JP3787425B2 - 水性顔料インク、これを用いたインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水性顔料インク、とりわけ、顔料として自己分散型カーボンブラックを含む水性顔料インクに関し、更には、かかるインクを適用して記録を行うインクジェット記録方法及びかかるインクを使用したインクジェット機器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、印刷インクの黒色着色剤として、耐水性や耐光性等の堅牢性に優れたカーボンブラックが広く用いられているが、カーボンブラックを水性インクの色材として用いるためには、水性媒体中にカーボンブラックが安定して分散することが要求される。一般に、カーボンブラックは分散性がよくないため、均一分散系を得るためには、分散剤を添加してカーボンブラックを水性媒体中に分散させる方法が採られている。しかしながら、この分散剤を使用する方法によっても充分に満足し得る分散性が得られず、このため、カーボンブラックを分散させたインクでは特に長期保存安定性に劣るという問題があった。
【0003】
一方、一般に、インクをインクジェット記録に用いる場合には、インクがインクジェット記録ヘッドの微細な先端から安定な液滴となって吐出されるようにすることが要求されるため、インクジェット記録ヘッドのオリフィスの乾燥によってインクの固化等が発生しないことが必要となる。しかしながら、上記した分散剤が含有されたインクをインクジェット記録に用いた場合には、分散剤を形成している樹脂がオリフィス等に付着した後、再溶解されずに、目詰まりやインクの不吐出等が生じる場合がある。又、分散剤を含む水性顔料インクは粘稠であり、長時間にわたる連続吐出及び高速印字を行う際にノズル先端までの経路で抵抗を起こし、吐出が不安定になり、スムーズな記録が困難になるという問題があった。
【0004】
これに対して、上記の問題を解決するために、特開平5−186704号公報や特開平8−3498号公報で述べられているように、カーボンの表面に水溶性基を導入することによって、分散剤を使用することなく安定に分散させることができる自己分散型カーボンブラックが開発されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、インクジェット記録用インクにおいて、上記したような自己分散型カーボンブラックを色材として用いた場合、本発明者らの知見によれば、空白のある文章や画像を記録している途中に、空白に対応するノズルにインク吐出の休止期間ができた場合には、インク吐出の再開時に、最初の吐出に乱れが生じたり、不吐出になることがある。更には、同一ノズルから長時間にわたるインクの連続吐出を行うとき、吐出インクの記録媒体上での着弾精度が悪化することがある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、これら従来技術の課題を解決し、長期の保存安定性に優れ、特にインクジェット記録に適用した場合にノズル詰まりを起こさず、更には、休止後に吐出させた場合のインク吐出安定性(以下、「間欠吐出安定性」とも呼ぶ)や、同一ノズルから長時間にわたるインクの連続吐出を行うとき、吐出インクの記録媒体上での良好な着弾精度を維持するという、長時間にわたる連続吐出における吐出安定性(以下、「吐出耐久」とも呼ぶ)に優れた水性顔料インクを提供することにある。
更に、本発明の他の目的は、前記水性顔料インクを適用して、高品位で堅牢性に優れた画像を安定して記録し得るインクジェット記録方法及びインクジェット用機器を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的は以下の本発明によって達成される。即ち、本発明は、カーボンブラックの表面に、少なくとも1種の親水性基が他の原子団を介して結合している自己分散型カーボンブラックを少なくとも含む色材と、トリメチロールプロパンと、水と水溶性有機溶剤とからなる水性媒体とを含有していることを特徴とする水性顔料インク、インクジェット用の水性顔料インク、これらを用いたインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置である。
【0008】
本発明の水性顔料インクにおいて、より好ましい態様は、上記いずれかの構成に更に、下記構造式(1)〜(4)で表わされる界面活性剤のいずれかを含有する水性顔料インクである。
【化12】
(但し、上記構造式(1)中、Rはアルキル基を表わし、nは整数を表わす。)
【化13】
(但し、上記構造式(2)中、Rはアルキル基を表わし、nは整数を表わす。)
