JP3588528B2 - 駆動力伝達装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の駆動軸と従動軸間等両回転軸間に配設されて両回転軸間のトルク伝達を行う、電磁的手段により作動を制御する駆動伝達装置、特に、電磁手段への通電状態を制御して駆動力伝達状態を変更する駆動力伝達装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電磁的手段により作動を制御する駆動伝達装置、電磁手段への通電状態を制御して駆動力伝達状態を変更する駆動力伝達装置等の一形式として、特開平3−219123号公報に連結装置の名称で提案されているように、互いに同軸的かつ相対回転可能に位置する内側回転部材および外側回転部材間に配設されたメインクラッチ機構、電磁式パイロットクラッチ機構、および同パイロットクラッチ機構の摩擦係合力を前記メインクラッチ機構に対する摩擦係合力に変換するカム機構を備えた駆動力伝達装置がある。
【0003】
当該形式の駆動力伝達装置においては、前記パイロットクラッチ機構が、同パイロットクラッチ機構を構成する電磁コイルへの通電により作動して、前記メインクラッチ機構を摩擦係合させて前記両回転部材間のトルク伝達を行うものであり、例えば、四輪駆動車を構成する駆動軸と従動軸間に配設されてこれら両軸間のトルク伝達を行うべく機能する。
【0004】
しかして、当該形式の駆動力伝達装置においては、パイロットクラッチ機構の摩擦係合力の大小は同クラッチ機構を構成する電磁コイルへの電流量の大小によれ決定されて、メインクラッチ機構の摩擦係合力の大小に影響を及ぼし、またメインクラッチ機構の摩擦係合力の大小が内外両回転部材間での伝達トルクの大小に影響を及ぼし、これにより、両回転軸間の伝達トルクの大小が決定される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このように、当該形式の駆動力伝達装置においては、パイロットクラッチ機構における摩擦係合力の大小が最終的には両回転軸間での伝達トルクの大小に関係するため、両回転軸間での伝達トルクを大きくし、特に両回転軸を直結状態にしたい場合には、パイロットクラッチ機構を構成する電磁コイルに大電流を付与する必要がある。しかしながら、この場合には、電磁コイルは大電流の通電により発熱し、熱的影響を大きく受けて耐久性を損なうことになる。
【0006】
従って、本発明の目的は、当該形式の駆動力伝達装置において、パイロットクラッチ機構の摩擦係合力が設定された比較的小さい値に達した時点で、メインクラッチ機構がその摩擦係合力を著しく増大させるか結合するように構成して、パイロットクラッチ機構の電磁コイルへは大電流を通電することなく、両回転軸間での伝達トルクを大きくし、または両回転軸を直結状態にし得るようにして、電磁コイルの耐久性を向上させることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は駆動力伝達装置に関するもので、電磁的手段により駆動力伝達状態を制御される駆動伝達装置、電磁的手段への通電状態を制御することにより駆動力伝達状態を変更される駆動力伝達装置、互いに同軸的かつ相対回転可能に位置する内側回転部材および外側回転部材間に配設されたメインクラッチ機構、電磁式パイロットクラッチ機構、および同パイロットクラッチ機構の摩擦係合力を前記メインクラッチ機構に対する摩擦係合力に変換するカム機構を備え、前記パイロットクラッチ機構の作動により前記メインクラッチ機構を摩擦係合させて前記両回転部材間のトルク伝達を行う第3の駆動力伝達装置を適用対象とするものである。
【0008】
しかして、本発明に係る駆動力伝達装置は、上記した第1の駆動力伝達装置において、前記電磁的手段により作動して前記駆動力伝達状態を所定の駆動力伝達状態にまで形成する第1のカム機構と、前記駆動力伝達状態が所定の駆動力伝達状態に達したとき作動して前記駆動力伝達状態をより高い駆動力伝達状態に形成する第2のカム機構を備え、前記駆動力伝達状態が所定の駆動力伝達状態に達したとき、前記電磁的手段への供給電力量をそのまま保持または低減させることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明に係る駆動力伝達装置は、上記した第2の駆動力伝達装置において、前記電磁的手段により作動して前記駆動力伝達状態を所定の駆動力伝達状態にまで形成する第1のカム機構と、前記駆動力伝達状態が所定の駆動力伝達状態に形成されたとき作動して前記駆動力伝達状態を