蓋を絶縁性のガスケットを介して電池缶の上部に配置し、蓋と電池缶とが接した部分をかしめて密閉することによってリチウム電池を得る。
(3-4)キャパシタの電極
(3-4-1)集電体
本発明で使用するキャパシタ用の集電体は、導電性を有する物質であればよく、例えば、金属箔、エッチング金属箔、エキスパンドメタルなどが使用できる。具体的な材質としては、アルミニウム、タンタル、ステンレス、銅、チタン及びニッケル等が挙げられるが、中でもアルミニウムが好ましい。集電体の厚みは、特に限定されないが、例えば、通常5〜100μm、好ましくは10〜70μm、より好ましくは15〜30μmである。5μm以上であれば、取り扱いが容易であり、100μm以下であれば、電極中における集電体の占有体積が大きくなりすぎることもなく、十分なキャパシタの容量保持ができるので好ましい。
(3-4-2)活物質
本発明で使用するキャパシタ用の活物質は、キャパシタの充放電により電解液との界面で電気二重層を形成できるものであれば特に制限はない。例えば、活性炭、活性炭繊維、シリカ、アルミナ等が挙げられる。これらの中では、比表面積が大きい等の点で活性炭が好ましい。好ましくは、500〜5000m2/g、より好ましくは、1500〜3000m2/gの比表面積を有する活性炭が適当である。これらの活物質は単独で又は二種以上組み合わせて用いられる。
(3-4-3)その他、合剤層、溶媒、その他の添加剤については、上記(2-1)エネルギーデバイス電極の項で述べた通りである。
(3-5)キャパシタ電極の製法
本発明のキャパシタの電極の製法は、原則として、上記(2-1-3)電極の製法の項で述べた通りである。
(3-6)キャパシタ
本発明のキャパシタの電極は、さらに電解液と組み合わせることにより、キャパシタを製造することができる。
(3-6-1)電解液
本発明のキャパシタで使用する電解液としては、キャパシタとしての機能を発揮させるものであれば特に制限はない。電解液としては、上述した電解質用の有機溶媒に、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート、トリエチルメチルアンモノウムテトラフルオロボレート、テトラエチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェートなどの電解質を溶解した溶液などが挙げられる。これらの中では、カーボネート類、特にプロピレンカーボネートにテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートを溶解した溶液が好ましい。電解液は、例えば上記有機溶媒と電解質を、それぞれ単独で又は二種類以上組み合わせて調製し、キャパシタにおいて用いられる。
(3-6-2)キャパシタの製法
本発明のキャパシタの製造方法については特に制約はないが、いずれも公知の方法を利用できる。例えば、まず、二組の電極に取出し電極(リード線)を接続し、これらをセパレータを介して捲回する。得られたスパイラル状の捲回群をケースに挿入し、電解液を注入した後、リード線の一部が外部に露出するようにゴムパッキンを用いてハウジングすることで、キャパシタを得る。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらによって制限されるものではない。
<バインダ樹脂エマルションの調製>
(実施例1)
撹拌機、温度計及び冷却管を装備した2リットルのセパラブルフラスコを準備した。α−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸との共重合体としてエチレン−メタクリル酸共重合体(MFR:60g/10分、エチレンユニット/メタクリル酸ユニット=80/20(質量比)、融点:87℃)150g、精製水826.7g及び中和剤としてN,N−ジメチルエタノールアミン23.3g(該共重合体のカルボキシル基の75モル%を中和するのに相当する量) を上記セパラブルフラスコに加えた。フラスコの内容物を撹拌しながら95℃まで昇温した後、同温度で1時間保温し、中和反応により該共重合体を水分散エマルション化した。次いで、88℃まで降温し、同温度で3時間保温して中和反応を完結させた後、室温まで冷却し、本発明のバインダ樹脂エマルションを得た。得られたエマルションの平均粒子径は約0.13μmであり、150℃で2時間常圧乾燥後の不揮発分は15.2質量%であった。