【化14】
(但し、上記構造式(3)中、Rは水素原子又はアルキル基を表わし、m及びnは整数を表わす。)
【化15】
(但し、上記構造式(4)中、m及びnは、夫々整数を表わす。)
【0009】
【発明の実施の形態】
次に、好ましい実施の形態を挙げて、本発明をより詳細に説明する。
本発明の水性顔料インクは、少なくとも特定のカーボンブラックを含んだ色材と水性媒体と特定の保湿剤とからなり、更に好ましくは、これに特定の界面活性剤を添加した、顔料を分散させるための分散剤を含まない態様の水系インクである。以下、本発明の顔料インクを構成する材料について夫々説明する。
本発明の水性顔料インクにおいては、先ず、色材として、少なくとも一種の親水性基がカーボンブラックの表面に他の原子団を介して結合している自己分散型カーボンブラックを用いる。この結果、従来のインクの様に、カーボンブラックを分散させるための分散剤が不要となる。本発明で使用する自己分散型カーボンブラックとしては、イオン性を有するものが好ましく、アニオン性に帯電したものやカチオン性に帯電したものが好適である。
【0010】
アニオン性に帯電したカーボンブラックの場合、表面に結合されている親水性基が、例えば、−COOM、−SO3M、−PO3HM、−PO3M2、−SO2NH2、−SO2NHCOR等(但し、式中のMは水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを表わし、Rは炭素原子数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基又は置換基を有してもよいナフチル基を表わす。)である場合が挙げられる。本発明においては、これらの中で、特に、−COOM、−SO3Mがカーボンブラック表面に結合してアニオン性に帯電しているものを用いることが好ましい。
【0011】
又、上記親水性基中の「M」は、アルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、有機アンモニウムとしては、モノ乃至トリメチルアンモニウム、モノ乃至トリエチルアンモニウム、モノ乃至トリメタノールアンモニウムが挙げられる。アニオン性に帯電したカーボンブラックを得る方法としては、カーボンブラック表面に−COONaを導入する方法として、例えば、カーボンブラックを次亜塩素酸ソーダで酸化処理する方法が挙げられるが、勿論、本発明はこれらに限定されるわけではない。
【0012】
カチオン性に帯電したカーボンブラックの場合、他の原子団を介して結合した親水性基が、例えば、第4級アンモニウム基である場合が好ましく、より好ましくは、下記に挙げる第4級アンモニウム基のいずれかがカーボンブラック表面に結合されたものが色材として好ましく使用できる。
【0013】
【化16】
【0014】
上記した様な親水基が結合されたカチオン性に帯電している自己分散型カーボンブラックを製造する方法としては、例えば、下記に示す構造のN−エチルピリジル基を結合させる方法を例に取って説明すると、カーボンブラックを3−アミノ−N−エチルピリジウムブロマイドで処理する方法が挙げられる。勿論、本発明はこれに限定されない。
【0015】
【化17】
【0016】
本発明においては、親水性基が他の原子団を介してカーボンブラックの表面に結合したものを用いる。他の原子団としては、例えば、炭素原子数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基又は置換基を有してもよいナフチル基が挙げられる。他の原子団を介してカーボンブラックの表面に結合した親水性基の具体例としては、上記に挙げたものの他、例えば、−C2H4COOM、−PhSO3M、−PhCOOM等(但し、Phはフェニル基を表わす)が挙げられるが、勿論、本発明はこれらに限定されない。
【0017】
本発明の水性顔料インクに用いる自己分散型カーボンブラックは、カーボンブラック表面の親水性基によってカチオン性もしくはアニオン性に帯電しており、そのイオンの反発によって水分散性を有し、又、その親水性基により親水性も向上している。そのため、長期間放置されても、顔料の粒径や粘度が増大したりすることなく水性媒体中に安定して分散された水性顔料インクが得られる。
【0018】
又、本発明において、上記した自己分散型カーボンブラックは、1種類に限定されるものではなく、2種以上を混合して使用して色調を調整してもよい。又、本発明の顔料インク中における自己分散型カーボンブラックの添加量としては、インク全重量に対して、好ましくは0.1〜15重量%、より好ましくは1〜10重量%の範囲とする。更に、自己分散型カーボンブラックに加えて染料を使用してインクの色調を調整してもよい。