直結状態に形成する第2のカム機構を備え、前記駆動力伝達状態が所定の駆動力伝達状態に達したとき、前記電磁的手段に対する通電量をそのまま保持または低減させることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明に係る駆動力伝達装置は、上記した第3の駆動力伝達装置において、前記メインクラッチ機構を、前記外側回転部材の内側に回転可能かつ軸方向へ移動可能に嵌合した筒状のリテーナと、同リテーナと前記内側回転部材間にて交互に配置した複数のクラッチ板とにより構成するとともに、前記外側回転部材と前記リテーナ間にはこれら両者の相対回転により作動して同リテーナを前記クラッチ板側へ押圧して同クラッチ板に摩擦係合力を付与する第2のカム機構を配設して、前記リテーナをバネ部材により前記外側回転部材側へ付勢し、前記第2のカム機構が所定の作用力にて前記バネ部材のバネ力に打ち勝って作動するように構成したことを特徴とするものである。
【0011】
当該駆動力伝達装置にあっては、前記第2のカム機構を、前記外側回転部材の内向フランジ部の内側面に設けた第1のカム溝と、前記リテーナの内向フランジ部の外側面に設けられて前記第1のカム溝に対向する第2のカム溝と、これら両カム溝に嵌合するボール状のカムフォロアーとにより構成することが好ましく、また前記バネ部材を、前記外側回転部材の内向フランジ部と前記リテーナの内向フランジ部間に介装して、前記リテーナを前記外側回転部材側へ付勢するように構成することが好ましい。
【0012】
【発明の作用・効果】
本発明に係る駆動力伝達装置においては、第1の駆動力伝達装置を適用対象とするものにあっては、電磁的手段に対する供給電力を所定量以上には増大させないため、電磁的手段の耐久性を向上させることができる。
【0013】
また、第2の駆動力伝達装置を適用対象とする駆動力伝達装置にあっては、直結状態にする場合、電磁的手段に対する通電量を所定以上には増大させないため、電磁的手段の耐久性を向上させることができる。
【0014】
また、第3の駆動力伝達装置を適用対象とする駆動力伝達装置においては、従来のこの種形式の駆動力伝達装置と同様に、パイロットクラッチ機構は、同パイロットクラッチ機構を構成する電磁コイルへの通電により作動して摩擦係合し、この摩擦係合力がカム機構によりメインクラッチ機構に対する摩擦係合力に変換され、メインクラッチ機構の摩擦係合力により内外両回転部材間のトルク伝達が行われる。
【0015】
この場合、メインクラッチ機構においては、パイロットクラッチ機構からカム機構を介して付与される摩擦係合力が小さい場合には、外側回転部材とリテーナとは第2のカム機構の係合力とバネ部材の付勢力の作用により一体となって回転し、第2のカム機構は機能しない。このため、パイロットクラッチ機構の摩擦係合力の増大により、メインクラッチ機構の摩擦係合力が増大して内外回転部材間の伝達トルクを増大させ、これにより両回転軸間の伝達トルクを増大させる。
【0016】
しかして、パイロットクラッチ機構の摩擦係合力が所定の値に達してメインクラッチ機構における摩擦係合力が所定の値に達すると、同摩擦係合力が第2のカム機構の係合力とバネ部材の付勢力とに打ち勝ち、外側回転部材とリテーナ間に相対回転を生じさせる。この結果、第2のカム機構が作動してリテーナをメインクラッチ機構側へ押圧し、これにより、メインクラッチ機構はリテーナにより押圧されて一層強く摩擦係合し、最後には結合状態となる。
【0017】
従って、当該駆動力伝達装置においては、パイロットクラッチ機構を構成する電磁コイルに大電流を付与することなく、メインクラッチ機構の摩擦係合力を大きくし、またはメインクラッチ機構を結合状態として、両回転軸間の伝達トルクを瞬時に著しく増大させ、または両回転軸を直結状態とすることができる。このため、両回転軸間での伝達トルクを著しく大きくし、または両回転軸を直結状態にする場合においても、パイロットクラッチ機構を構成する電磁コイルに大電流を付与する必要がなく、電磁コイルの大電流の通電による発熱に起因する熱的影響を抑制し得て、電磁コイルの耐久性を向上させることができる。
【0018】