(比較例1)
日本ゼオン製のスチレン−ブタジエン共重合体(SBR)40質量%水分散エマルションを準備した。
<バインダ樹脂エマルションの評価>
バインダ樹脂エマルションの諸特性(炭素材料に対する吸着性、炭素材料の沈降性、バインダ樹脂エマルションから得た合剤層の電解液浸透性)を以下のようにして評価した。
試験(1) 炭素材料への吸着性
炭素材料(日立化成工業(株)製、商品名:MAG、リチウム電池負極活物質用塊状人造黒鉛、平均粒径20μm)と、水溶性高分子増粘剤(カルボキシメチルセルロース(CMC)のナトリウム塩、2質量%水溶液)を、固形分換算で前者が96.25質量部、後者が1.25質量部となるように配合し、予備混練した。その後、この予備混練物97.5質量部と実施例1のバインダ樹脂エマルションを固形分換算で2.5質量部混合して全体で100質量部とし、さらに精製水を全固形分が45.5質量%となるように加え、本混練してスラリーを調製した。
次いで、このスラリーを容器に入れて密閉し、室温で96時間静置した後、精製水で2倍量(2倍質量)に希釈した。これを10,000rpmで20分間遠心分離して炭素材料を下層部に沈降させた後、上層部の液を150℃で2時間常圧乾燥し、その不揮発分からスラリー中の炭素材料に吸着していない未吸着量を求めた。スラリー中の炭素材料への吸着性は、下式から算出した吸着量で評価した。
吸着量(質量%)=[(スラリー中のバインダ樹脂総量−未吸着量)/スラリー中のバインダ樹脂総量]×100
吸着量は10質量%以下であることが適当である。
試験(2) 炭素材料の沈降性
上記試験(1)で調製したスラリーを容器に入れて密閉し、室温で96時間静置した後、容器内底部のスラリーをスパチュラでかき混ぜ、触診でスラリー中の炭素材料の沈降性を調べた。
試験(3) 合剤層への電解液浸透性
上記試験(1)で調製したスラリーをガラス板上にマイクロアプリケーターで均一に塗布し、80℃で1時間常圧乾燥後、120℃で5時間真空熱処理して、約200μm厚の合剤層を形成した。室温で、この合剤層の表面に電解液(1Mの濃度でLiPF6を溶解したエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート及びジエチルカーボネートの等体積混合溶液)を1μl着液し、時間の経過とともに電解液が合剤層内部に浸透していく様子をCCDカメラで追跡した。合剤層への電解液浸透性は、合剤層表面の電解液の残液率が20容量%となる電解液着液後の経過時間(msec)で評価した。経過時間は500msec以下であることが適当である。
なお、対照実験として、実施例1のバインダ樹脂エマルションの代わりに比較例1のエマルションを用い、上記試験(1)〜(3)を繰り返した。
上記試験の結果を表1に示す。
表1
Figure 0004905861
表1から、実施例1で得た本発明のバインダ樹脂エマルションは、従来材であるスチレン−ブタジエン共重合体(SBR)に対し、スラリー中の炭素材料への吸着性が小さいため、スラリー中の炭素材料の分散安定性(耐沈降性)が良好であり、炭素材料表面を被覆しにくいので合剤層に電解液が浸透しやすいことがわかった。
<リチウム電池用の電極の作製>
(実施例2)
上記試験(1)で調製したスラリーを、合剤層の乾燥質量が約12.5mg/cm2となるように負極集電体(日立電線(株)製、圧延銅箔、厚み14μm、200×100mm)の片側表面にマイクロアプリケーターで均一に塗布した。その後、80℃で1時間常圧乾燥して合剤層を形成した。次いで、ロールプレス機で合剤層のかさ密度が1.5g/cm3又は1.8g/cm3となるように圧縮成形した後、打ち抜き機で9mmφに打ち抜いた。これを120℃で5時間真空熱処理し、本発明のバインダ樹脂エマルションと活物質から得られた合剤層を表面に設けた負極を作製した。
(比較例2)
比較例1のエマルションを用いて試験(1)を繰り返して調製したスラリーを使用した以外は、上記実施例2と同様にして負極を作製した。
(実施例3)