【0019】
本発明の水性顔料インクは、上記した色材として用いる自己分散型カーボンブラックと共に、特定の保湿剤が含有されていることを特徴とする。
本発明者らが、自己分散型カーボンブラックとの相性がよく、且つ、自己分散型カーボンブラックを含有した水性顔料インクの間欠吐出安定性を向上し得る保湿剤について鋭意研究した結果、特定の保湿剤を使用すれば、ノズルの目詰まりの防止、吐出安定性の向上、特に間欠吐出安定性及び吐出耐久を格段に向上させることができることがわかった。
【0021】
本発明においては、保湿剤としてトリメチロールプロパンを用いる。即ち、トリメチロールプロパンと自己分散型カーボンブラックとは特に相性が良く、トリメチロールプロパンをインク中に含有させた場合に、インクを長期間保存した場合の安定性及び間欠吐出を行った場合の吐出の安定性において、特に優良な効果を示す。特に、カーボンブラックの表面に、炭素原子数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基又は置換基を有してもよいナフチル基を介して親水性基が結合された自己分散型カーボンブラックと、トリメチロールプロパンとを組み合わせた場合に良好な効果が得られる。
又、上記の様な保湿剤の含有量としては、水性顔料インク全量に対して、好ましくは1〜30重量%、より好ましくは1〜10重量%の範囲とする。
【0022】
本発明の水性顔料インクにおいては、上記した保湿剤に加えて更に特定の界面活性剤を含有させると、より吐出安定性の向上、インクの被記録材への定着性の向上が図られる。
本発明の水性顔料インクに含有させる界面活性剤としては、具体的には下記の構造式(1)〜(4)で表されるものが挙げられる。
【化19】
(但し、上記構造式(1)中、Rはアルキル基を表わし、nは整数を表わす。)
【化20】
(但し、上記構造式(2)中、Rはアルキル基を表わし、nは整数を表わす。)
【化21】
(但し、上記構造式(3)中、Rは水素原子又はアルキル基を表わし、m及びnは、夫々整数を表わす。)
【化22】
(但し、上記構造式(4)中、m及びnは、夫々整数を表わす。)
【0023】
本発明の水性顔料インクにおいて、上記した界面活性剤を添加する場合の含有量としては、水性顔料インク全量に対して、好ましくは0.01〜5.0重量%、より好ましくは0.1〜0.3重量%の範囲とすることが望ましい。0.01重量%未満では、一般に被記録材に対する浸透性が少な過ぎて、インクの被記録材に対する定着性の向上、更には、インクの吐出安定性の向上効果が得られにくい。一方、5重量%より多いと、印字した際の印字品位が悪くなり、インクとして適さない場合がある。
又、本発明の水性顔料インクをインクジェット記録に用いる場合には、インクの表面張力が、30dyn/cm以上になるように、界面活性剤の添加量を決定することが望ましい。インクジェット記録方式において、インクの表面張力が30dyn/cmよりも低い場合には、ノズル先端の濡れによる印字ヨレ(インクの着弾点のズレ)等が生じる恐れがある。
【0024】
本発明の水性顔料インクに含まれる水性媒体は、水と水溶性有機溶剤との混合溶媒からなるが、水溶性有機溶剤としては、インクの乾燥防止効果を有するものが特に好ましく、又、水は、種々のイオンを含有する一般の水ではなく、脱イオン水を使用することが望ましい。
【0025】
本発明で使用する水溶性有機溶剤としては、具体的には、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−ペンタノール等の炭素数1〜5のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のオキシエチレン又はオキシプロピレン共重合体;エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;グリセリン;エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の低級アルキルエーテル類;トリエチレングリコールジメチル(又はエチル)エーテル、テトラエチレングリコールジメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級ジアルキルエーテル類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類;スルホラン、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。上記のごとき水溶性有機溶剤は、単独でも或いは混合物としても使用することができる。