当該駆動力伝達装置において、第2のカム機構を、外側回転部材の内向フランジ部の内側面に設けた第1のカム溝と、リテーナの内向フランジ部の外側面に設けられて第1のカム溝に対向する第2のカム溝と、これら両カム溝に嵌合するボール状のカムフォロアーとにより構成し、またバネ部材を、外側回転部材の内向フランジ部とリテーナの内向フランジ部間に介装してリテーナを外側回転部材側へ付勢するようにすれば、駆動力伝達装置を従来のこの種形式の駆動力伝達装置に比較してさほど複雑な構造とすることなく、かつさほど大型化することなく構成することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下本発明を図面に基づいて説明すると、図1には本発明に係る駆動力伝達装置の一例が示されている。当該駆動力伝達装置10は、電磁的手段により作動を制御する駆動伝達装置であり、かつ、電磁手段への通電状態を制御して駆動力伝達状態を変更する駆動力伝達装置であって、図5に示すように、四輪駆動車における後輪側への駆動力伝達経路に配設される。
【0020】
当該車両において、トランスアクスル21はトランスミッションおよびトランスファを備えていて、エンジン22の駆動力をフロントディフアレンシャル23を介して両アクスルシャフト24に出力して両前輪25を駆動させるとともに、第1プロペラシャフト26aに出力する。
【0021】
第1プロペラシャフト26aは、駆動力伝達装置10を介して第2プロペラシャフト26bに連結しており、これら両シャフト26a,26bがトルク伝達可能に連結された場合には、駆動力はリアディフアレンシャル27に伝達され、ディフアレンシャル27から両アクスルシャフト28へ出力されて両後輪29を駆動させる。当該車両においては、第1プロペラシャフト26aが駆動軸を構成するとともに、第2プロペラシャフト26bが従動軸を構成している。
【0022】
しかして、駆動力伝達装置10は、図1に示すように、外側回転部材であるアウタハウジング10a、内側回転部材であるインナシャフト10b、メインクラッチ機構10c、パイロットクラッチ機構10d、第1カム機構10e、および第2カム機構10fを備えている。
【0023】
アウタハウジング10aは、有底の筒状のアウタケース11aと、アウタケース11aの一端開口部に螺着されて同開口部を覆蓋するカバー体11bからなり、インナシャフト10bはカバー体11bの中央部を液密的に貫通してアウタケース11a内に延びていて、軸方向の移動を規制された状態で回転可能に支持されている。アウタハウジング10aにおけるアウタケース11aの先端部には第1プロペラシャフト26aが固着されて連結され、かつインナシャフト10bには第2プロペラシャフト26bがその内孔内に挿入されてトルク伝達可能に連結される。
【0024】
メインクラッチ機構10cは、図1に示すように、複数枚のクラッチディスク12aとクラッチプレート12bを備えた多板式のもので、クラッチディスク12aと、クラッチプレート12bと、リテーナ13を備えている。リテーナ13は、筒部13aの基端側に内向フランジ部13bを有する筒体であって、アウタケース11a内に回転可能かつ軸方向へ移動可能に嵌合されている。
【0025】
メインクラッチ機構10cにおいて、各クラッチプレート12bの外周側は、リテーナ13における筒部13aの内周側に設けたスプラインに係合して、リテーナ13と一体回転可能でかつ軸方向へ移動可能に組付けられており、また各クラッチディスク12aの内周側は、インナシャフト10bの中間部の外向フランジ部の外周に設けたスプラインに係合してインナシャフト10bと一体回転可能でかつ軸方向へ移動可能に組付けられている。各クラッチディスク12aと各クラッチプレート12bとは交互に位置していて、互いに当接して摩擦係合するとともに互いに離間して自由状態となる。
【0026】
パイロットクラッチ機構10dは電磁式のもので、クラッチディスク14a、複数のクラッチプレート14b、アーマチャ14c、および電磁コイル14dを備えている。パイロットクラッチ機構10dにおいては、クラッチディスク14aの内周側は後述する第1カム機構10eを構成するカム部材15の外周に設けたスプラインに係合して、カム部材15と一体回転可能でかつ軸方向へ移動可能に組付けられており、また各クラッチプレート14bの外周側はクラッチディスク14aを挟んだ状態でアウタケース11aの内周に係合して、アウタケース11aと一体回転可能でかつ軸方向へ移動可能に組付けられている。
【0027】
アーマチャ14cはリング状のもので、アウタケース11aに固定したストッパリング14fとクラッチプレート14b間に位置して、軸方向へ移動可能に組付けられ、また電磁コイル14dはコイルケース14eに嵌着された状態で、アウタケース11aとカバー体11b間に嵌合されて、カバー体11bにベアリングを介して回転可能に組付けられている。
【0028】