上記試験(1)で調製したスラリーを、合剤層の乾燥質量が29mg/cm2となるように負極集電体(日立電線(株)製、圧延銅箔、厚み10μm、200×100mm)の両側表面に転写ロールで均一に塗布した。次いで、塗工物を、120℃のコンベア炉で5分間乾燥して合剤層を形成し、ロールプレス機で合剤層のかさ密度が1.8g/cm3となるように圧縮成形した。これを56mm角に裁断して短冊状のシートを作製し、120℃の真空乾燥機で5時間真空熱処理して負極を作製した。
(比較例3)
比較例1のエマルションを用いて試験(1)を繰り返して調製したスラリーを使用した以外は、上記実施例3と同様にして負極を作製した。
<リチウム電池の作製>
(実施例4)
実施例2の負極を作用極として準備した。また、表面を軽く磨いた厚さ1mmの金属リチウム(三井金属工業(株)製)を対極として準備した。さらに、作用極と対極とを分離するための絶縁体として、セパレーター(東燃タピルス(株)製、微細孔ポリオレフィン、厚み25μm、以下同様)を電解液でしめらせたものを準備した。アルゴンガス充填雰囲気下のグローブボックス中で、上記作用極と対極を、セパレーター−対極−セパレーター−作用極−セパレーターの順に積層し、積層体を作製した。これをステンレス製コインセル外装容器に入れてステンレス製の蓋を被せ、コインセル作製用のかしめ器で密封してCR2016コインセルを作製した。
(比較例4)
作用極として、比較例2の負極を用いた以外は、実施例4と同様にしてCR2016コインセルを作成した。
(実施例5)
正極活物質としてコバルト酸リチウム(平均粒径10μm)、バインダ樹脂としてポリフッ化ビニリデン(PVDF、12質量%N−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液)、人造黒鉛系導電助剤(日本黒鉛工業(株)製、商品名:JSP、平均粒径3μm、)及びカーボンブラック系導電助剤(電気化学工業(株)製、商品名:デンカブラックHS−100、平均粒径48nm)を、固形分換算で86.0:3.2:9.0:1.8(質量比)となるように配合した。この配合物に、NMPを全固形分が60.0質量%となるように加え、混練してスラリーを調製した。得られたスラリーを、合剤層の乾燥質量が65mg/cm2となるように正極集電体(アルミニウム箔、厚み10μm)の両側表面に、転写ロールで均一に塗布した。次いで、塗工物を、120℃のコンベア炉で5分間乾燥して合剤層を形成し、ロールプレス機で合剤層のかさ密度が3.2g/cm3となるように圧縮成形した。これを54mm幅に裁断して短冊状のシートを作製し、120℃の真空乾燥機で5時間真空熱処理して正極を得た。また、負極としては、実施例3の負極を使用した。
準備した負極及び正極の集電体露出部にニッケル製の集電タブを超音波溶着した後、これらをセパレーターを介して自動捲回機で捲回し、スパイラル状の捲回群を作製した。この捲回群を電池缶に挿入し、負極の集電タブ端子を電池缶底に溶接した後、正極の集電タブ端子を蓋に溶接した。次いで、これを蓋が開口した状態で60℃、12時間減圧乾燥した。その後、電池缶にアルゴンガス充填雰囲気下のグローブボックス中で電解液(1Mの濃度でLiPF6を溶解したエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート及びジエチルカーボネートの等体積混合溶液)を約5ml注入した。その後、電池缶と蓋とをかしめて密閉し、18650型リチウム電池(円筒形、直径18mm、高さ65mm)を作製した。
(比較例5)
負極として、比較例3の負極を用いた以外は、実施例5と同様にして18650型リチウム電池を作成した。
<リチウム電池の評価>
リチウム電池の諸特性(初回充放電特性及び充放電サイクル特性)を以下のようにして評価した。
試験(4) リチウム電池の初回充放電特性
初回充放電特性は、初回充放電時の放電容量、不可逆容量及び充放電効率から判断されるリチウム電池の充放電特性の指針である。初回充放電時の放電容量は、作製された電池の容量の指針となり、初回充放電時の放電容量が大きいほど、容量の大きな電池であるといえる。
初回充放電時の不可逆容量は、[初回充電容量−初回放電容量]から求められ、一般に初回充電時の不可逆容量が小さいほど充放電サイクルを繰り返しても容量低下が起こりにくい優れた電池であると判断される。