【0026】
本発明の水性顔料インク中に含有される上記したような水溶性有機溶剤の含有量は、特に限定されないが、インク全重量に対して、好ましくは3〜50重量%の範囲である。又、インクに含有される水の含有量は、インク全重量に対して、好ましくは50〜95重量%の範囲である。
特に、トリメチロールプロパンを使用した時には、上記有機溶剤とトリメチロールプロパンとの比が重量基準で5:1〜1:2の範囲となるようにすることが好ましい。
又、本発明の水性顔料インクは、所望の物性値を有するインクとするために、上記した成分の他に必要に応じて、消泡剤、防腐剤、防カビ剤等を添加することができ、更に、市販の水溶性染料等を添加することもできる。
【0027】
以上のように本発明の水性顔料インクは、インクジェット記録で用いられる際に、特に効果的である。インクジェット記録方法としては、インクに力学的エネルギーを作用させてインクを吐出する記録方法、及びインクに熱エネルギーを加えてインクの発泡によりインクを吐出するインクジェット記録方法があり、それらのインクジェット記録方法に本発明の水性顔料インクは特に好適である。
【0028】
次に、上記した本発明の水性顔料インクを用いて記録を行うのに好適な、本発明のインクジェット記録装置の一例を以下に説明する。
先ず、熱エネルギーを利用したインクジェット記録装置の主要部であるヘッド構成の一例を図1及び図2に示す。
図1は、インク流路に沿ったヘッド13の断面図であり、図2は図1のA−B線での切断面図である。ヘッド13はインクを通す流路(ノズル)14を有するガラス、セラミック、シリコン又はプラスチック板等と発熱素子基板15とを接着して得られる。発熱素子基板15は酸化シリコン、窒化シリコン、炭化シリコン等で形成される保護層16、アルミニウム、金、アルミニウム−銅合金等で形成される電極17−1及び17−2、HfB2、TaN、TaAl等の高融点材料から形成される発熱抵抗体層18、熱酸化シリコン、酸化アルミニウム等で形成される蓄熱層19、シリコン、アルミニウム、窒化アルミニウム等の放熱性のよい材料で形成される基板20よりなっている。
【0029】
上記ヘッド13の電極17−1及び17−2にパルス状の電気信号が印加されると、発熱素子基板15のnで示される領域が急速に発熱し、この表面に接しているインク21に気泡が発生し、その圧力でメニスカス23が突出し、インク21がヘッドのノズル14を通して吐出し、吐出オリフィス22よりインク小滴24となり、被記録材25に向かって飛翔する。
図3には、図1に示したヘッドを多数並べたマルチヘッドの一例の外観図を示す。このマルチヘッドは、マルチノズル26を有するガラス板27と、図1に説明したものと同じような発熱ヘッド28を接着して作られている。
【0030】
図4に、このヘッドを組み込んだインクジェット記録装置の一例を示す。
図4において、61はワイピング部材としてのブレードであり、その一端はブレード保持部材によって保持固定されており、カンチレバーの形態をなす。ブレード61は記録ヘッド65による記録領域に隣接した位置に配置され、又、本例の場合、記録ヘッド65の移動経路中に突出した形態で保持される。
【0031】
62は記録ヘッド65の突出口面のキャップであり、ブレード61に隣接するホームポジションに配置され、記録ヘッド65の移動方向と垂直な方向に移動して、インク吐出口面と当接し、キャッピングを行う構成を備える。更に、63はブレード61に隣接して設けられるインク吸収体であり、ブレード61と同様、記録ヘッド65の移動経路中に突出した形態で保持される。上記ブレード61、キャップ62及びインク吸収体63によって吐出回復部64が構成され、ブレード61及びインク吸収体63によって吐出口面に水分、塵埃等の除去が行われる。
【0032】
65は、吐出エネルギー発生手段を有し、吐出口を配した吐出口面に対向する被記録材にインクを吐出して記録を行う記録ヘッド、66は記録ヘッド65を搭載して記録ヘッド65の移動を行うためのキャリッジである。キャリッジ66はガイド軸67と摺動可能に系合し、キャリッジ66の一部はモーター68によって駆動されるベルト69と接続(不図示)している。これによりキャリッジ66はガイド軸67に沿った移動が可能となり、記録ヘッド65による記録領域及びその隣接した領域の移動が可能となる。
【0033】
51は被記録材を挿入するための紙給部、52は不図示のモーターにより駆動される紙送りローラーである。これらの構成により記録ヘッドの65吐出口面と対向する位置へ被記録材が給紙され、記録が進行につれて排紙ローラー53を配した排紙部へ排紙される。以上の構成において記録ヘッド65が記録終了してホームポジションへ戻る際、吐出回復部64のキャップ62は記録ヘッド65の移動経路から退避しているが、ブレード61は移動経路中に突出している。その結果、記録ヘッド65の吐出口がワイピングされる。