パイロットクラッチ機構10dにおいては、電磁コイル14dへの通電により、カバー体11b、各クラッチプレート14b、クラッチディスク14a、およびアーマチャ14c間に磁路が形成されて、磁気誘導作用により、アーマチャ14cが電磁コイル14d側へ引付けられ、この際、アーマチャ14cはクラッチディスク14aおよびクラッチプレート14bをカバー体11bに対して押圧し、クラッチディスク14aとクラッチプレート14bを互いに摩擦係合させる。
【0029】
第1カム機構10eは、第1カム部材15と、第2カム部材16と、カムフォロアー17とからなるもので、第1カム部材15はインナシャフト10bの外周に回転可能に組付けられ、かつ第2カム部材16はインナシャフト10bの外周に一体回転可能でかつ軸方向へ移動可能に組付けられていて、これら両者15,16はメインクラッチ機構10cとカバー体11b間に位置している。第1カム部材15の外周に設けた外スプラインには、クラッチディスク14aの内周側が係合している。
【0030】
第1カム機構10eにおいては、第1カム部材15の一側面には、図2および図4に示すように、周方向に所定間隔を保持して多数のカム溝15aが形成されており、また、第2カム部材16の一側面には、第1カム部材15の各カム溝15aに対向する多数のカム溝16aが形成されている。各カム溝15a,16aは略V字状を呈するもので、互いに対向するカム溝15a,16a間には、ボール状のカムフォロアー17が嵌合されている。この状態で、第1カム部材15はカバー体11bにニードルベアリングを介して受承され、かつ第2カム部材16はメインクラッチ機構10cのクラッチプレート12bに接触し得る状態にある。
【0031】
これにより、第1カム機構10eにおいては、両カム部材15,16間に相対回転が生じると、両カム溝15a,16aとカムフォロアー17の作用により、第2カム部材16を軸方向へ移動させてメインクラッチ機構10cのクラッチディスク12aとクラッチプレート12bを押圧して、これらを摩擦係合させる。
【0032】
第2カム機構10fは、アウタケース11aの内向フランジ部11cとリテーナ13の内向フランジ部13bとに互いに対向して設けたカム溝11d,13cと、両カム溝11d,13c間に嵌合されたボール状のカムフォロア18とにより構成されている。リテーナ13の内向フランジ部13bには、図3に示すように、その外側面にカム溝13cが周方向に所定の間隔を保持して多数設けられており、同様に、アウタケース11aの内向フランジ部11cにおいても、その内側面にカム溝11dが周方向に所定の間隔を保持して多数設けられている。
【0033】
各カム溝11d,13cは略V字状を呈するもので、これら両カム溝11d,13c間にカムフォロアー18が嵌合している。また、両内向フランジ部11c,13bの内側縁部間には皿状のバネ部材19が介装されていて、バネ部材19はリテーナ13の内向フランジ部13bをアウタケース11aの内向フランジ部11c側へ、所定の力で付勢している。
【0034】
これにより、第2カム機構10fにおいては、アウタケース11aとリテーナ13が一体的に回転している場合には非作動の状態にあり、アウタケース11aとリテーナ13間に相対回転が生じると、両カム溝11d,13cとカムフォロアー18の作用により、リテーナ13をバネ部材19に抗して軸方向へ移動させて、メインクラッチ機構10cのクラッチディスク12aとクラッチプレート12bを押圧して、これらを摩擦係合させる。
【0035】
このように構成した駆動力伝達装置10は、例えば図5に示すように、アウタハウジング10aを第1プロペラシャフト26aに取付けられ、かつインナシャフト10bを第2プロペラシャフト26bに取付けられて、四輪駆動車の後輪側への駆動力伝達装置として機能する。
【0036】
当該駆動力伝達装置10においては、パイロットクラッチ機構10dの電磁コイル14dが非通電状態である場合には、パイロットクラッチ機構10d、第1カム機構10e、メインクラッチ機構10c、および第2カム機構10fは非作動の状態にあって、第1プロペラシャアト26aからアウタハウジング10aへ伝達されるトルクは、インナシャフト10b、および第2プロペラシャフト26bへは伝達されない。この間、リテーナ13はバネ部材19の付勢力により各カムフォロアー18に押付けられていて、アウタハウジング10aと一体に回転する。
【0037】
この状態において、パイロットクラッチ機構10dの電磁コイル14dが通電されると、アーマチャ14cが磁気誘導作用により電磁コイル14d側へ引付けられ、この際、アーマチャ14cはクラッチディスク14aおよびクラッチプレート14bをカバー体11bに対して押圧し、クラッチディスク14aとクラッチプレート14bを互いに摩擦係合させる。