また、初回充放電時の充放電効率(%)は、[(初回放電容量/初回充電容量)×100]から求められ、初回充放電時の充放電効率が大きいほど、充放電サイクルを繰り返しても容量低下が起こりにくい優れた電池であると判断される。
本発明のバインダ樹脂エマルションから得たエネルギーデバイスの初回充放電特性の評価には、実施例4のCR2016コインセルを用いた。
この実施例4のコインセルについて、充放電装置(東洋システム(株)製、TOSCAT3100)を用い、アルゴンガス充填雰囲気下のグローブボックス中、23℃、充電電流0.2mAで0Vまで定電流充電を行った。なお、この定電流充電は、対極がリチウム金属であるので、電位の関係上、作用極が正極になるため、正確には放電である。しかし、ここでは、作用極の黒鉛へのリチウムイオンの挿入反応を“充電”と定義する。電圧が0Vに達した時点で定電圧充電に切り替え、さらに電流値が0.02mAに減衰するまで充電を続けた後、放電電流0.2mAで放電終止電圧1.5Vに達するまで定電流放電を行った。この時の炭素材料1g当りの充電容量と放電容量を測定し、さらに不可逆容量及び充放電効率を算出し、実施例4のコインセルの初回充放電特性を評価した。
また、同様の試験及び評価を比較例4のコインセルに対しても行った。
放電容量が、合剤層のかさ密度:1.8g/cm3の場合に340mAh/g以上であれば、コインセルの初回充放電特性に優れていると判断した。結果を表2に示す。
表2
Figure 0004905861
表2から、ロールプレス機で高圧縮成形(合剤層かさ密度:1.8g/cm3)した高密度負極を用いた実施例4のコインセルは、合剤層への電解液の浸透性が極端に損なわれず、初回充放電特性が良好であることがわかった。
試験(5) リチウム電池の充放電サイクル特性
実施例5で得られた18650型リチウム電池について、充放電装置(東洋システム(株)製、TOSCAT3000)を用い、23℃、充電電流800mAで4.2Vまで定電流充電を行い、電圧が4.2Vに達した時点で定電圧充電に切り替え、さらに電流値が20mAに減衰するまで充電を続けた。その後、放電電流800mAで放電終止電圧3.0Vに達するまで定電流放電を行い、初回放電容量を測定した。次いで、この条件での充電・放電を1サイクルとし、200サイクル充放電を繰り返した。18650型リチウム電池の充放電サイクル特性は、初回放電容量を維持率100%とした時の200サイクル後の放電容量維持率で評価した。放電容量維持率は、以下の式より算出した。
放電容量維持率(%)=200サイクル後の放電容量/初回放電容量×100
また、同様の試験及び評価を比較例5のリチウム電池に対しても行った。
放電容量維持率が、85%以上、好ましくは、90%以上であれば、電池が充放電サイクルを繰り返しても容量低下が起こりにくいため、充放電サイクル特性に優れていると判断できる。
結果を表3に示す。
表3
Figure 0004905861
表3に示したように、本発明のバインダ樹脂エマルションを用いて作製される負極(実施例4)を使用したリチウム電池(実施例5)は、比較例5のリチウム電池に比べ、充放電サイクル特性に優れていることが分かった。
<キャパシタの電極の作製>
(実施例6)
電極活物質(活性炭、平均粒径2μm、比表面積2000m2/g)、導電助剤(アセチレンブラック)、及び水溶性高分子増粘剤(CMC、カルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩、2質量%水溶液)を、固形分換算でそれぞれ、100質量部、10質量部、6質量部となるように配合し、予備混練した。その後、この予備混練物に、実施例1で得た本発明のバインダ樹脂エマルションを固形分換算で6質量部加えた。得られたエマルションに、精製水を全固形分が20質量%となるように加え、本混練してスラリーを調製した。このスラリーを、集電体(化学エッチングにより表面を粗化したアルミ箔、厚み20μm、40×10mm)の両側表面に均一に塗布した。次いで、塗工物を、100℃で60分間乾燥して片面80μmの合剤層を形成し、電極を得た。
(比較例6)
ダイキン製のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)60質量%水分散エマルションを実施例6のバインダ樹脂エマルションに代えて使用した以外は、全て実施例6と同様にして電極を得た。