【0034】
尚、キャップ62が記録ヘッド65の吐出面に当接してキャッピングを行う場合、キャップ62は記録ヘッドの移動経路中に突出するように移動する。記録ヘッド65がホームポジションから記録開始位置へ移動する場合、キャップ62及びブレード61は上記したワイピングの時の位置と同一の位置にある。この結果、この移動においても記録ヘッド65の吐出口面はワイピングされる。
上述の記録ヘッドのホームポジションへの移動は、記録終了時や吐出回復時ばかりでなく、記録ヘッドが記録のために記録領域を移動する間に所定の間隔で記録領域に隣接したホームポジションへ移動し、この移動に伴って上記ワイピングが行われる。
【0035】
図5は、記録ヘッドにインク供給部材、例えば、チューブを介して供給されるインクを収容したインクカートリッジの一例を示す図である。ここで40は供給用インクを収納したインク収容部、例えば、インク袋であり、その先端にはゴム製の栓42が設けられている。この栓42に針(不図示)を挿入することにより、インク袋40中のインクをヘッドに供給可能にする。44は廃インクを受容するインク吸収体である。
インク収容部としてはインクとの接液面がポリオレフィン、特にポリエチレンで形成されているものが好ましい。
【0036】
本発明で使用されるインクジェット記録装置としては、上述のようにヘッドとインクカートリッジとが別体となったものに限らず、図6に示すようなそれらが一体になったものにも好適に用いられる。図6において、70は記録ユニットであり、この中にはインクを収容したインク収容部、例えば、インク吸収体が収納されており、かかるインク吸収体中のインクが複数オリフィスを有するヘッド部71からインク滴として吐出される構成になっている。インク吸収体の材料としてはポリウレタンを用いることが本発明にとって好ましい。
又、インク吸収体を用いず、インク収容部が内部にバネ等を仕込んだインク袋であるような構造でもよい。
72はカートリッジ内部を大気に連通させるための大気連通口である。この記録ユニット70は図4に示す記録ヘッド65に換えて用いられるものであって、キャリッジ66に対して着脱自在になっている。
【0037】
次に、力学的エネルギーを利用したインクジェット記録装置の好ましい一例としては、複数のノズルを有するノズル形成基板と、ノズルに対向して配置される圧電材料と導電材料からなる圧力発生素子と、この圧力発生素子の周囲を満たすインクを備え、印加電圧により圧力発生素子を変位させ、インクの小液滴をノズルから吐出させるオンデマンドインクジェット記録ヘッドを挙げることができる。その記録装置の主要部である記録ヘッドの構成の一例を図7に示す。
【0038】
ヘッドは、インク室(不図示)に連通したインク流路80と、所望の体積のインク滴を吐出するためのオリフィスプレート81と、インクに直接圧力を作用させる振動板82と、この振動板82に接合され、電気信号により変位する圧電素子83と、オリフィスプレート81、振動板82等を指示固定するための基板84とから構成されている。
【0039】
図7において、インク流路80は、感光性樹脂等で形成され、オリフィスプレート81は、ステンレス、ニッケル等の金属を電鋳やプレス加工による穴あけ等により吐出口85が形成され、振動板82はステンレス、ニッケル、チタン等の金属フィルム及び高弾性樹脂フィルム等で形成され、圧電素子83は、チタン酸バリウム、PZT等の誘電体材料で形成される。
以上のような構成の記録ヘッドは、圧電素子83にパルス状の電圧を与え、歪み応力を発生させ、そのエネルギーが圧電素子83に接合された振動板を変形させ、インク流路80内のインクを垂直に加圧しインク滴(不図示)をオリフィスプレート81の吐出口85より吐出して記録を行うように動作する。
このような記録ヘッドは、図4に示したものと同様なインクジェット記録装置に組み込んで使用される。インクジェット記録装置の細部の動作は、先述と同様に行うもので差しつかえない。
【0040】
【実施例】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、下記実施例により限定されるものではない。尚、文中「部」及び「%」とあるのは、特に断りのない限り重量基準である。
【0041】
顔料分散液1