【0038】
この結果、第1カム機構10eを構成する第1カム部材15と第2カム部材16間に相対回転が生じ、両カム溝15a,16aとカロフォロアー17との作用により、第2カム部材16がメインクラッチ機構10c側へ押圧される。このため、メインクラッチ機構10cのクラッチディスク12aとクラッチプレート12bが摩擦係合し、第1プロペラシャフト26aからアウタハウジング10aへ伝達されるトルクが、リテーナ13b、クラッチディスク12a、およびクラッチプレート12bを通してインナシャフト10b、および第2プロペラシャフト26bへ伝達される。
【0039】
この間、メインクラッチ機構10cにおいては、パイロットクラッチ機構10dから第1カム機構10eを経て付与される押圧力が小さい場合には、アウタハウジンク10aとリテーナ13とは第2カム機構10fの係合力とバネ部材19の付勢力とにより一体となって回転し、第2カム機構10fは非作動の状態にある。このため、パイロットクラッチ機構10dの摩擦係合力の増大により、第1カム機構10eに発生する押圧力が増大してメインクラッチ機構10cの摩擦係合力が増大し、アウタハウジング10aからインナシャフト10bへ伝達されるトルクは漸次増大する。
【0040】
この場合の、電磁コイル14dへの電流値Iと、第1カム機構10eにて発生するメインクラッチ機構10cに対する押圧力Fとの関係は、図6(a)のグラフに示す状態であって、電流値Iの増大に対応して押圧力Fは漸次増大する。
【0041】
しかして、パイロットクラッチ機構10dの摩擦係合力が漸次増大して所定の値に達すると、第1カム機構10eにて発生するメインクラッチ機構10cに対する押圧力Fも増大して押圧力が所定の値F1に達し、メインクラッチ機構10cにおける摩擦係合力を増大させる。この結果、リテーナ13とアウタハウジング10a間に、第2カム機構10fの係合力とバネ部材19の付勢力とに打ち勝って相対回転が発生し、第2カム機構10fが作動してリテーナ13をメインクラッチ機構10c側へ押圧する。
【0042】
これにより、メインクラッチ機構10cはリテーナ13により押圧されて一層強く摩擦係合して結合状態となり、アウタハウジング10aとインナシャフト10bを結合して、両プロペラシャフト26a,26bを直結状態とする。図6(b)には、第1カム機構10eにて発生するメインクラッチ機構10cに対する押圧力Fとメインクラッチ機構10cにて発生するインナシャフト10b側への伝達トルクTとの関係を示しており、押圧力がF1値に達すると、メインクラッチ機構10cが結合状態となる。メインクラッチ機構10cを結合状態とするために要する電磁コイル14dへの電流値は、同図(a)に示す電流値I1である。
【0043】
このように、当該駆動力伝達装置10においては、パイロットクラッチ機構10dを構成する電磁コイル14dに大電流を付与することなく、メインクラッチ機構10cの摩擦係合力を大きくし、またはメインクラッチ機構10cを結合状態として、両プロペラシャフト26a,26b間の伝達トルクを瞬時に著しく増大させ、または両プロペラシャフト26a,26bを直結状態とすることができる。
【0044】
このため、両プロペラシャフト26a,26b間での伝達トルクを著しく大きくし、または両プロペラシャフト26a,26bを直結状態にする場合においても、パイロットクラッチ機構10dを構成する電磁コイル14dへは大電流を付与する必要がなく、電磁コイル14dの大電流の通電による発熱に起因する熱的影響を抑制し得て、電磁コイル14dの耐久性を向上させることができる。
【0045】
また、当該駆動力伝達装置10においては、第2カム機構10fを、アウタハウジング10aの内向フランジ部11cの内側面に設けたカム溝11dと、リテーナ13の内向フランジ部13bの外側面に設けられてカム溝11dに対向するカム溝13cと、これら両カム溝11d,13cに嵌合するボール状のカムフォロアー18とにより構成し、またバネ部材19を、アウタハウジング10aの内向フランジ部11cとリテーナ13の内向フランジ部13b間に介装してリテーナ13を付勢する構成を採っているため、当該駆動力伝達装置10を、従来のこの種形式の駆動力伝達装置に比較してさほど複雑な構造とすることなく、かつ大型化することなく構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る駆動力伝達装置の一例を示す切断端面図である。
【図2】同駆動力伝達装置における図1の矢印2−2線方向に見た切断端面図である。