<キャパシタの作製>
(実施例7)
上記実施例6で得られた電極を二組用意し、それぞれ集電体露出部にアルミニウム製のリード線を超音波溶着した後、これらをセパレーターを介して自動捲回機で捲回し、スパイラル状の捲回群を作製した。この捲回群をアルミニウムケースに挿入した後、これを蓋が開口した状態で60℃、12時間減圧乾燥した。次いで、アルゴンガス充填雰囲気下のグローブボックス中で電解液(1Mの濃度でテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートを溶解したプロピレンカーボネート溶液)を注入した後、リード線の一部が外部に露出するようにゴムパッキンを用いてハウジングし、キャパシタを作製した。
(比較例7)
実施例6の電極の代わりに比較例6の電極を使用した以外は、実施例7と同様にしてキャパシタを作製した。
<キャパシタ特性の評価>
実施例7及び比較例7のキャパシタについて、容量、直流抵抗、長期信頼性を評価した。
容量は、100mA放電時の1.0Vまでの到達時間を測定した。到達時間が遅い方が容量が大きく、良好なキャパシタであると評価できる。通常、到達時間が13secより大きければ、良好なキャパシタであるといえる。
直流抵抗は、ソーラトロン社のインピーダンスアナライザを使用して測定した。抵抗値が0.5Ω以下であれば、良好なキャパシタであるといえる。
長期信頼性は、キャパシタに1.8Vの負荷をかけ、70℃で保存し、10000時間後の容量減少率を評価した。容量減少率は、下記式:
容量減少率(%)=(初期容量−10000時間後の容量)/初期容量×100
より求められる。容量減少率が小さいほど、長期信頼性が高いと言える。容量減少率は、25%以下であることが長期信頼性の面からは好ましい。
結果を表4に示す。
表4
Figure 0004905861
表4に示したように、本発明のバインダ樹脂エマルションを用いて作製された電極(実施例6)を使用したキャパシタ(実施例7)は、比較例7のキャパシタに比べ、直流抵抗が小さく、長期信頼性に優れていることが分かる。

Claims (7)

  1. 中和剤で中和したα−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸との共重合体及び水を含み、前記共重合体がエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体であり、前記中和剤がアミン化合物である、ことを特徴とする、エネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルション。
  2. 前記共重合体が30〜100g/10分のMFRを有し、エチレンユニット/(メタ)アクリル酸ユニットの質量比が85/15〜75/25である、請求項記載のエネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルション。
  3. 前記中和剤がアルカノールアミンである、請求項記載のエネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルション。
  4. 前記共重合体の20〜100モル%のカルボキシル基が中和されている、請求項1記載のエネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルション。
  5. 集電体と、該集電体の少なくとも1面に設けられた合剤層とを有するエネルギーデバイス電極であって、前記合剤層が、以下の工程:
    (a)活物質及び請求項1記載のエネルギーデバイス電極用バインダ樹脂エマルションを含むスラリーを前記集電体上に塗布する工程:及び
    (b)塗布されたスラリーから溶媒を除去する工程、
    から得られるものである、エネルギーデバイス電極。
  6. 請求項記載のエネルギーデバイス電極を含む、エネルギーデバイス。
  7. 前記エネルギーデバイスがリチウム電池又はキャパシタである、請求項記載のエネルギーデバイス。
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