市販の酸性カーボンブラック「MA−77」(pH3.0、三菱化成社製)300gを水1000mlによく混合した後、これに次亜塩素酸ソーダ(有効塩素濃度12%)450gを滴下して、100〜105℃で10時間撹拌した。得られたスラリーを東洋濾紙No.2(アドバンティス社製)で濾過し、顔料粒子を充分に水洗した。この顔料ウエットケーキを水3000mlに再分散し、電導度0.2μsまで逆浸透膜で脱塩した。更に、この顔料分散液(pH=8〜10)を顔料濃度10重量%に濃縮した。以上の方法により、表面に、親水性の−COO-基が直接結合したアニオン性に帯電した自己分散型カーボンブラックが分散された顔料分散液1を得た。
【0042】
顔料分散液2
表面積が230m2/gでDBP吸油量が70ml/100gのカーボンブラック10gと、p−アミノベンゼンスルホン酸3.41gとを水72gによく混合した後、これに硝酸1.62gを滴下して70℃で撹拌した。数分後、5gの水に1.07gの亜硝酸ナトリウムを溶かした溶液を加え、更に1時間撹拌した。得られたスラリーを東洋濾紙No.2(アドバンティス社製)で濾過して、顔料粒子を充分に水洗し、90℃のオーブンで乾燥させた後、この顔料に水を足して顔料濃度10重量%の顔料水溶液を作製した。以上の方法により、下記式で表したように、表面に、フェニル基を介して親水性基が結合したアニオン性に帯電した自己分散型カーボンブラックが分散された顔料分散液2を得た。
【化23】
【0043】
顔料分散液3
水5.3gに濃塩酸5gを溶かした溶液に、5℃においてp−アミノ安息香酸1.58gを加えた。この溶液を、アイスバスで撹拌することにより常に10℃以下に保ち、5℃の水8.7gに亜硝酸ナトリウム1.78gを加えた溶液を加えた。更に、15分撹拌した後、表面積が320m2/gでDBP吸油量が120ml/100gのカーボンブラック20gを混合した状態のまま加えた。その後、更に15分撹拌した。得られたスラリーを東洋濾紙No.2(アドバンティス社製)で濾過し、顔料粒子を充分に水洗し、110℃のオーブンで乾燥させた後、この顔料に水を足して顔料濃度10重量%の顔料水溶液を作製した。以上の方法により、下記式で表したように、表面に、フェニル基を介して親水性基が結合したアニオン性に帯電した自己分散型カーボンブラックが分散した顔料分散液3を得た。
【化24】
【0044】
顔料分散液4
表面積が230m2/gでDBP吸油量が70ml/100gのカーボンブラック10gと3−アミノ−N−エチルピリジニウムブロマイド3.06gを水72gによく混合した後、これに硝酸1.62gを滴下して70℃で撹拌した。数分後、水5gに1.07gの亜硝酸ナトリウムを溶かした溶液を加え、更に1時間撹拌した。得られたスラリーを東洋濾紙No.2(アドバンティス社製)で濾過し、顔料粒子を充分に水洗し、110℃のオーブンで乾燥させ、更に、この顔料に水を足して顔料濃度10重量%の顔料水溶液を作製した。以上の方法により、下記式で表した親水性基が、表面に直接結合したカチオン性に帯電した自己分散型カーボンブラックが分散された顔料分散液4を得た。
【化25】
【0045】
参考例1
以下の成分を混合し、充分撹拌して溶解した後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧濾過し、本発明のインクを調製した。
・顔料分散液1 30部
・トリメチロールプロパン 6部
・グリセリン 6部
・ジエチレングリコール 6部
・水 52部
【0046】
実施例1
以下の成分を混合し、充分撹拌して溶解した後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧濾過し、本発明のインクを調製した。
・顔料分散液2 30部
・トリメチロールプロパン 6部
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物(商品名:アセチレノール
EH、川研ファインケミカル製) 0.15部
・グリセリン 5部
・エチレングリコール 5部
・水 53.85部
【0047】
実施例2
以下の成分を混合し、充分撹拌して溶解した後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧濾過し、本発明のインクを調製した。
・顔料分散液2 30部
・トリメチロールプロパン 6部
・グリセリン 6部
・エチレングリコール 6部
・水 52部
【0048】
実施例3
以下の成分を混合し、充分撹拌して溶解した後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧濾過し、本発明のインクを調製した。
・顔料分散液3 30部
・トリメチロールプロパン 6部
・テトラデシル硫酸ナトリウム 0.1部
・グリセリン 6部