【図3】同駆動力伝達装置における図1の矢印3−3線方向に見た切断端面図である。
【図4】同駆動力伝達装置を構成するカム機構の一部を示す横断面図である。
【図5】同駆動力伝達装置を採用した四輪駆動車の概略構成図である。
【図6】パイロットクラッチ機構の電磁コイルへの電流値Iと第1カム機構にて発生するメインクラッチ機構に対する押圧力Fとの関係を示すグラフ(a)、および同押圧力Fとメインクラッチ機構にて発生するインナシャフト側への伝達トルクTとの関係を示すグラフ(b)である。
【符号の説明】
10…駆動力伝達装置、10a…アウタハウジング、10b…インナシャフト、10c…メインクラッチ機構、10d…パイロットクラッチ機構、10e…第1カム機構、10f…第2カム機構、11a…アウタケース、11b…カバー体、11c…内向フランジ部、11d…カム溝、12a…クラッチディスク、12b…クラッチプレート、13…リテーナ、13a…筒部、13b…内向フランジ部、13c…カム溝、14a…クラッチディスク、14b…クラッチプレート、14c…アーマチャ、14d…電磁コイル、14e…コイルケース、14f…ストッパリング、15…カム部材、15a…カム溝、16…第2カム部材、16a…カム溝、17,18…カムフォロアー、19…バネ部材、21…トランスアクスル、22…エンジン、23…フロントディフアレンシャル、24…アクスルシャフト、25…前輪、26a…第1プロペラシャフト、26b…第2プロペラシャフト、27…リアディフアレンシャル、28…アクスルシャフト、29…後輪。
Claims (5)
- 電磁的手段により駆動力伝達状態を制御される駆動伝達装置において、前記電磁的手段により作動して前記駆動力伝達状態を所定の駆動力伝達状態にまで形成する第1のカム機構と、前記駆動力伝達状態が所定の駆動力伝達状態に達したとき作動して前記駆動力伝達状態をより高い駆動力伝達状態に形成する第2のカム機構を備え、前記駆動力伝達状態が所定の駆動力伝達状態に達したとき、前記電磁的手段への供給電力量をそのまま保持または低減させることを特徴とする駆動力伝達装置。
- 電磁的手段への通電状態を制御することにより駆動力伝達状態を変更される駆動力伝達装置において、前記電磁的手段により作動して前記駆動力伝達状態を所定の駆動力伝達状態にまで形成する第1のカム機構と、前記駆動力伝達状態が所定の駆動力伝達状態に形成されたとき作動して前記駆動力伝達状態を直結状態に形成する第2のカム機構を備え、前記駆動力伝達状態が所定の駆動力伝達状態に達したとき、前記電磁的手段に対する通電量をそのまま保持または低減させることを特徴とする駆動力伝達装置。
- 互いに同軸的かつ相対回転可能に位置する内側回転部材および外側回転部材間に配設されたメインクラッチ機構、電磁式パイロットクラッチ機構、および同パイロットクラッチ機構の摩擦係合力を前記メインクラッチ機構に対する摩擦係合力に変換するカム機構を備え、前記パイロットクラッチ機構の作動により前記メインクラッチ機構を摩擦係合させて前記両回転部材間のトルク伝達を行う駆動力伝達装置において、前記メインクラッチ機構を、前記外側回転部材の内側に回転可能かつ軸方向へ移動可能に嵌合した筒状のリテーナと、同リテーナと前記内側回転部材間にて交互に配置した複数のクラッチ板とにより構成するとともに、前記外側回転部材と前記リテーナ間にはこれら両者の相対回転により作動して同リテーナを前記クラッチ板側へ押圧して同クラッチ板に摩擦係合力を付与する第2のカム機構を配設して、前記リテーナをバネ部材により前記外側回転部材側へ付勢し、前記第2のカム機構が所定の作用力にて前記バネ部材のバネ力に打ち勝って作動するように構成したことを特徴とする駆動力伝達装置。
- 請求項3に記載の駆動力伝達装置において、前記第2のカム機構は、前記外側回転部材の内向フランジ部の内側面に設けた第1のカム溝と、前記リテーナの内向フランジ部の外側面に設けられて前記第1のカム溝に対向する第2のカム溝と、これら両カム溝に嵌合するボール状のカムフォロアーとにより構成されていることを特徴とする駆動力伝達装置。
- 請求項4に記載の駆動力伝達装置において、前記外側回転部材の内向フランジ部と前記リテーナの内向フランジ部間に前記バネ部材が介装されて、同バネ部材が前記リテーナを前記外側回転部材側へ付勢していることを特徴とする駆動力伝達装置。
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1997
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