・チオジグリコール 6部
・水 51.9部
【0049】
参考例2
以下の成分を混合し、充分撹拌して溶解した後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧濾過し、本発明のインクを調製した。
・顔料分散液4 30部
・トリメチロールプロパン 6部
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物(商品名:アセチレノール
EH、川研ファインケミカル製) 0.15部
・グリセリン 5部
・ジエチレングリコール 5部
・水 53.85部
【0050】
実施例4
以下の成分を混合し、充分撹拌して溶解した後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧濾過し、本発明のインクを調製した。
・顔料分散液3 30部
・トリメチロールプロパン 2部
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物(商品名:アセチレノール
EH、川研ファインケミカル製) 0.1部
・グリセリン 6部
・チオジグリコール 6部
・水 55.9部
【0051】
実施例5
以下の成分を混合し、充分撹拌して溶解した後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧濾過し、本発明のインクを調製した。
・顔料分散液3 30部
・トリメチロールプロパン 10部
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物(商品名:アセチレノール
EH、川研ファインケミカル製) 0.1部
・グリセリン 6部
・ジエチレングリコール 6部
・水 47.9部
【0052】
比較例1
以下の成分を混合し、充分撹拌して溶解した後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧濾過し、比較例のインクを調製した。
・顔料分散液1 30部
・エチルアルコール 6部
・2−メチルピロリドン 6部
・水 58部
【0053】
以下の表1に参考例1、2、実施例1〜5及び比較例1のブラックインクの主な特徴をまとめて示した。
【表1】
【0054】
[評価]
上記の参考例1、2、実施例1〜5及び比較例1のインクを用いて、記録信号に熱エネルギーをインクに付与することによりインクを吐出させるオンデマンド型マルチ記録ヘッドを有するインクジェット記録装置BJC4000(キヤノン製)を用いて下記評価を行った。その結果を表2に示す。
【0055】
(1)間欠吐出の安定性
▲1▼10秒間連続吐出→▲2▼一定時間休止→▲3▼連続吐出
上記の間欠動作を行った場合、▲3▼の最初の吐出で吐出方向の乱れが発生するか否かは▲2▼の休止時間で決まるので、この時間を段階的に変えることにより間欠吐出の安定性を測定し、以下の基準で評価した。尚、評価は環境温度15℃で湿度10%で行った。
○:31秒以上休止しても安定に吐出した。
△:21〜30秒休止しても安定に吐出した。
×:20秒以下の休止時間でしか安定吐出しなかった。
【0056】
(2)吐出耐久
上記各インクを、25℃において100時間の連続印字試験を行い、飛翔インクの着弾点のズレ、不吐出等の有無を観察し、長期の吐出安定性の評価を下記の基準で行った。
○:飛翔インクの着弾点のズレ、不吐出が全く見られない。
△:吸引回復可能な1〜2ノズルからの飛翔インクの着弾点のズレが見られる。不吐出は見られない。
×:飛翔インクの着弾点のズレ、不吐出が見られる。
【0057】
(3)保存安定性
100mlのインクを100mlのショット社製のガラス瓶に入れ、60℃の恒温槽に3ヶ月放置した後、瓶の蓋を下にして立たせ、瓶の底の付着物(ブツ)の量及び大きさを目視にて以下の基準で評価した。
○:ほとんどブツが発生しない。
△:ブツが発生する。
×:多量にブツが発生する。
【0058】
【表2】
【0059】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、長期保存安定性、間欠吐出の安定性、吐出耐久及びノズルの目詰まり防止性に優れた水性顔料インクが提供される。
又、本発明によれば、更なる間欠吐出の安定性の向上及び吐出耐久に優れた水性顔料インクが提供され、画像濃度の高い優れた品位の、耐光性や耐水性等の堅牢性の高い画像を安定して記録し得るインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】インクジェット記録装置のヘッドの一例を示す縦断面図である。
【図2】インクジェット記録装置のヘッドの一例を示す横断面図である。
【図3】図1に示したヘッドをマルチ化したヘッドの外観斜視図である。
【図4】インクジェット記録装置の一例を示す概略斜視図である。
【図5】インクカートリッジの一例を示す縦断面図である。
【図6】記録ユニットの一例を示す斜視図である。
【図7】インクジェット記録ヘッドの別の構成例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
13:ヘッド
14:インク溝
15:発熱ヘッド
16:保護膜
17−1、17−2:電極
18:発熱抵抗体層
19:蓄熱層
20:基板
21:インク
22:吐出オリフィス(微細孔)
23:メニスカス
24:インク小滴
25:被記録材
26:マルチ溝
27:ガラス板
28:発熱ヘッド
40:インク袋
42:栓
44:インク吸収体
45:インクカートリッジ
51:給紙部
52:紙送りローラー
53:排紙ローラー
61:ブレード
62:キャップ
63:インク吸収体
64:吐出回復部
65:記録ヘッド
66:キャリッジ
67:ガイド軸
68:モーター
69:ベルト
70:記録ユニット
71:ヘッド部
72:大気連通口
80:インク流路
81:オリフィスプレート
82:振動板
83:圧電素子
84:基板
85:吐出口
Claims (20)
- カーボンブラックの表面に、少なくとも1種の親水性基が他の原子団を介して結合している自己分散型カーボンブラックを少なくとも含む色材と、トリメチロールプロパンと、水と水溶性有機溶剤とからなる水性媒体とを含有していることを特徴とする水性顔料インク。
- 他の原子団が、炭素原子数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基又は置換基を有してもよいナフチル基である請求項1に記載の水性顔料インク。
- 他の原子団が、置換もしくは未置換のフェニレン基であって、該親水性基がスルホン基又はカルボキシル基である請求項1に記載の水性顔料インク。
- 親水性基が、塩基性基である請求項1又は請求項2に記載の水性顔料インク。
- 色材が、水性顔料インク全重量に対して0.1〜15重量%の範囲で含まれる請求項1又は請求項2に記載の水性顔料インク。
- 色材が、水性顔料インク全重量に対して1〜10重量%の範囲で含まれる請求項1又は請求項2に記載の水性顔料インク。
- トリメチロールプロパンが、水性顔料インク全重量に対して1〜30重量%の範囲で含まれる請求項1又は請求項2に記載の水性顔料インク。
- トリメチロールプロパンが、水性顔料インク全重量に対して1〜10重量%の範囲で含まれる請求項1又は請求項2に記載の水性顔料インク。
- 界面活性剤が、水性顔料インク全重量に対して0.01〜5.0重量%の範囲で含まれる請求項10に記載の水性顔料インク。
- 水性顔料インクが、インクジェット記録用である請求項1〜11のいずれか1項に記載の水性顔料インク。
- インクジェット記録方法によりインクを被記録材に付与して記録を行うインクジェット記録方法において、上記インクとして請求項12に記載の水性顔料インクを用いることを特徴とするインクジェット記録方法。
- インクジェット記録方法が、インクに熱エネルギーを作用させてインク吐出を行う請求項13に記載のインクジェット記録方法。
- インクジェット記録方法が、インクに力学的エネルギーを作用させてインク吐出を行う請求項13に記載のインクジェット記録方法。
- インクを収容したインク収容部、インクを吐出させるためのヘッド部を備えた記録ユニットにおいて、上記インクとして請求項12に記載の水性顔料インクを用いることを特徴とする記録ユニット。
- インクを収容したインク収容部を備えたインクカートリッジにおいて、上記インクとして請求項12に記載の水性顔料インクを用いることを特徴とするインクカートリッジ。
- インクを収容したインク収容部と、インクを吐出させるためのヘッド部とを有する記録ユニットを備えたインクジェット記録装置において、上記インクとして請求項12に記載の水性顔料インクを用いることを特徴とするインクジェット記録装置。
- インクを収容したインク収容部を有するインクカートリッジと、インクを吐出させるためのヘッド部とを備えたインクジェット記録装置において、上記インクとして請求項12に記載の水性顔料インクを用いることを特徴とするインクジェット記録装置。
- 更に、インクカートリッジに収容されたインクをヘッド部に供給するためのインク供給部を有する請求項19に記載のインクジェット記録装置。
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